わらび座ミュージカル「北斎マンガ」特設ページ
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2020年03月10日 17:28

シリーズ・コロナ革命(16)~コロナショックとオンラインが致命的な影響をおよぼす コロナ革命 

 世界的に新型コロナウイルスの拡散が小売業にも深刻な影響をおよぼし始めている。社会的な影響はその終息とともに落ち着くかもしれないが、小売業への影響は明確に残るはずだ。それは業績だけにとどまらない。中国におけるコロナウイルスによるネット経由の消費行動の報道だ。市民の外出自粛やその影響による宅配利用シーンをニュース映像などで目にすれば、日本でもオンライン購入への認知度が上がる。そしてそれは遠からず無形の効果をオンライン販売にもたらす。

 今やオンライン販売は中国、アメリカという大市場を中心として大きく伸び続けている。従来型リアル店舗売上がほぼ停滞しているのとは対照的だ。

 2019年度の中国のネット経由の販売額は165兆円。前年対比136%を超え、全小売市場635兆円と26%を占める。アメリカのネット販売額も昨年は60兆円と前年に比べて11%強の伸張率だ。小売全体に占める割合も10%を超えた。一方、我が国のEC市場は約18兆円、伸び率8%。小売市場145兆円(19年度通産省商業動態調査)の12%を占めるまでになった。

 世界的に見てもリアル店舗の売上に比較して毎年、確実に販売が増加しているオンラインだが、苦手とするのがペリシャブルと呼ばれる生鮮、日配品だ。これらの商品は消費頻度が高く、商品ごとの品質に小さくない差があるから消費者はそれをオンラインで買うことに躊躇する。とくに生鮮にこだわりが強い我が国の場合はその傾向が顕著だ。

 だが、その問題に対する改善対策が進み、今回のようなオンラインが身近になるケースを経験すると、それを契機に変化も進む。そうなるとリアル店舗は以前にも増してオンライン販売の影響を受けることになる。さらに問題はパソコンに変わって、スマホ利用の購入が増えていることだ。使い勝手の良いアプリやコンテンツに加えて、その機能をさらに使いやすくする次世代通信5Gの普及もオンライン販売への追い風になる。

アメリカのリアル不振が日本にもやってくる?

 ここ数年来、オンラインの影響によるリアル店舗の不振がアメリカの小売業で深刻化している。シンクタンクのコアサイト・リサーチ社(Coresight Reseach)によると昨年閉店した全米の小売店数は9,300店に上るという。

 これは一昨年の約5割増の数値だ。そしてこの流れが今後も続くと予測している。それを証明するようにアメリカの主要都市のショッピングセンター(SC)を調査しているレイス社(REIS)によるとアメリカのSCの昨年10~12月期の空き室率は9.7%。極めて厳しい数値だ。とくに2017年からの流れは深刻で大型SCの空き室率は遠からず10%に届くはずだ。

 SCから撤退する店舗は、多数の店舗をもつ専門店や大きな面積を賃借している百貨店だ。トイザラスやメーシーズのような大きな店舗面積をもつ店舗の撤退した跡を埋めるテナントを探すのは極めて難しい。たとえそれができたとしても、減り始めたSCに客が戻るとは思えない。来客が減っているからテナントが撤退するのであって、後継テナントが決まれば問題解決するという単純な構図ではない。

 今後、このままオンラインの成長が続けば、それはそのまま廃墟化するSCが増えることになる。我が国のSCの代表格はイオンだが、イオンの場合、キーテナントが自営の総合スーパーだから赤字だからといって撤退ということにはならないが、それでもこの流れは対岸の火事ではない。

 消費増税が小売業界に深刻な影響を与えていることは直近の百貨店の業績を見ても明らかだ。さらに問題なのはコロナウイルスやオンラインだけではない。我が国の小売に継続して深刻な影響をおよぼす少子高齢化がさらに進行する。少子は消費市場の量的拡大ができないことと同義であり、高齢化も似たようなものだ。加えて若者の貧困や将来の年金不安も消費行動に水を差す。

 もう1つがリユースやシェアリングだ。モノが溢れる社会では当然、中古市場にその多くが流れ出す。新規需要が旺盛だった以前なら中古品店や質屋は一般には馴染み薄だったが今ではメルカリなどのオンラインによる個人同士の売買やリサイクルショップの登場で中古品流通は様変わりした。ビデオレンタルのゲオもセカンドストリートのように店舗デザインを考え、新たな市場開拓に乗り出している。高山質店などの旧型リユース店もしかりである。車や住居も所持から共有という流れが始まった。これらは従来型小売業の市場を侵食する。

 先月、いきなりステーキが少なくない店舗の閉店を文字通りいきなり発表した。これは高単価店の限界を表す好事例だ。いきなりステーキの主力ステーキは1gあたり8円程度の価格だ。100gあたりにすると800円。これはスーパーマーケットで売っている国産交雑牛の価格を大きく上回り、どちらかというと和牛価格に近い。300gのステーキなら2,400円。おいそれとリピートできる価格ではない。そんな高単価店を多く出店すれば不採算店が生まれるのは当然だ。消費者は消費の中身に極めてシビアなのだ。

 高単価店の店舗数拡大は業態を問わない。たとえばコストコだが、ディスカウントストアといっても一品単価も買い上げ単価も高い。こんな店は100万人単位の商圏人口が必要であるから、闇雲に出店はできない。ハローデイやボンラパスといったクオリティー型スーパーマーケットも同じだ。だから多店舗展開は容易ではない。

 一方、コンビニや日本型ドラッグストアはごく小さい商圏でも成立するから、密度の高い出店が可能だ。しかし、そんな業態でもここにきて店舗の過剰感が出てきている。過剰な店舗は売り場効率の悪化を生む。損益分岐点を割らなければスクラップはないが、それでも新規出店には影響する。無理な出店がさらなる店舗効率の低下につながるからだ。そんな状況になれば、残るのはM&Aによる規模拡大か海外展開だ。しかし、日本型小売業は海外展開が得意とはいえない。とくに欧米ではその存在感は薄い。

 たとえば、家具・ホームファニッシング大手のニトリ。12年、カルフォルニアのオレンジ郡に創業者の名を冠した「AKI・HOME」を開店した。計画では全米に1,000店を展開する予定だったが、この6年間に出店したのは6店舗。そのうちの4店舗はすでに閉店してしまった。

 ニトリに限らず、ほとんどの日本小売業は海外では目論んだ成績を上げられない。文化や商法、市場の違いなどその理由はいろいろだろうが、日本式経営はうまくいかない。

 そんな状態を考えると小売業の先行きは八方塞がりといっていい。今、国内で好調な企業もやがてアメリカの小売業のように厳しい状況が訪れるはずだ。

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

 1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に㈱ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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