2024年04月26日( 金 )

機動力生かしたアフターメンテでマンションの劣化を防ぐ

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防水工事ほか
(株)草野

施工

建物の寿命を左右する「防水工事」とは

代表取締役 草野 和義 氏
代表取締役 草野 和義 氏

 ビルや工場、住宅などの建物において、「漏水」は最大の敵といっても過言ではない。漏水は屋内の快適性が損なわれるだけでなく、建物の寿命を縮める大きな要因にさえなり得るのである。それを防ぐために必要なのが、防水工事だ。

 防水工事は屋上やベランダなどに主に施工され、場所や特性によりシート防水やアスファルト防水、塗膜防水などに分けられる。福岡市博多区に本社を構える(株)草野は、こういった防水工事を主力に、止水工事、塗床工事、塗装工事、防食工事を手がける。

 同社の強みはマンション改修工事だ。戸建住宅と同じように、マンションも経年劣化によって建物のトラブルは増えてくる。トラブルの筆頭が水漏れだ。それを防止するためには長期的な修繕計画が必要だ。国交省は、完成から12年での大規模修繕を推奨しており、鉄部の再塗装や外壁塗装とともに防水工事が必要となってくる。福岡市は全国でも有数の高いマンション化率を誇る都市であり、市場も大きいがその分競合も少なくない。同社は大手にはない機動力を生かし、アフターメンテナンスに注力。建物の細かな変化に気づくようになり、リピート客も増えているようだ。

ドローン劣化調査など新しい取り組みへの挑戦

 創業から22年が経過し、受注も安定していった。2018年6月期は大型工事の引き渡しがあったことから11億円の売上高、19年6月期も10億円の売上高を計上した。前述のように、マンション大規模修繕工事における防水工事を主力に外壁工事も手がける同社であるが、新サービス・ドローンによる劣化調査を開始した。

 外壁の改修工事を行うにあたって、現状を確認する必要がある。平屋や低層であればハシゴなどで調査することもできるが、高層になると足場を組まなければならない。調査をしなければ見積をすることもできないため、「どれくらい費用がかかるかわからない」状態で、見積を待つのが一般的なのだ。しかし、ドローンを使って現状を把握することができれば足場を組む必要もなく、低コストで調査をすることができる(詳細な価格を出すためには足場が必要)。また、スレート屋根などの場合、屋上に登って調査する際に転落事故が起こる可能性もあり、調査段階でのそのような事故防止にもつながる。

 ドローン調査に続き「新しいことを取り入れていきたい」と話す草野和義社長は、19年6月から新商品の取り扱いを開始。日本パーミル(株)の西日本エリアの販売代理店となり、長寿命の飛散防止塗料「MAMORI21」、1液タイプの遮熱塗料「ENGAWA21」などの販売を開始した。

 MAMORI21は、価格帯はフィルムと同等だが、フィルムでは施工できなかった網入りガラスやすりガラスなど凸凹のあるものにも施工可能で、塗料のためロスも少ない。ENGAWA21は、1液タイプの水性アクリル塗料で、作業性のほか水性のため環境にも優しい。いずれもカタログ値では高い性能を発揮しているが、「まずは自社で施工して数値を検証します。防水屋としても、これら商品の作業性と環境性は非常に高いと思っています。自社の施工だけでなく、広く使っていただきたいですね」と代理店としての意気込みを語った。

外壁調査の様子
外壁調査の様子

アフターメンテで得たつながる仕事

 現代表・草野和義氏によって1997年4月に創業された草野であるが、創業当初は受注の確保にも苦労したという。草野社長の父は北九州市で防水工事業を営んでいた。草野社長も北九州市で育ち、小倉西高等学校(北九州市小倉北区)を卒業後は建築系の専門学校へ進んだ。「遠回りもありましたが(笑)、子どもが生まれたことを契機に家業を手伝うことを決めて、防水屋としての人生を始めました」(草野社長)と話す。

 福岡都市圏の開拓に注力して10年後には独立。しかし、当時はバブル崩壊の余韻が残る建設業界。逆風が吹くなかでの船出だった。しばらくは受注単価も低迷を続けてきたが、マンション大規模修繕の市場が大きくなってきたことや同社の機動力が顧客に評価され始めたことなどから、受注単価の向上をはたした。

 「始めた当初は不安でした」(草野社長)という10年保証だが、「施工に対する責任を長期で意識し、良好な取引関係を続けることができています。アフターメンテナンスに力を入れるのは、始めは苦労も多いですがその分成果も出始めています」と話し、安定した受注と単価向上につながっているようだ。

社長の夢だった別業態・うどん店

うどん店「たきちゃん」
うどん店「たきちゃん」

 「新しいこと」は建築にとどまらない。18年10月4日、国道3号線の立花寺北交差点そばにうどん店「たきちゃん」を開店したのだ。うどん店開店は、草野社長の強い思いが実現した格好となった。草野社長は20代前半まで飲食店でアルバイトをしていた経験がある。食事をするお客さんの喜ぶ姿を見て「うどんが大好き。いつか必ずうどん店をやりたい」との思いをもっていたという。しかし、防水工事業を手がける会社の経営に没頭する毎日を過ごし、いつの間にかうどん店開業の夢は頭の片隅に追いやられていた。

 会社が軌道に乗り、資金的にも余裕ができ始めたことで、うどん店開業の夢が再び浮かんでくる。周囲の協力を得て、とんとん拍子に話が進んでついに開店に至った。「たきちゃん」の売りは純手打ちのうどん麺、シイタケ・昆布などを使ったダシ。九州らしいうどんで、草野社長のこだわりが垣間見える。「多くの人に喜んでもらいたい」と価格はリーズナブルに設定。順風満帆とはいえないまでも、メニューの改良や店舗オペレーションの改善を続け、開店から1年を経て次第に常連客も増えていった。

 草野の事業の柱はあくまでも防水塗装工事である。その範疇で当たり前のことを当たり前に続けることで、非凡な存在となり新たなチャレンジを可能にした。新商品や新サービスで結果を出すのは簡単なことではないが、平凡を非凡に続けてきた同社だからこそ、「新しいこと」にも期待したくなる。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:草野 和義
所在地:福岡市博多区上牟田1-21-6
設 立:1997年4月
資本金:1,000万円
TEL:092-473-7292
URL:https://k-kusano.co.jp

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