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2019年11月06日 16:02

イオンが描く戦略 パラダイムシフトの先に見据える未来(前) イオンの逆襲 

 企業の寿命30年。1983年ごろのある業界誌の表現だが、それは今や定説になった感がある。複数の情報調査会社の調べでは戦後の会社の設立から倒産までの平均年数は27年余り。確かに30年に満たない。その大きな理由は経営環境の変化と組織の硬直化だろう。30年経てば新入社員も50歳を過ぎ、世の中の嗜好や価値観も大きく違ってくる。イオンだけでなく、いかなる大企業でも複雑な変化にうまく対応し続けるのが至難の業であることは、統計データの変化をみてもよくわかる。

 

不利を承知で困難に取り組む

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 【表1】は1990年と2019年の我が国の小売業企業を比較したものだが、その変化は企業名、売上規模ともに大きく変化している。1990年の上位12社で29年の間、経営母体のままで残っているのはイオンリテール(以下、イオン)とセブン&アイホールディングスの2社。30年間、組織を健全に維持することがいかに困難かを表している。

 なかでも特筆すべきは90年代の上位12社のほとんどの企業のその後に、イオンが少なからず関わっていることである。不良資産を整理する再生法を利用してのM&Aといっても、業態が陳腐化した総合スーパー(GMS)同士のM&Aはいわゆる弱者連合である。

 不採算部門や不良資産を整理しても本業の採算性が改善するという単純なものではない。イオンは先行したダイエーにそれを見ていたはずである。しかし、あえてそれを実行したのは「とりあえず前に進む」という岡田卓也(現・イオン名誉会長相談役)の決意と「下げに儲けよ」という岡田屋のもう1つの経営哲学である。深刻な不振業態GMSの競争に勝ち残っても、今や直接的な残存者利益は手にできない。この現実を常識的に見ればM&Aはメリットのない選択といえる。まさに「下げ」である。そこには、不利を承知で困難に取り組むことで自己変革を促し、変化し、転進し、環境適応するという強い意思に基づく積極性が見て取れる。

変化こそ生き残る道

 【表1】の1990年と2019年の違いは企業名だけではない。ランクインしている業態が違う。コンビニや家電量販店が新たに登場している一方、GMS業態という同業の競合は1990年に比べるとずっと小さくなっている。

 問題は同業態競合が減っているにもかかわらず、イオンのGMS部門の採算性が改善していないところだ。これが消費の形態変化の恐ろしさだ。今、リアルからECへ向かいつつある消費者の行動変化もまさにそれである。イオンの母体、旧岡田屋には『大黒柱に車をつけよ』という家訓がある。小売業はもともとモノを売ることからスタートした。そして、その歴史のなかでさまざまな変化と淘汰を経験してきた。当初のモノの売り買いというジャンルだけで構成されていた業態に商品製造、不動産賃貸や金融といった販売以外の要素が加わった。

 加えて小売の中身や提供方法も大きく変化する。とくにこの四半世紀はそれが急変し、小売大手12社のうち10社がその変化に対応できず、姿を消した。残った上位2社も本業といわれるGMSだけで見ればもはや十分な利益は出ていない業界トップのイオンも「大黒柱に車をつける」という発想があったからこそ祖業が不振に陥っても周辺事業を積極的に取り込み生き残っているのである。

 イオンと消えていったGMSの大きな戦略の違いの1つがショッピングセンター運営である。1970年代、イオン(旧・ジャスコ)はダイエーとの都心部での競合にことごとく敗れた。その結果が「狐、タヌキの出る場所へ出店せよ」という岡田社長の命令である。最初は地方のショッピングセンターに出店し、その後、関連会社でSCを建設し自らがキーテナントになり、専門店を集める方向にシフトした。

 一方、ほかのほとんどのGMSは都心にこだわり、ハイコストの立体駐車場をつくり、立地の収益低下を補うために自社所有の店舗を金融機関などに売却し、それを改めて賃借するリースバックという方法を選んだ。坪効率の低下による販売管理費率の上昇に加えて安くない賃借料が発生するこの選択は文字通り経営にとって致命的だった。

(つづく)

【神戸 彲】

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

 1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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