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2019年11月19日 07:00

学生起業の実態を探る~これでいいのか九大起業部(後)

起業を志す若者への提言

 牛嶋氏 起業そのものを否定するつもりはまったくありません。私自身、九州・福岡が大好きなので、起業を通じて地元が盛り上がるなら願ったり叶ったりです。しかし、起業を志す若者にとって重要な要素の1つは、ちゃんとした指導者や起業家が周りにいることだと思います。福岡市ではスタートアップを盛り上げるためにいろいろと取り組んでいるようですが、今回の件も含めてまだまだこれからなのかなとも感じています。

 起業をするにあたって最低限必要だと思うのは「自らの頭で考え行動すること」です。高校まではどうしても詰め込み教育になりがちで、教えてもらったことをそのままやれる人が優等生と思われがちなのですが、その延長線上で起業するのは難しい。まずは自分が何を実現したいのか、そのためには何をすべきかを考え、必要な情報を自ら取りに行くという姿勢を身につけなければならないと思います。

 O氏 起業はやる気があればどこでもできます。世に求められていることに対して市場があり、そのなかでやるのであれば、だれにでもできる方法といえるでしょう。難しいのは、「何をゴール(目標)とするか」です。たとえば売上をいくらにしたいのか、いくらほしいのか。自分の理念(ビジョン)ベースだと、よほど時代のニーズに合致しなければ、ゴールを設定するのは難しいでしょう。

 これまで福岡の学生と接していて感じたのは、意識の高い学生ほど、上昇志向ならぬ「上京志向」が強いことでした。理由としては、自己のさらなる成長、憧れ、できる先輩が向こうにいるなどが挙げられますが、背景には、福岡に魅力的と感じるような企業がないことや職種がないことなどが根底にあり、皆東京に行きたがるのでしょう。東京は生活するうえで支出も多く、同じ給料であれば経済的な面で地方のほうが良いと思うのですが、そうした背景から東京ありきになってしまっています。だからといって東京に出たら必ず成功するとは限りません。むしろ周りとの競争が激しくなり、潰れた(潰された)人もたくさんいます。熱い想いで上京したはいいが、周りとの競争に打ち負け心身を病んで帰って来るみたいな…

 私の場合は、東京で起業してある程度実績をつくってから福岡にやってきました。福岡を選んだ理由としては、地方であれば場所によっては物価が安く、支出を下げることができるからです。また、東京でそれなりに経験と実績を積んで地方に進出すれば、競合が少ないために簡単にシェアを獲れることも理由としてありました。こちらにきて約7年経ちましたが、今では当初目標として掲げていた成果を達成し、地方に進出する目的をはたすことができました。

九大起業部への提言

 牛嶋氏 学生やこれから入部を検討している人たちは、「何のために起業部に入るのか(入ったのか)」ということを今一度考えてほしいと思います。「起業」「スタートアップ」というと聞こえはいいし、たとえば就活の場でアピールできるというような考え方もあるかもしれません。ですが、起業部に入部して言われた通りに起業し、何となくうまくいかなかった…などという他人任せで流されてきた経験は、研究であったり部活やアルバイトなどで自ら必死に考え行動してきた経験に比べて、価値が高いといえるのでしょうか。たまたま就活でアピールできていい会社に就職したとしても、その先は厳しいものとなる可能性が高いと言わざるを得ません。起業を志すにあたって「自分の頭で考えて行動すること」が最低限必要な能力だと申し上げましたが、今回取り上げられた九大起業部の11社のサイトを見る限り、その最低限すらできているようには思えませんでした。

 そうなってしまったのは、起業部の部員たちを指導する立場である顧問(熊野正樹・九大准教授)の方針にも問題があるのではないかとも考えています。仮に事業に失敗したとしても、学生たちが自分で考えてやった結果の失敗であれば前向きに捉えられますし、本人たちも納得はできるはず。きっとその失敗は将来の糧となるでしょう。しかし、顧問の言われた通りにやって失敗したところで、彼らは一体何が得られるというのでしょうか。その代償として、未来を担う若者がある種「食い物」にされたとしたらそれはよくないと思います。

 今回の九大起業部による「11社同時創業」は、数だけを追い求め外面だけを取り繕ったものであり、本来の起業とはかけ離れていると思います。これではいつまで経っても本当の意味での起業家を育てることはできません。20歳前後の学生に多くを求めるのは酷かもしれませんが、本当に起業を志している学生が九大起業部にいるのであれば、自分は何のために起業をして何を実現したいのか、そのためにはこのまま起業部で言われたことをやるのか、それとも何らかの行動を起こすのか、今一度見つめ直してほしいと思っています。

 O氏 今回スタートアップした11社について、過程はどうであれ外に出した以上、事業としてそれなりの成果を求められます。起業は本来、「やらされて」やるものではありませんし、やるからにはきちんとした成果物を見せてほしいと思います。これだけネットが普及しているわけですし、九大以外にも起業を目指している人が集まるフィールドは数多くあるのですから、自分でいろいろ調べて、色んな方法を比較検討することはできるはずです。

 極端な話、「こんなサイトをつくって単に情報集めただけでいいのか?」と、顧問に問いかけるくらいの気概を見せてほしいものですね。メンターに関しても、変に偉い人とか東京の人を呼ぶよりかは、地元九州の経営者を選んだ方がいいと思いますが、地元の人ばかりで固めてしまうと外に視野が広がらないので、うまくミックスしていく必要性があると思います。

 心配なのは学生たちが「自分たちはすごいんだ」と自らを過信してしまうことと、周りの大人がそれを必要以上に持ち上げてしまうことです。私は東京から福岡に移住して7年目になりますが、来た当初に感じたのは、九大生の鼻が高いというか、見方によっては「勘違い」ともとれるような言動でした。九大に関していうなら、九大は旧帝大の流れを汲み、九州全土でみればトップクラスの大学ですが、首都圏などと違い周りに比類するような大学がないため、「自分たちがすごい」と錯覚している気がします。

 関東圏の場合、東大のほかにも早慶上智やMARCHなど、学力も知名度も相応に高い大学は数多くありますし、起業熱も高いです。私が東京に在住していた10年前だと、慶応の湘南キャンパスは当時から起業家と呼べる人材をたくさん輩出していました。学歴や偏差値レベルで比べても九大と遜色ないと思いますが、当時の彼らはスマホアプリとかバンバン作っていましたし、「スマホアプリをつくって世界に出るぞ!」と意気込む人がたくさんいました。

 レベルの高い学生を知る私から見れば、九大起業部のキュレーションサイトは10年前以下のものなんです。前述の通り起業そのもののレベルが低いのはいうまでもありません。背景として、今の学生の多くがゆとり世代で、踏み込んだ教育や指導ができないのかもしれませんが、だとしたら九大そのもののレベルが問われます。そしてそれでいいとするなら、九大は終わりですね。

 学生もそのことをわかっているのかな・・・第三者が厳しい意見を述べたところで、彼らが聞く耳をもたなければそこまでですが・・・。

(了)
【長谷川 大輔】

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