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2019年12月24日 10:22

コクヨはなぜ、ぺんてるの買収に失敗したのか~強者の「驕りのオウンゴール」で自滅(前)

 2019年の掉尾を飾る文具業界のM&A(合併・買収)劇。文具最大手のコクヨと2位のプラスによる、筆記具メーカーぺんてるの争奪戦は、プラスに軍配が上がった。勝利は確実と見られていたコクヨはなぜ敗れたか。コクヨ創業家の御曹司の“驕り”が反発を招いたようだ。

ぺんてる「コクヨの目論見を阻止した」

 コクヨは12月12日、ぺんてる株の買い付け結果を発表した。

 買い付け価格は1株4,200円。「本買付を通じて、ぺんてるの約300人のすべての株主様のうち、100名を超える多くの株主の方々からご賛同をいただきました」とリリース。

取得株式の議決比率は7.86%。コクヨはぺんてるに37.80%を出資しており、合わせると45.66%。売買契約が済んでいない0.6%を加えても目標の過半数に達しなかった。

 ぺんてる、プラス、買い付け会社ジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(以下、JSC)の3社は12月13日、買い付け結果を発表した。プラスはぺんてる経営陣が賛同する「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として買い付け会社JSCを11月に設立。JSCが1株3,500円で買い付けを進めてきた。

 「約200名(株式持ち分比率にして約30%)のぺんてる株主の皆様にJSCへとぺんてる株式を売却いただき、ぺんてるの現経営陣並びにプラス及びJSCの資本業務提携を支持していただいている株主の皆様と合わせれば、株式持ち分比率にして50%を優に超える結果となっております。

 ぺんてるの多くの株主の皆様が、金額の多寡でなく、ぺんてるが目指してきた価値観に共感され、ぺんてるの存在意義を認められたことが、この結果に表れているものと受け止めております。

 この結果、ぺんてるはコクヨ(株)が主張してきた、ぺんてるの連結子会社化という目論見が阻止され、これまで通り、ぺんてるの自主独立の経営・事業活動を継続することが確保されたと判断しております」

 事実上の勝利宣言である。ぺんてるはコクヨと進めてきた協業の協議も中止すると表明。また、コクヨに対するぺんてるの株式の譲渡を承認しないと言明した。ぺんてるは譲渡制限条項がついた非上場株で、譲渡には取締役会の承認が必要になる。ぺんてるは、コクヨが取得した7.86%の株式の譲渡は認めないというわけだ。

ぺんてるOBが保有する株の争奪戦

 コクヨとプラスによるぺんてる株争奪戦は、ぺんてる退職者のOB株が焦点だった。

 報道によると、非上場会社であるぺんてるの株主は約340人。コクヨが37.80%を保有する筆頭株主。役員と従業員の持株会が13.5%、創業家一族の保有分も13%程度。残る35.7%がOBや取引先と見られている。

 役員と従業員の持株会の13.5%が、ぺんてる=プラス陣営の基礎票。さらにプラスが36.5%の株を買い増して、合わせて過半数をとる計画だ。一方、コクヨは12.2%上積みして、過半数を握ることを狙った。

 コクヨはOB株の取り込みを確実にするため、買い取り価格を引き上げた。当初は、1株3,500円で買い取る予定であったが、「ホワイトナイト」として参戦してきたプラスが、1株3,500円を提示したため、コクヨは3,750円、そして4,200円と2回引き上げた。OBは高齢者が多い。保有株を売却して老後資金に充てたいと考えるOBが大半だ。「どちらにも売らない」としてきた株主も4,200円なら考えるだろう、との読みがコクヨにはあった。

 上場会社のTOBなら、これで勝負がつく。安いほうに応募する株主がいるわけがないからだ。ぺんてる株の争奪戦は、コクヨが勝つ。誰もが、そう思った。

 ところが、蓋を開けてみると、大番狂わせ。ぺんてるの株主は、100人がコクヨに売り、200人がプラスに売った。4,200円より3,500円のほうに売ったのだ。700円損するとわかっているのに、なぜOBたちはプラスに株を売ったのか。最大のミステリーだ。

ぺんてる創業家3代目追放のクーデターが発端

 一連の騒動は、ぺんてるの創業家出身の3代目、堀江圭馬社長が2012年のクーデターで、その座を追われたことがきっかけだ。堀江氏は復権を目指すが、ほかの創業家一族の同意を得られなかった。堀江氏は復帰をあきらめ、18年春、保有していた37.80%のぺんてる株を、投資会社マーキュリアインベストメントが運営するファンドに売却した。

 19年5月、コクヨは、このファンドに出資して、間接的にペンテルの大株主となった。ぺんてるは事前に説明がなかったため猛反発。コクヨが直接出資に切り替えて、筆頭株主に躍り出たことで、両社のバトルが勃発する。これまで、登場してきた両陣営の人物を整理してみよう。

【コクヨ陣営】
・コクヨ:売上高3,151億円(18年12月期)、文具業界最大手、東証一部上場
黒田英邦氏(コクヨ社長)
池野昌一氏(ぺんてる元専務)
小山潔人氏(マーキュリアインベストメント最高投資責任者)=指南役
堀江圭馬氏(ぺんてる元社長)=応援

【ぺんてる=プラス陣営】
・ぺんてる:売上高403億円(19年3月期)筆記具大手、売上の65%が海外、非上場
・プラス:売上高1,772億円(18年12月期)、オフィス用品大手、非上場
和田優氏(ぺんてる社長)
今泉嘉久氏(プラス会長兼社長)
岡崎潤氏(ジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社職務執行者)
水谷壽夫氏(ぺんてる元社長)
田中康之氏(ASPASIO社長)=指南役

(つづく)
【森村 和男】

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