• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年11月06日 13:13

注目を集めている北極海航路(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 夢のような北極海航路ではあるが、課題がないわけでもない。氷が溶けて北極海航路の運航ができるようになったとはいえ、依然厳しい気候条件下にあることには変わりない。氷の海を安全に運航するためには、氷に遭遇し、氷にぶつかったとしても、船舶が壊れないように船体を丈夫にする必要がある。また、プロベラや舵などを氷から保護する必要もあるし、各種の機器などは超低温や凍結から守る装置が必要になってくる。1年間の数カ月を除いて、運航の際、どうしても砕氷船を投入しなければならない。

 このように北極海航路には南回りのルートにはない高額なコストが付きまとう。それに、砕氷性の利用料や保険料なども南回りに比べてかなり割高で、現在のところ、コスト面のメリットがあまりないのも課題である。それに、気象・海象予報の精度や航路標識・海図の整備が不十分であるうえに、定期船の修理や救難の受け入れの対応など、寄港地のインフラ未整備も課題である。

 北極海航路の運航には事前にロシアの許可が必要である。というのは、陸地から12海里以上離れた海は公海とされ、船舶の航海については"公海自由"が適応される。ただし、氷で覆われた水域については、沿岸国が管理しても良い、という例外規定がある。これを盾にとって、ロシアは北極海航路を自分の領域だと主張し、今はロシアの許可が必要になっている。ということは、航海の自由がないのと同じである。これも課題の1つである。

 北極海航路をめぐっての各国の動きを見てみよう。北極海航路に一番積極的に取り組んでいるのは当事者であるロシアだ。経済制裁が科されているロシアは北極圏に眠っている資源を開発して東アジアに売りたいのだ。ロシアは北極圏で生産された天然ガスをLNGに加工し、北極海航路を通じて東アジア・ヨーロッパ・南米諸国に輸出するプロジェクトを進めている。

 中国もエネルギー確保の安全保障上、有意義である北極圏プロジェクトに前向きである。中国は資金なども提供してこのプロジェクトに積極的に関わっている。中国の海運会社の最大手であるコスコは2013年と2015年の二回にわたる試験運行に成功し、運航技術の確保と人材の確保にも注力している。

 韓国も、ロシアをはじめ、ノルウェーやグリーンランドと北極海航路と資源の開発について協力関係を構築している。また東アジアのトップハブ港である釜山港を、北極海航路の海運においてもハブ港にしようと計画を進めている。さらに、韓国は造船先進国として砕氷船開発技術においても他国をリードしている。韓国は世界初の砕氷LNG船を建造し、ロシアに納品した実績ももっている。砕氷船は平均時速25.9kmで走るという。

 以上のように、地球温暖化の進捗と造船技術の発達で、北極海航路は段々現実味を帯びてきている。これが実現するかどうかは、国際法の整備など、上記の課題を解決できるかどうかにかかっているだろう。

(了)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年11月12日 12:00

「サブ空港」が最善 北九州空港が採るべき戦略NEW!

  マルチエアポート化  福岡県は、福岡空港と北九州空港の「マルチエアポート化」を将来構想として視野に入れている。両空港を同一空港として運用するもので、どち...

2019年11月12日 11:31

【JR九州列車運行状況】鹿児島本線、山陽本線、交通事故の影響による遅延が発生NEW!

 JR鹿児島本線の小森江~門司間の沿線付近で起きた交通事故の影響により、12日午前11時10分現在、以下の路線の一部電車で遅延が発生している。

2019年11月12日 11:21

【福岡市政インサイダー情報】高島市長も毎年およばれの「桜を見る会」は、ケチくさい公金買収NEW!

 ごぶさたしております。今年3月25日以来の登場となる「福岡市政インサイダー」こと、わたくしです。一部では、正体がばれて役所を飛ばされた、なんて話も出ていたみたいです...

2019年11月12日 10:42

日本の政治の何が問題か(5)NEW!

 日本では殺人などの犯罪を起こさない限り警察に逮捕されることはない。政権批判を繰り返しても拘束されることはない言論の自由が認められている民主主義国家である。

2019年11月12日 10:14

【『I・B TOKYO』発刊にあたって】NEW!

 今回「I・B TOKYO」発刊に漕ぎつけたのは、この激変時代に対応するにあたって企業の皆様方や自立・自覚を求める個人の方々に核心となる情報を提供するという使命感から...

2019年11月12日 10:00

2020年のIMO規制の導入で激変する造船業界(後)NEW!

 中国の造船産業は現在どのような状況に置かれているのだろうか。中国の造船産業はバルク船、コンテナ船などにおいて、価格競争力を武器にし、韓国の造船産業の大きな脅威だった。

2019年11月12日 09:30

孫正義氏は「裸の王様」になったのか?~「投資判断がまずかった」と懺悔(後)NEW!

 ソフトバンクは1994年7月に株式を店頭公開した。孫氏36歳の時だ。野村證券がソフトバンクの株式公開を担当した。その縁で野村證券の事業法人三部長をしていた北尾吉孝氏...

2019年11月12日 07:00

日本橋川に「青空を取り戻す」 首都高の地下化プロジェクト(前)NEW!

 日本橋の直上を通る首都高速道路(以下、首都高)の地下化プロジェクトがついに始動する。今年9月、東京都の都市計画審議会は、都心環状線の日本橋区間約1.8km(トンネル...

2019年11月12日 07:00

五ケ山ダムにみるインフラツーリズムNEW!

 水害や渇水に対応するために、1983年に事業着手し、2018年3月に竣工した「五ケ山ダム」が今、脚光を浴びている。ヤフオクドーム約22杯分という福岡県内最大の総貯水...

2019年11月11日 17:01

【業界ウォッチ】スポーツオーソリティ アーバンステージ

 イオンのスポーツ専門店「スポーツオーソリティ」は、新業態の「スポーツオーソリティ アーバンステージ 」を10月25日開業した広域型ショッピングセンター「テラスモール...

pagetop