2024年03月19日( 火 )

「お金返してください」、「いいえ、お返しできません」イベント主催者の苦悩続く

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 新型コロナウイルス感染拡大防止のため政府がイベントの中止または延期を要請したことを受け、全国で多くのイベントが中止されている。

 イベント主催者にとっては、イベントを強行しても、中止しても赤字は明らかだ。

 イベントを開催する際、主催者が行う募集方法には主に3つの形態がある。入場料を徴収する方法と出展者を募り入場料を無料にする方法、それに両者を併用した方法だ。

 イベントの中止を主催者が決定した場合、現状はライブやコンサートなど入場料を前売りチケット等で購入した顧客に対しては、払い戻しに応じていることが多い。

 この場合は払い戻しに関する費用は主催者の負担となる。

 次に、出展者を募って開催しようとする場合、中止を決定すれば、特段の事情がない限り出展料は発生せず、保証金などの前受け金がある場合は出展者に返金することになる。

 政府の要請に従ってイベントの中止を決定した主催者は、前売りチケット代も出展者からの前受金も返金し、返金にかかる費用も負担しなければならなくなる。

 さらに、イベントを開催するために使ったチラシ・ポスターなど広告費も支払わなければならない。

 そして、今いちばん問題となっているのは、会場の施設使用料だ。

 福岡の例でいえば、福岡市民会館やアクロス福岡などの公的な施設であれば、「新型コロナウィルス感染拡大防止を目的として、貸施設の利用を中止する申し出があった場合、施設使用料は、全額還付(返金)し、キャンセル料は不要(無料)とします」と発表されている。

 しかしながら、会場の貸主が民間の場合はそうはいかない。

 会場の利用を予約する際に、予約保証金として施設使用料の一部、もしくは全部を保証金としてすでに支払っている。イベント主催者が中止を決定した場合に、施設使用料の「予約保証金が返ってくるのか、キャンセル料は不要なのか」が当事者間で大きな問題となっている。

 事例で見てみよう。

 以下が、福岡市内のとある貸しホールの利用規約(抜粋)である。

【お申込と手順】

 ・・・ご予約金は、ご利用日の31日前までの申込であれば、会場使用料から消費税を除いた額の半額、ご利用日の30日前以降の申込であれば、会場使用料全額となります。

【キャンセルとその料金】

 キャンセル料は、申込書提出時以降、キャンセル・日時・施設の変更があった場合に発生し、次の要領で申し受けます。申込書提出時以降、お申込をキャンセルされる場合、又は日時・施設の変更がある場合には当社担当者へご連絡下さい。

(1)ご使用日の31日前までのキャンセル又は、開催日時、会場の変更…基本使用料の50%
(2)ご使用日の30日前以降のキャンセル又は、開催日時、会場の変更…基本使用料の全額

【ホール側の免責】

(1)天災地変等不測の事故や災害のため、ご使用者側の責によらず当ホールが使用不能になった場合、ご使用者側で発生する損害については補償いたしません。ただし、この場合予約金は返金いたします。・・・

 こうした利用規約からすれば、政府の要請に従ってイベントの中止を決定した主催者は、開催予定日の1か月前だと、使ってもいない施設使用料の全額を払わなければいけなくなる。そこそこのホールだと100万円単位になるだろう。

 現在問題となってる結婚式場では、延期の場合はこれまでかかったの実費精算のみで対応している式場も多いようだが、立ち位置の違う民間の貸ホール、貸会議場の場合は「予約金の返還はできません。規約に従いキャンセル料をいただきます」としているようだ。

 「ええい、使っても使わなくても満額払わないといけないなら、イベントを強行しちゃえ!」、「クラスターにでもなったら貸主のせいだからな!」

 そういうイベント主催者の悲痛の叫びが聞こえてくる。

【TMS】

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