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2020年01月08日 07:00

今や霞ヶ関では「矜持」という言葉は完全に死語となった!(3)

不公正、不公平、不透明という3つの言葉で整理する

 加計学園問題に関しては、当時文科省内では、上は大臣(当時は松野博一文科大臣)から下の係員まで、これが安倍首相の案件であり、しかも全員が「これはおかしい、筋が通っていない」と思っていました。だから、情報は出るべくして出たといえると思います。加計学園問題の本質は「行政が歪められた」という一言に尽きます。私はこの問題を「不公正」「不公平」「不透明」の3つの言葉で整理しています。

 不公正とは、「国家戦略特区」という仕組みの良し悪しは別としても、特別な規制緩和を認めるのであれば、それなりの条件がありました。これは国の成長戦略の一環としてつくられた仕組みで「国の経済を牽引するような国際的競争力のある事業に限って特別に規制緩和をする」というものです。従って、加計学園グループの岡山理科大学の獣医学部はそのことを証明する必要がありました。

 しかし、その審査は行われていません。提出されたペーパーのなかに「世界に冠たる獣医学部をつくる」(会場から大きな笑い)と書いてあっただけです。また「従来の日本の獣医師養成大学ではできないことをやる」という条件もありました。すなわち、東大でも、北大でもできないことを岡山理科大学ではできるということを証明する必要がありました。その証明もなされていません。いずれにしても、まともな審査をまったくしていないという意味で不公正となります。

 不公平とは、当時強力なライバルで、すでに「鳥インフルエンザ研究」ではかなり実績があり、京都大学のiPS細胞研究所と連携、高度な新しい獣医学部をつくるという計画をもっていた京都産業大学を、突然にしかも無理難題を与え闇から闇に葬りました。京都大学のiPS細胞研究所は世界に冠たる研究所で、そこからさまざまな再生医療の技術が生まれています。

 それを獣医学の世界に応用することになれば、国際競争力もあり、東大でも北大でもできないことができる可能性が十分ありました。私は獣医師養成に関しては素人ですが、誰が考えても、京都産業大学のほうが優れた計画をもっていたことがわかります。

 不透明とは、初めから「加計ありき」であったにもかかわらず、ずっと隠し通してきたことです。岡山理科大学の獣医学部新設が認可されたのは2017年1月14日です。しかし、約2年前の2015年2月25日に安倍首相が加計氏と会い、また同年4月2日には首相官邸で行われた今治市の企画課長や愛媛県職員と政府関係者による会合に政府側として柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が出席していたことがわかっています。(2018年4月5日に提出された愛媛県「公文書」)

 文科省文書と愛媛県文書を掛け合わせると加計学園問題の全貌はだれの目にも明らかになったといえます。今行われていないのは「責任の追及」だけです。

「けしからん」よりも「哀れ」の気持ちが先に出る

 安倍政権では「森友学園問題」「加計学園問題」「桜を見る会の問題」など、あらゆる私物化が進んでおり、その尻拭いをさせられているのが霞ヶ関の官僚です。国会で、「あそこまで、見え透いた嘘を繰り返しながら、とにかく安倍首相を庇うしかない」官僚を見ていると、「けしからん」よりも情けなく「哀れ」という気持ちが先に出てしまい、本当にどうしたらよいものかと考えてしまいます。

 第2次安倍政権約7年の間に局長以上の高級官僚は約3回転し、今ではどの省庁にも官邸のいうことを聞く“忖度官僚”しかいなくなりました。今首相が交代したとしても霞ヶ関を真っ当な状態に戻すのには、かなり時間がかかるような気がしています。

アメリカ人にとっては「憲法は宗教のようなものだ」

猿田 佐世 氏
猿田 佐世 氏

 最後に、前川喜平氏からバトンを受け取ったのは、猿田佐世弁護士・新外交イニシアティブ(ND)代表である。猿田氏は米コロンビア大ロースクールで学んだ経験、国際NGOのコンサルタントとして活動した経験を踏まえて次のように語った。

 ロースクールで学んでわかったことは、アメリカ人にとって「憲法は宗教のようなものだ」ということです。そのなかで、とくに重要なものはアメリカ合衆国憲法修正第1条の「表現の自由」で、憲法の授業で叩き込まれました。また、日本と違いアメリカでは、最高裁判所判事9人の名前、彼らが「どんな裁判をして、どんな判決を下したのか」を法律家はもちろん、多くの市民が知っています。その風土の上に、ペンタゴン・ペーパーズがあり、エルズバーグのような人間の出現があったのだと思います。

 メディアも「ニューヨークタイムズ」が差し止められれば、「ワシントンポスト」、ワシントンポストが差し止められれば、「ボストン・ブローグ」などと一体となって「表現の自由」を死守しました。その結果、最高裁でメディアは勝訴し、刑事被告人のエルズバーグは控訴棄却(控訴申立を不適法として形式的に控訴申立を退ける)となりました。

(つづく)
【金木 亮憲】

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