2024年04月20日( 土 )

「コロナショック」需要減少による原油価格の暴落とその波長(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 それでは、原油安による経済へのデメリットは何だろうか。 原油価格の暴落により、産油国の国際収支・財政収支は悪化する。産油国の財政が悪化すると、産油国からの建設プラントや造船の発注がキャンセルされることになり、韓国の建設業、造船業にとって、デメリットとなる。それに、石油化学産業は、韓国の主力輸出業種の1つでもあるが、製品の輸出額が減少し、原油安による輸入代金の減少を相殺してしまう場合もある。

 また、韓国の輸出相手国は、原油の輸出が主な収入源となっている国も多い。原油安になると、この国の財政が悪化し、韓国の輸出にも赤信号がともることとなる。

 原油安を米国に中心に考えると、原油安は株式市場にも悪影響をおよぼす。石油関連産業は株式市場で大きな比重を占めており、原油安は石油企業の業績悪化につながり、その企業の株価を大きく押し下げる要因となる。また原油安になると、新興国に投資されていた資金が新興国から逃げ出し、安全な先進国に還流することが多いので、新興国では信用不安に陥りやすい。

 このような状況下、今回の原油安がアメリカのシェール企業にも、深刻な影響をおよぼしているようだ。アメリカはシェール(頁岩)層から原油を採掘する技術を発展させ、2018年には世界1位の産油国に返り咲いた。しかし、今回の協調減算の決裂で、市場では原油価格暴落が起こっている。

 高い原油価格に支えられて、シェール企業が登場し、シェール革命を起こしているが、シェール企業に逆風が吹いている。このまま原油価格が低迷し続けば、アメリカのシェール企業は採算がとれなくなり、経営難に陥る恐れがある。一部ではロシアが米国のシェール企業を追い込むため、減算の合意に応じていないのだという説もある。

 原油安によるシェール企業の業績悪化は、シェール企業が資金調達のため発行したジャンク債のデフォルト(債務不履行)につながる可能性がある。

 ジャンク債がデフォルトに陥ると、それを保有する金融機関にまでリスクが飛び火するので、市場関係者は推移を見守っている。業界筋によると、原油価格がバレルあたり35ドルとなった場合、この価格にも耐えうる米シェール企業は16社しかないという。

 コロナウイルスで原油の需要が減少し、サウジアラビアはロシアに1日150万バレルの減産を提示した。しかし、ロシアはもう少し様子を見ようということで、サウジアラビアの減産提案を拒否し、原油価格暴落の引き金を引くこととなった。

 ロシアは原油安にすることで、原価の高い米シェール企業を淘汰させたいという意図があっただろうと専門家は指摘している。コロナウイルスによる需要減少が原油安を引き起こし、その影響で株価が暴落し、このダブルパンチで世界経済は危機に瀕しており、今後の動向が注目されている。

(了)

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