2024年04月24日( 水 )

マツダ城下町の光と影~日本一の人口、中四国一の財政力(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

町のあちこちにぜいたくな公共施設

揚倉山運動公園
揚倉山運動公園

 税収が大きく減っているとはいえ、府中町の財政力は今も数字上、中四国地方の市町村で1位であることに変わりはない。では、町民はその恩恵をどれほど受けているのか。東西に約4km、南北に約5kmの狭い町を車と自転車で探訪してみた。

 最初に訪ねたのは「揚倉山(あげくらやま)健康運動公園」。1996年の「ひろしま国体」でサッカー競技場となった運動公園だ。全面芝生のサッカーグラウンドに加え、テニスコートがあり、いずれもナイター設備がある。場所は山あいだが、車を使えばマツダや向洋駅があるあたりから10分少々で着いた。広い駐車場があり、車で行きやすい場所だった。

 この日は日曜日で、女子サッカーの大会が行われていた。公園内には更衣室もあり、女性も利用しやすいのだろう。サッカーグラウンドの周りでは、高齢の男性や女性がウォーキングをしていた。全面芝生なので足への負担が少なく、歩きやすいのだろう。ウォーキングを一休みしてベンチに腰を下ろしていた高齢の女性に、町の住み心地を聞いてみた。

 「住みやすい町ですよ。うちはもともと転勤族で、この町に住んで20年くらいですが、近所の人はみんな親切です。場所的にも広島市の中心部にすぐ出られますし」。

 この町の立地が良いのは間違いない。JR広島駅やプロ野球・広島カープの本拠地マツダスタジアムは町の中心部から自転車で10分もあれば着く。隣接する広島市の八丁堀や紙屋町などの中心部へもバスで20分程度だ。買い物は広島市に行かずとも、町内に中四国最大のショッピングモール「イオンモール広島府中」もある。遠出するのが億劫な高齢者はこの便利さがありがたいはずだ。

 公園の遊具がある広場では、若い女性が小さな男の子たちを遊ばせていた。その女性に町の住み心地を聞くと、「凄くいいですよ」と即答だった。「子育てがしやすい町だと思いますね。この公園のような子どもたちを遊ばせる場所もありますし」。

 男の子たちにも府中町が好きか否かを尋ねたら、「好き!」と元気のいい答えが返ってきた。理由は「遊ぶところがいっぱいある!」「校舎がきれい!」とのことだ。彼らのお勧めスポットは「空城山(そらじょうやま)公園」。訪ねてみたところ、マツダの本社からそう遠くないが、小高い場所にあって緑が豊かな公園だった。ここもナイター設備付きの大きなグラウンドがあり、アスレチックなどの遊び場がそろっていた。

 都市部では今、球技禁止の公園が多いが、ここはそういった規制はなく、子ども同士で、あるいは親子で、野球やサッカー、バドミントンをして遊んでいる光景があちこちに見られた。男の子たちが好きな理由にあげた「きれいな校舎」とは、5つある町立小学校のうち、府中中央小学校の新校舎のことだ。空城山公園を訪ねた際、途中の坂道から学校の全景を見ることができたが、横長の白い校舎はたしかにきれいで、立派だった。

空城山公園。アスレチックで遊ぶ子供たち
空城山公園。アスレチックで遊ぶ子供たち

 府中町によると、これらの施設をつくるのに要した費用などは次の通りだ。

(1)揚倉山健康運動公園
 約31億円・1996年供用開始

(2)空城山公園
 約6.6億円・1986年供用開始

(3)府中中央小学校の新校舎
 約22億円・2016年供用開始

 このほか、町の公共施設には、アリーナや図書館、トレーニングルーム、会議室などがそろった生涯学習センター「くすのきプラザ」(約23億円・2007年供用開始)、子育て世代の人たちや高齢者の交流を促す施設「府中南交流センター」(約4億円・2009年供用開始)などがある。町の財政力の高さは、公共施設の充実にはつながっているようだ。

(つづく)
【ジャーナリスト・片岡 健】

(前)
(後)

関連記事