2024年03月29日( 金 )

撤退戦の様相を呈すレオパレスの懐事情(前)

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販売から管理へストック事業に転換

 (株)レオパレス21(以下、レオパレス)の業績悪化が止まらない。施工不備問題を発端に入居率は低下を続け、2020年3月期は通期でも赤字を計上する見通しとなった。

 レオパレスは、長崎県壱岐市出身の深山祐助氏によって創業された。アパート販売が好調に推移し、管理戸数も35万戸を超えた06年5月、入居者から徴収した手数料のうち、47億円を深山祐助氏が自宅の取得や知人への貸付などとして私的に流用していたことが発覚。同氏は6月1日、引責辞任する事態となった。だが、このような不祥事がありながらも、同社の業績は好調に推移し、07年3月期は売上高6,316億円(前期比35.7%増)、経常利益730億円(同65.3%増)を計上。安定した利益計上から、自己資本比率は37.0%を計上していた。

 しかし、その後に発生したリーマン・ショックの煽りを受け、業績は悪化していった。10年3月期の売上高は前期比15.4%減の6,237億円、経常利益は338億円の赤字に転落。同社にとって初の赤字決算となった。翌11年3月期には自己資本比率が11.1%にまで低下するなど、財務内容は大きく毀損していった。

 12年3月期は管理戸数の減少はあったものの、入居率の向上や資材や人件費の見直しからコスト削減を行い、減収となりながらも黒字回復をはたした。アパート建築請負事業は07年3月期時点から減少傾向となりながらも、サブリースなど賃貸事業を伸ばし、13年3月期以降は飛躍的に業績を回復させていった。

 18年3月期は所有不動産の売却による減損損失を計上しながらも、利益ベースでは計画値を上回る実績を計上。同期の戸建やマンションを含む開発事業の売上高は765億円と、07年3月期(アパート建築請負事業)の売上高2,480億円から3分の1以下にまで低下した。しかしその反面で、賃貸事業は2,165億円から4,355億円にまで増加するなど、アパート建築販売でのし上がった同社のビジネスモデルは、幾度の苦境を経て、いつの間にかサブリース会社へと変貌を遂げていた。

 いわば、フローからストックへの転換に成功した同社のビジネスモデルだったが、強みとなった「ストック」は、いくつもの問題を抱えていた。

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施工不備が発覚し入居率8割を切る

 18年4月、本来は屋根裏まであるはずの壁―界壁がないという「界壁問題」が発覚。問題の物件シリーズ「ゴールドネイル」では約1000棟もの物件で界壁が存在しておらず、しかもそれをレオパレス内部では把握していたと報道された。界壁がないことで、建築基準法違反となるのはもちろん、万が一火事が発生した際に、隣の部屋まで延焼する可能性が高くなってしまう。

 レオパレスによる全棟調査(19年10月28日時点の進捗率98.2%)が進められているが、調査が進むにつれて、施工不備があるアパートの棟数はどんどんと増加。すでに、同社施工によるアパート3万9,085棟のうち、1万3,252棟で施工不備、1万6,126棟で軽微な不備が見つかるなど、同社が関わったアパートの過半数が問題を抱えていたことが発覚した。

 問題の収束を目指す同社では、スケジュールを後ろ倒しにしながらも、不備が発覚したアパートの改修工事を進めているが、これによる入居率低下の影響も出始めた。例年3月末にピークを迎えていた入居率は、19年3月末には84.33%と前年3月末と比べ9.39ポイントも下落。さらに、4月以降も下降曲線を描き、中間決算となる9月末には80.07%、10月末には79.49%とついに80%を下回る事態となった。

 同社の入居率を支えていたのは法人契約―つまり、社員寮や社宅として利用するための契約だ。企業の社有社宅離れが進む昨今、長期出張のサラリーマンや現場作業員向けに、全国各地に物件を用意。「家具家電付き」「仲介手数料不要」「敷金不要」といった強みを武器に攻勢をかけることで、近年はとくに法人契約の比率が高くなっていた。そのようななかで、今回の問題が発覚。18年3月期末から契約戸数と連動するように、法人契約戸数はジリジリと低下していった。学生や個人向けの契約はすでに減少傾向にあったため、前述した通り、入居率全体はついに80%を下回る事態となった。

 前期比2.25ポイント減少し、期中の平均入居率が88.34%となった19年3月期の賃貸事業の売上高は4,263億円(前期比91億円減)、営業利益は149億円(同110億円減)。20年3月期中間の平均入居率は81.11%で、賃貸事業の売上高は1,972億円(同217億円減)、営業利益は111億円の赤字(同233億円減)となった。これは、空室損失引当金70億円を計上した結果でもあるが、すでにサブリースが逆回転を始めている状況だ。

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(つづく)
【永上 隼人】

(後)

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