2024年03月19日( 火 )

世界の注目が集まっている韓国のコロナ診断体制(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 新型コロナウイルスがアメリカとヨーロッパなどを中心に、全世界で猛威を振るっているなか、韓国の大量診断体制が世界から注目を集めている。世界各国の政府は感染拡大を防ぐために、検査の拡大、渡航制限、各種集会やイベントの中止・延期を実施してきたが、ニューヨーク市のように都市封鎖という強力な措置に踏み切ったところもある。対策は国によって少し異なるものの、各国では症状を早期発見して、感染が拡大するのを防ぐべく、PCR検査を大量に実施したいというのが実情である。

 韓国は他国に先駆けて、このPCR検査の導入を積極的に決定した国だ。韓国は大量検査体制を世界のどの国よりも早く確立し、その結果、新型コロナウイルスのさらなる拡大を鎮静させることに成功したという評価を受けている。PCR検査の不確実性より、韓国人特有の「パリパリ(早く早く)」精神が優先され、韓国政府は診断キットの開発と使用に突き進んだわけである。ブルームバーグ通信によると、診断キットの開発には、普通1年以上の時間が必要になるという。しかし、韓国では2カ月くらいで診断キットの開発に成功している。

 アメリカのトランプ大統領も、最初は韓国の診断キットを過小評価していたが、国内で患者が急激に拡大し、市民の不安が高まると、診断キットで不安を和らげないといけない状況に追い込まれている。それで、トランプ大統領も韓国に診断キットの輸出を要請した。

 診断キットとは、今回のコロナウイルスのように新しいウイルスが発生すると、それに感染しているかどうかを数時間後には判断できる、化学反応を利用した検査キットである。このような診断キットには、遺伝子増幅検査(RT-PCR法)が最も多く利用されている。検体に微量含まれている病原体の特定領域のゲノム配列だけを増幅し、病原体の有無を調べる検査だ。

 ただ、この検査は結果が出るまでに時間を要するし、検査も煩雑で検査には試薬だけでなく、設備や機器も必要となる。そのため、どこでも実施できる診断法ではない。 それに、新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査の信頼度は、それほど高くないという評価が多い。感染している人を「陽性」と正しく判定できる割合を「感度」と呼ぶが、PCR検査の感度は70%くらいだ。

 一方、感染していない人を「陰性」と正しく判定する割合は「特異度」と呼ばれるが、これは相当高いようだ。韓国で新型コロナウイルスの検査のため緊急使用承認(EUA)を受けた診断キットは、全部PCR検査である。

 ところが、日本ではイムノクロマトグラフィー法を原理とした新型コロナウイルス(COVID-19)の検査キットの市販が発表されている。迅速診断キットと呼ばれるこの診断キットの検査に必要な時間はたった15分である。また、特殊な装置や専門知識が不要であり、現在新型コロナウイルス感染の検査に用いられているPCR法の遺伝子検査と比べて、時間、コスト、作業スペースの削減など、検査の大幅な効率化が図れるとされている。

(つづく)

(後)

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