2024年04月20日( 土 )

給料ファクタリングは「貸金業」に該当~各業界の反応は?(後)

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 金融庁は3月5日、給料ファクタリング業が貸金業法第2条第1項で定める「貸金業」にあたるかどうかについて、「該当する」との見解を示した。2月28日に照会のあった、一般的な法令解釈に係る書面照会に応じたもので、3月6日に金融庁HPにて公表されている。

日本貸金業協会「金融庁見解はあくまでの事例の1つ」

 日本貸金業協会の担当職員は、「ファクタリングは取引先に関して債権を譲渡する性質のもの。前提としては金銭の貸し借りではないため、そもそもは貸金業の登録をする必要はない」と話し、すべてのファクタリング業者が貸金業登録をする必要性はないことを述べた。しかし、表向きは登録の必要性がないとしていても、実態としては貸金業に該当するようなビジネススキームで事業を営んでいるケース(例としてファクタリングを装った貸付を行っている)には「ヤミ金業者」が含まれている可能性があることに触れ、「そうした業者に対する注意喚起が必要である」と述べた(※)。

※:日本貸金業協会はファクタリングを装ったヤミ金融である可能性が高いケースとして、以下を挙げている。
・売掛債権譲渡契約に償還請求権が付いている。
・売掛債権譲渡契約を結んだことを取引先に通知しない。
・申込人の(売掛金振込予定の)通帳、銀行印、キャッシュカードを預かる。
・金銭消費貸借契約を締結し、代表者や家族に保証人になることを求める。
・小切手、手形を担保に入れさせる。
・申込人の発行済み株式を譲渡担保とし、印鑑証明書、役員変更に関する登記委任状を提出するよう求められる。
・売掛金(現・金)の受け取りが、銀行などからの送金ではなく手渡しでされる。
・契約書の写し、領収書などの書類が渡されない。
・手数料(債権額と買取額の差)が年率換算にすると、事実上、利息制限法の制限を超えた高金利になっている。

 今回の事例については、「あくまでも照会者からの依頼を受け、金融庁が回答したものの1つ」であるとし、すべてに当てはまるものではないということを強調。「金融庁が根拠として示したビジネススキームで事業を行っている業者は、貸金業登録を行うか、難しければ事業撤退もしくは廃業せざるを得なくなるであろう」との見解を示した。

 一方で、「一口にファクタリングと言ってもさまざまなビジネススキームがあり、たとえそれが悪質であったとしても、現行法では明確に取り締まる法律がない」ことを問題点として挙げ、「今回のケースだけを理由にすべてを取り締まることはできない。貸金業に該当するかどうか、違法行為に該当するかどうかは、実際のビジネススキームを見ての判断(ケースバイケース)になるだろう」と述べた。

過剰な法規制は業界の停滞を招く

 貸金業界では、2010年6月18日に、グレーゾーン金利廃止と総量規制が導入されたことにともない、表向きはヤミ金業者の撲滅につながったとされているが、一方で正規業者にもその影響がおよび、結果として大幅な事業者数の減少をもたらした。また、新たに貸金業を開業するにあたっての参入障壁が高くなったことで、法改正後は新規の開業届出も年々減少、結果的に市況の停滞を招いている。

 今回の給料ファクタリングの事例は、その当時の状況を想起させる。法外な金利や手数料をせしめ、違法な取り立て行為によって資金需要者をおびやかすヤミ金業者を取り締まることに対しては、誰も異論はない。しかし、過剰な引き締めは時として正規の業者にまでもおよび、やがては経済活動の停滞を招く。ひいては、本来守るべきはずの資金需要者にもその影響がおよぶのであれば、本末転倒である。

(了)
【長谷川 大輔】

(前)

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