2024年03月19日( 火 )

撤退戦の様相を呈すレオパレスの懐事情(後)

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博多のホテルほか資産売却進める

 19年10月末の入居率は79.49%(管理戸数57万5,708戸、契約戸数45万7,644戸)と前月比0.58ポイント低下、前年同月比では7.75ポイント低下と、入居率回復の兆しは見えないでいる。20年3月期中間(9月末)での現預金額は688億円と、前期末から156億円減少。所有不動産や有価証券の売却などで投資キャッシュフローは154億円のプラスとなっていたが、244億円もの中間赤字が尾を引いた格好となった。

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 10月には、博多駅から徒歩3分に立地する「レオパレスホテルズ博多」を含む、所有および運営するホテル3棟の売却を発表。札幌市、仙台市の物件とともに単体、バルクいずれも視野に入れた入札によって売却された。最終的にバルクでの売却となり、売却額は3棟で160億円。固定資産売却益52億円が特別利益として計上される。

 入札に参加した企業によれば、「博多のホテル単体で入札参加したが、想定以上に高値が付き、取得することはできなかった。博多は単体で80億円くらいだったと思う」と話す。売却された3棟のホテルは、20年3月中旬から4月頃まではレオパレスホテルズとして営業を続け、その後は新たな運営業者に変更される見通し。

 さらに11月には、16年7月に完全子会社化していたライフリビング(株)の全株式を一建設(株)へ売却することを発表。一建設は飯田グループホールディングス(株)の子会社で、株式の譲渡額や譲渡時期は公開されていないが、19年3月期のライフリビングの純資産額は48億円、売上高は90億円、経常利益は9億円を計上していた。

 マンションやアパートなど投資用不動産の企画販売を手がけるライフリビングは、06年6月には東証マザーズ市場に上場し、07年9月からレオパレスに買収されるまでは、SBIホールディングス(株)の子会社となっていた。

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懐事情から見るレオパレスの見通し

 19年9月末時点で計上されている固定資産は1,603億円、うち有形固定資産は1,057億円だが、土地建物は778億円。さらに、販売用(仕掛)不動産は88億円、投資有価証券は147億円が計上されている。土地建物、販売用不動産、投資有価証券がすべて簿価で売却できたとして、約1,000億円のキャッシュを得ることとなる。

 なお、借入金と社債の合計は306億円に上るほか、月額の販管費(20年3月期中間)を単純計算すると約50億円かかることから、入居率が向上しない限り、資産の切り売りで乗り切るには数年の猶予もないことがわかる。

 さらに、施工不備に係る費用と期間が現在の想定以上に高くなる可能性も否定できないため、将来を楽観視できない状況といえる。

 そんななか、レオパレスの創業者・深山祐助氏によって設立された(株)MDIは、ソフトバンクグループおよびOYO Hotels & Homesが出資する合弁会社との資本提携を発表した。MDIは、冒頭で述べたように会社の資金を私的流用したことをきっかけにレオパレスを退社した深山氏がつくった会社だ。資本関係はなくとも、レオパレスとは歴史的にも人的にも因縁浅からぬ関係だけに、MDIの動向は気になるところだ。

 MDIとの資本提携に関しては詳細が語られていないが、OYOとソフトバンクグループが日本で展開する「OYO LIFE」と、レオパレスのビジネススキームには親和性がある。また、すでに3.7万の管理戸数を有するMDIは、OYO LIFEと業務提携している。

 OYO LIFEは東京都心、レオパレスは地方と供給エリアが異なるものの、サブリースで運用する点では同じだ。ただ、OYO LIFEはレオパレスと異なり、物件オーナーをグリップしておらず、そもそも物件の確保に難航している。その点からも噂されるように、ソフトバンクグループとOYOが、57万の管理戸数を有するレオパレスを傘下に収める可能性は十分にあるだろう。

(了)
【永上 隼人】

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