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2019年12月17日 13:23

ギャンブル依存症は、人間としてのプライドも羞恥心も奪い取る(前)

大さんのシニアリポート 第84回

 困ったものである。2016年6月に、私が運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)の常連客だったAさんがギャンブル依存症になり、周囲に迷惑をかけている様子を報告した。

 あれから3年、Aさんは相変わらず生活保護費もパチンコにつぎ込み、生活費にも困るありさま。軍資金が枯渇すると、周囲のだれかれ構わず無心する。何とか助け出したいのだが、有効な手立てがみつからない。

 高齢女性がパチンコに興ずる姿を見かけても不思議とは思わない。だけど世間では、「生活保護を受けている人がパチンコに興じるのはいかがなものか」という疑問を呈する人もいるのは事実だ。生活をエンジョイするために、生活保護費(税金であるにしても)を飲酒やギャンブルにつぎ込んではならないという規制はない。本人の自由である。それが原因で生活に窮することがあっても自己責任の範囲内だと思う。

 以前にも、Aさんについて社会福祉協議会のCSW(コミュニティソーシャルワーカー)に相談してみたことがあった。CSWは、個人のさまざまな問題に寄り添って解決をはかる地域の相談員のことである。

 「第三者が立ち入りにくい難しい問題です。基本的には家族が専門病院に入院するよう説得する必要があります。家族がいない場合、もし、金を貸している人が『返さないので問題にする』と、被害届を警察に出すか、社協などに相談にきて問題が事件(表面)化した場合には、関係機関と連携してAさんを説得・収容することが可能になる場合があります」ということだった。最近「生活保護費を借金の返済に充てることは違法行為」であることを知った。

 現実的に解決するにはいくつかの関門がある。「貸している人が、『返さないので問題にする』と、被害届を警察などに出す」のはかなりの勇気が必要だ。同じ地域に住んでいる人同士なので、それ以降のつきあい方に問題が生じやすい。

 それに加えて貸す方にも問題を含んでいる場合が少なくない。貸している1人であるBさんの場合、「生活費がないというんだもの、可愛そうでしょう。返してくれるといったんだから…」と安易に考えている。「Aさんが返してくれたことあるの?」と聞くと、「ある」という返事。ところが返した直後に、また借金を申し込むという。どうも、すでに焦げついた借金があるようだ。

 しかし、そのことについてBさんは口をつぐむ。Aさんとの関係をこじらせたくないのだ。正確な金額は口にしないが、おそらく10万円以上焦げついている様子。人のいいBさんは、自分の生活費にも事欠くことがあり、病院の支払いを分割にしてもらうこともあった。「分割」を申し入れたのは私である。なのに、貸し続けるのだ。

 Aさんに貸しつけているCさんの場合は、貸し金を巧みに利用するやり手である。生活保護費が出る月の5日になると、強制的に回収する。当然Aさんの財布に生活費はない。

 すると、Cさんはその場で軍資金を貸しつける。なぜそうした関係を続けるのか。それはCさんとAさんとに「主従関係」を結ぶためである。金を借りている以上、AさんはCさんに頭が上がらない。Cさんのいうことは何でも聞く。逆らうことができない。手をケガしたCさんのために、Aさんは献身的にCさんにつくす。買いものにも行く。料理もつくる。そうした主従関係にCさんは優越感を覚えるのだ。この至福の時を体感するため、CさんはAさんに金を貸し続けるだろう。

 Aさんには自分自身のプライド、借金をしまくるという羞恥心はもはやない。これがギャンブル依存症という病気の正体なのだ。BさんはAさんとの関係を維持するため「可愛そうだから」を口実に、Cさんは主従関係を維持するためにAさんに金を貸し続ける。融資する人が存在する限り、ギャンブル依存症という「病気」が完治するわけがない。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)など。

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