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五ケ山ダムにみるインフラツーリズム
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2019年11月12日 07:00

五ケ山ダムにみるインフラツーリズム

 水害や渇水に対応するために、1983年に事業着手し、2018年3月に竣工した「五ケ山ダム」が今、脚光を浴びている。ヤフオクドーム約22杯分という福岡県内最大の総貯水容量を誇るダムであるから、ダム愛好家が集って盛り上がっているのかと考えるが、そうではない。キーワードは「五ケ山クロス」だ。

インフラから観光資源へ

五ケ山ダム
五ケ山ダム

 「五ケ山ダム」は福岡と佐賀の県境、福岡県那珂川市と佐賀県吉野ヶ里町にまたがる場所に位置する。福岡県内最大の4,020万m3という総貯水容量を有しているのは、1978年に福岡市で発生した大渇水を受けて、渇水対策容量をもつ多目的ダムとして計画されたためだ。83年度にダム事業の実質的着手である実施計画調査を開始し、2003年度から用地取得を開始。04年度に水源地域整備計画が決定し、付替道路などの着工。12年6月からダム本体の工事が進んでいった。

 こうして新たな社会インフラ整備事業として計画が進んでいくなか、ダムの管理を手がける福岡県、那珂川市、佐賀県、吉野ヶ里町の4者間において、「五ケ山ダムを観光拠点へ」との機運が高まっていった。協議を重ねるうちに、キャンプ場や公園などを整備し、新たな賑わいの場を創出する構想が立ち上がる。これが、「五ケ山クロス(GOKAYAMA CROSS)」の始まりだった。

※クリックで拡大

 構想の実現に向けて、那珂川市では約10億円の予算を確保。五ケ山クロスをより良いものにするため、市側から協力を呼びかけ、17年にアウトドア総合メーカーの(株)モンベルと「連携と協力に関する包括協定」を締結した。この判断は奏功し、19年3月に五ケ山クロスがオープンすると、洗練されたキャンプサイトのデザインやロードバイクや川遊びなどのアクティビティが評判を呼び、週末はほぼ予約でいっぱいの状況が続いている。また、福岡県南畑・五ケ山ダム管理出張所によれば、平日でも五ケ山ダムには見学者が絶えず、活況を呈しているという。

目指すは周遊型観光

 外から人を呼び込める観光資源として、存在感を高める五ケ山ダム。その効果は、周辺地域にも還元されている。たとえば、那珂川市の川遊びスポットとして知られる「中之島公園」などの既存の観光スポットへの接続や、近接地域で新設されるベーカリーなどの商業施設の増加は、五ケ山クロスによる相乗効果といえる。

 また、民間企業による活用も進む。ヤマハ発動機(株)は、五ケ山ダムでバイクのプロモーション活動として「フォトツアー」を実施。ロードバイクの周回コースとしてもともと人気の高かった五ケ山ダムに、五ケ山クロスという話題が提供されることにより、アウトドアと親和性の高い商品・製品のPR効果は抜群のものになった。こうした企業案件は、各自治体にとって新たな財源となる可能性を秘めている。

 19年7月、那珂川市と吉野ヶ里町は、観光振興を目的とした連携協定書に調印。今後、五ケ山ダムを中心に両市町を周遊する観光ルートの整備や、観光パンフレットの作成、イベントの充実などを図っていく。吉野ヶ里町には物産館「さざんか千坊館」を擁する「道の駅 吉野ヶ里」があるほか、国の特別史跡である吉野ヶ里遺跡を擁する「吉野ヶ里歴史公園」もある。五ケ山ダムとのアクセスも良く、那珂川市との連携による交流人口の増加は十分に見込める。

 社会インフラ整備事業は、それ単体でも地域への経済波及効果がある。だが、その多くは竣工と同時に終わってしまう、限られたものだ。しかし、五ケ山ダム・五ケ山クロスは、県、市、町の広域連携や、産学連携も視野に入れた取り組みによって、竣工後もヒト・モノ・カネが循環する観光資源としての役割もはたす。SNSが火付け役となって、ある日突然観光客が押し寄せる―これから求められるのはそんな偶発的なインフラツーリズムではなく、地方自治体が仕掛け人となる、能動的な観光需要の喚起である。


「登山コースの整備など、五ケ山ダムで楽しめるアクティビティを充実させたい。また、他自治体との連携を強化することで、周遊型観光を強化していきたい。」


那珂川市都市整備部地域づくり課 観光・まちづくり担当
 高木 孝二郎 氏

【代 源太朗】

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