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2020年02月19日 12:00

【シリーズ】生と死の境目における覚悟~第2章・肉親を「看取る」ということ(6)

父と向き合う充実した日々

 石田弘次郎(仮名)は、2018年(平成30年)9月23日、83歳だった父・弘を看取った。その後、弘次郎自身も病を患っていたことがわかった。長年の看護・介護疲れが影響したのかもしれない。

 父・弘の逝去から半年間、体調が悪い日々が続いたため、病院に行ったところ、「糖尿病」と診断された。弘次郎は「父・母・伯母の看病と介護、そして日中は仕事で、リラックスできる時間はありませんでした。そのストレスが気づかぬうちに蓄積されていたのでしょう。息抜きの時間がなかったため、暴飲暴食をしてストレスを解消していたのです」と当時を振り返る。その暴飲暴食が、弘次郎の健康を徐々に蝕んだ。現在、回復傾向にはあるが、いまだ通院治療を続けているという。

 そんななか、2019年(令和元年)9月、伯母に甲状腺がんが見つかり、2020年(令和2年)1月13日に86歳の生涯に幕を閉じた。伯母の逝去により、弘次郎の12年にわたる看護・介護生活は終わった。弘次郎は最後まで、父・母そして伯母に心身を捧げ、誠心誠意尽くした。前述の通り、自分自身の健康を害するまで、懸命に看護・介護を続けたのだ。

 自宅には現在、父・母、そして伯母の位牌が並んでおり、引き続き弘次郎が3人を守っている。

 今回を含め、6回にわたり、弘次郎の肉親・親族への看護・介護の壮絶な実態を連載した。ピーク時は3名の看病・介護を行いながら、生計を立てるために仕事もした。

 弘次郎は「横浜から福岡に戻ってきたときから現在、そして私が人生を終えるまで、一点の後悔もありません。

 なぜなら、両親、そして親族に関することだからです。仕事などやろうと思えば、いつでも何でもできる時代です。しかし、両親や親族が健康を害して『ピンチ』になったとき、誰が面倒をみるのかと考えたら、自分の立場などまったく考えることなく、すぐに『私がみる』という答えがでてきました。

 ほかの親族や近隣住民の無理解には苦しまされましたが、両親、そして伯母さんと過ごした時間はかけがえのないひとときであり、私の人生に彩りを添えてくれました。父・母、そして伯母と向き合える時間をいただけたことに、心から感謝しています。今も伯母さんの財産管理や父の遺産の件で、いろいろ動いております。心の底から3人に“ありがとう”と言いたいですね」と明るい表情で語った。

 筆者は今回、弘次郎にインタビューして、「自分のことより、両親や親族のために、すべてを捧げて看護・介護できるのだろうか」と自問自答した。2年前まで大阪にいる実家の母が父を10年間介護・看護し続けていた。筆者は福岡在住、当地で仕事があり、大阪へ戻って母を手伝うことがなかなかできなかった。

 父は2018年4月26日にパーキンソン病で他界した。10年前、父のパーキンソン病が発症してから、母が看病・介護をしていた。その間、母自身も酷い股関節痛で手術し、心臓疾患で入退院を繰り返しながら、父の看病に明け暮れていた。ほとんど母を手伝うことができなかったことを筆者は今でも後悔している。

 幸いなことに現在、母は元気で、近隣に住む叔母が、時折母のところに行って、話し相手になってもらっている。今は皆が元気に過ごしているものの、いつどうなるかはわからない。

 筆者は、もう後悔したくないので、万が一、母そして叔母に何かあったときは、支援することを決めている。今回の弘次郎のインタビューを通して、その決意はより一層固まった。なぜなら、「今、自分があるのは両親や親族の“おかげ”」だからである。父に対して何もできなかったことへの後悔もある。それに改めて気づく機会をいただけたことに、心から感謝の意を表したい。

(続く:この項了)
【河原 清明】

※介護経験のある方は、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
hensyu@data-max.co.jp

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