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2020年04月06日 07:00

アジアの世紀を踏まえて、2020年以降の世界政治経済動向を占う!(後)

 今人類は「パーフェクトストーム」(複数の厄災が同時に起こり、破滅的な事態に至ること)の洗礼を受けており、この地球は前代未聞の嵐に飲み込まれようとしている。さて私たちは2020年以降の世界をどう生き抜いていけばよいのだろうか。
 元国連大使・元岩手県立大学学長・谷口誠氏に聞いた。陪席は日本ビジネスインテリジェンス協会会長・名古屋市立大学22世紀研究所特任教授の中川十郎氏である。谷口氏はOECD時代に『The World in 2020:Towards a New Global Age』(1997年発表)のイニシアティブをとり、未来予測「21世紀には、中国を中心とする東アジア、さらにインドを含めたアジアが世界の最もダイナミックな発展センターとなる」ことを見事的中させた。

元国連大使・元岩手県立大学学長 谷口 誠氏

中国とインドが欧米のさまざまな知恵を学ぶことも必要となる

 谷口 21世紀が「アジアの世紀」になることは間違いありませんが、私はGDPの大きさや経済成長率だけで中国やインドが欧米に代わって、世界のさまざまな新しいルールをつくっていけるとは思っていません。今後の成長過程のなかで、欧米の国際金融(シティやウォールストリート)の経験やユダヤ人ネットワークの知恵(中国も大中華圏の華人ネットワークがあります)など多くのことを学んでいく必要があると思います。ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの同窓であるマンモハン・シン インド元首相は、私との会話のなかで「インドのカースト制度における貧富の差」について心配しておられました。

中川 十郎 氏

 中川 私は商社時代にインドに5年駐在しましたので「カースト制度」(インドで生まれた独特の社会的身分制度のことで、インドでは「ヴァルナ」「ジャーティ」と呼ばれる。ヴァルナには4つの階級が存在し、ジャーティは、カーストをさらにそれぞれの職業で細分化したもの)を、身をもって体験しました。当時使用人が5人いました。料理をつくる人、料理を運ぶ人、テーブルを拭く人、床の掃除をする人、トイレの掃除をする人、洗濯をする人など階級がわかれ、すごく非効率的であった記憶があります。また貧富の差がとても大きく、カースト最下層の人たちが貧しい暮らしを強いられている一方で、カースト最上層の人たちは、大邸宅に住んで銀製品の食器などを使っていました。

 谷口 次に2060年の世界ですが、20年から60年にかけて、アジアが伸びていくことは変わりません。手許の資料によると、GDPの大きさでは、30年は中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、メキシコ、日本、60年も中国、インド、アメリカの順ですが、66年前後にはインドが中国を抜き、インド、中国、アメリカの順に変わっていくことが予測されています。

今後も岩手県から国際的に活躍する人材が出てほしい

 ――谷口先生は後進の国際人材養成のためにボランティアベースで「新渡戸国際塾」を主宰されておられます

谷口 誠 氏

 谷口 私は2005年4月から09年3月まで、岩手県立大学の第2代目学長を務めました。第一代目の学長は西澤潤一博士(元東北大学総長、元首都大学東京学長)です。
その岩手県には後藤新平、原敬、新渡戸稲造、杉村陽太郎などたくさんの偉人が出ております。そこで、「今後も国際的に活躍する人材が出てほしい」という願いを込めて「新渡戸国際塾」を創設しました。

 これからの日本は人口が減っていき、GDPも低成長に落ち入ります。また日本には資源もありません。日本で頼りになるのは人材しかありません。ヨーロッパの国々、英国などその典型ですが、国はどんなに小さくなっても、人材が豊富であれば潰れません。優秀な大学、研究機関があれば、世界中から優秀な人材が集まってきます。

 もともと、私が外務省に入った大きな理由の1つに新渡戸稲造(国際連盟事務次長、『武士道』の著者)のように「国連など国際的な大きな舞台で仕事をしたい」という思いがありました。「新渡戸国際塾」は創設後12年が経過しました。これまで約1,000名の卒業生を出し、そのなかには外務省に入った女性、東北大震災の時に大活躍した方など素晴らしい人材がたくさんいます。私はこの仕事をライフワークと考え、命が続く限り続けようと思っております。

「我アジアとの懸け橋とならん」という気持ちで活動する

 ――時間になりました。最後に読者にメッセージをいただけますか。

 谷口 新渡戸稲造は当時「我太平洋との懸け橋とならん」と言われました。私は日々「我アジアとの懸け橋とならん」という気持ちで活動しています。ぜひ、読者の皆さまも20年以降の「アジアの世紀」を存分に享受されることを祈っています。

 中川 本日は誠に貴重なお話を多々賜り大変に勉強になりました。今回の「新型コロナウイルス」は日本経済に大きなダメージを与えると考えています。こんな時こそ、日中韓が強く連携し、文字通りアジアの世紀の発展に貢献すべきだと考えます。読者の皆さまとともに、知恵を出し合いながら、明日の日本を築いていけたらと思っております。

(了)

【金木 亮憲】


谷口 誠(たにぐち・まこと)
 1956年一橋大学経済学部修士課程修了、58年英国ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ卒業、59年外務省入省、国連局経済課長、在NY日本政府国連代表部特命全権大使、OECD事務次長(日本人初代)、早稲田大学アジア太平洋研究センター教授、同大学現代中国総合研究所長、岩手県立大学学長、「新渡戸国際塾」塾長、北東アジア研究交流ネットワーク代表幹事、桜美林大学北東アジア総合研究所特別顧問などを歴任。専攻は南北問題、国際経済、東アジア共同体論。
 主要著書として『南北問題 解決への道』(サイマル出版会)、『21世紀の南北問題 グローバル化時代の挑戦』(早稲田大学出版部)、『東アジア共同体‐経済統合のゆくへと日本‐』(岩波書店)ほか多数。主要論文として、「英国のEEC接近と英連邦の将来」(『世界経済評論』)ほか多数。

中川 十郎(なかがわ・じゅうろう)
 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現・双日)入社。海外駐在20年。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、ハルピン工業大学国際貿易経済関係大学院諮問委員。米国コロンビア大学経営大学院客員研究員。中国対外経済貿易大学大学院客員教授、同大学公共政策研究所名誉所長、大連外国語大学客員教授、WTO-PSI 貿易紛争パネル委員。JETRO貿易アドバイザー。日本ビジネスインテリジェンス協会会長。中国競争情報協会国際顧問。日本コンペティティブ・インテリジェンス学会顧問など。
 主要著書として、『東アジア共同体と日本の戦略』共著(桜美林大学北東アジア総合研究所叢書)、『CIA流戦略情報読本』共訳(ダイヤモンド社)、『成功企業のIT戦略』共訳(日経BP)、『知識情報戦略』編著(税務経理協会)など多数。

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