2024年05月02日( 木 )

日本版「#MeToo」裁判~女性蔑視・男尊女卑の日本社会(14)

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 ネット上では検察審査会の不起訴相当の理由として「検察官の不起訴処分を覆すだけの理由が見当たらない」ということが喧伝されている。公表された「議決要旨」にはこの旨の記載がないようであるが、この表現自体が、きわめて素人離れしたプロの表現である。検察審査会の業務・審査会の設置目的は、検察官の不起訴処分の当否を判断するための理由の詮索ではない。告訴・告発された事実が、刑事処分が必要であるかどうか、つまり、犯罪構成要件に該当する事実であるかどうかの判断・事実認定であって、その判断の結果、検察官の不起訴処分の当否が論理的に判断されるに過ぎない。そうであれば、検察審査会の不起訴相当の議決の理由は、告訴事実は犯罪構成要件に該当しない、という結論と、それを論証する具体的な理由・証拠でなければならない。

 「検察官の不起訴処分を覆すだけの理由がみあたらない」というある意味、単なる論理系にすぎない理由命題の提示こそ、「手続的」真実の隠蔽そのものである。そもそも、審査員らは不起訴処分をした検察官から具体的に不起訴処分の理由説明を受けたのだろうか。検察審査会法の規定では、そのようなことは規定されておらず、検察官による不起訴処分の具体的理由説明など聞いたこともない。検察審査会の審議テーマは検察官の不起訴処分の当否ではない。あくまで、告訴事実の犯罪構成要件該当性に関する事実認定である。事実認定だからこそ、素人集団でも当然にできるのである。

 仮に、「性暴行事件で、密室で二人だけの場合、真実は不明である」と弁護士が説明した場合、素人はこれに反論できるだろうか。おそらく補助審査員弁護士はこの程度の説示で不起訴相当の議決を誘導したものと推察する。このような一般論が完全な誤りであることは既に解説したが、密室での行為については加害者と被害者の供述は相矛盾対立しても、事件の前後を含めたすべての証拠が相矛盾対立するということはなく、密室に入るまでは多数の目撃者もおり、密室からの退出後も多数の目撃者と様々な証拠が存在する。これらを整合的に調査確認すれば真実は究明できる。そのような証拠の一つが密室入室直前のドアマンの目撃証言に他ならない。民事判決が、被害女性がシャワーをあびることなく早朝に急ぎ退室した事実も、性行為の同意があれば不自然な行為と認定したこともその一つである。

補助審査員弁護士は上記員面調書の存在を知っていたか。

 100%知っていた。第一に、それはお粗末な行動証拠が示している。補助審査員は有償であり、国庫から相応の報酬を受けている。それにもかかわらず、議決書において、その氏名を黒塗りにして隠蔽した。何故か。後日、員面調書を審査員に読ませなかったことが判明した場合、必ず、責任が追及されることと、補助審査員弁護士として、不起訴相当議決が問題化した場合、責任追及の矢面に立たされることを予期したためである。それが、氏名隠蔽の動機である。補助審査員弁護士の氏名まで黒塗りにしたことが極めて異常なことで、適正かつ公正な刑事司法の遂行にあるまじき行為であることは言うまでも無い。弁護士がその氏名を隠蔽する必要がある行動をとること自体、弁護士倫理に反することは明白である。

 第二に、被告訴人山口氏は結局、「書類」送検された。この「書類」の中に当該員面調書が存在した。員面調書は公文書であるから、厳重な公文書管理規程の下にある。一部だけ抜き取って隠蔽することはできない。連続した附番と記号があり、隠蔽することはできない。

(つづく)
【凡学 一生】

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