海外の事例から見る有望な不動産テックとは(後)
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(株)NTTデータ経営研究所
不動産テックでは、海外のさまざまな先進的取り組みが日本に流入していくのは、時間の問題だ。「海外の有望な成果を取り入れることによって、業界全体が盛り上がる」と期待しているのが、不動産テックのコンサルティングを行う(株)NTTデータ経営研究所・川戸温志氏だ。その川戸氏に、海外における最先端の不動産テックのシーズを聞いた。
――住宅での不動産テックの活用はいかがでしょうか。
川戸 住宅系の電子契約はアメリカでは約85%まで浸透していますが、日本では数%にとどまっているといわれています。電子契約の利点はデータの蓄積です。電子契約は通常、紙やハンコが不要なのが利点だと思われるかもしれませんが、実は一番の利点は、情報を電子化(データ化)できる点にあります。
アメリカでは、電子契約が普及しているため、物件情報などのデータ化が進みますが、日本ではそこが紙であるためデータ化が進んでいきません。さらに日本の不動産市場で流通している情報は、建物のスペックが中心です。一方のアメリカでは、周辺の人口動態やハザードマップ、居住者の健康状態、金融資産状態などの周辺情報が公開されています。ですからテック企業は、将来価格などの推察や予測を行うことが、それほど困難ではないという優位性もあります。
たとえばアメリカは、「iBuyer(アイバイヤー)」という買取再販ビジネスがすごい勢いで広がっています。仲介ではなく、価格査定アルゴリズムを用いて企業自身が即座に買い取るビジネスで、ソフトバンクも出資するOpendoor(オープンドア)がメインプレーヤーとして知られています。
日本の買取再販は、古い家を買って、リノベーションして高く売却するイメージがありますが、アイバイヤーでは株式市場のように、将来価格の予測を基にして住宅を売買するといったものです。オープンドアのプラットフォームでは、売主が物件のデータや希望価格を打ち込み、家のデータをオープンにします。それを見た買いたい方からメールが来て、双方が同意すれば、売買成立です。オープンドア以外にも、多くのプレイヤーが参入しています。
Amazon参入の狙い
――Amazon(アマゾン)も不動産に参入しましたが、狙いは何だと考えますか。
川戸 まず前提として、現在、スマートホームが注目されていることが挙げられます。家と家電は相性が良く、パナソニックやシャープもスマートホーム製品を発売しているほか、異業種からもスマートホーム参入が活発化しています。
ECの巨人・アマゾンは、不動産仲介会社のRealogy(リアロジー・アメリカ)と提携して「TurnKey(ターンキー)」というプラットフォームを構築し、ワシントンDCを始めとしたアメリカ主要15都市圏で住宅を探す人たちと、地元の仲介業者を結ぶマッチングサービスを開始しました。ビジネスモデル自体はとくに目新しくはありませんが、仲介業者を通じて、購入契約を結んだ住宅購入者には、アマゾンが1,000~5,000ドル相当の製品をサービス特典として提供する点が新鮮です。
アマゾンの不動産参入の狙いは、家丸ごとアマゾン関連製品で埋め尽くすことを目指していると考えられています。アマゾンはこれにより、住人の趣味やライフスタイルなどのデータを収集できるようになります。20年前から言われているライフイベントマーケットが実現できる時代に到来しました。アマゾンで商品を購入すると、次におススメが出てきますが、アマゾンの狙いは、リアルのライフイベントに関わる個人情報を集め、ここを今後の商圏にするのではないか、と囁かれています。
(了)
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