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2020年04月05日 07:00

アジアの世紀を踏まえて、2020年以降の世界政治経済動向を占う!(中)

 今人類は「パーフェクトストーム」(複数の厄災が同時に起こり、破滅的な事態に至ること)の洗礼を受けており、この地球は前代未聞の嵐に飲み込まれようとしている。さて私たちは2020年以降の世界をどう生き抜いていけばよいのだろうか。
 元国連大使・元岩手県立大学学長・谷口誠氏に聞いた。陪席は日本ビジネスインテリジェンス協会会長・名古屋市立大学22世紀研究所特任教授の中川十郎氏である。谷口氏はOECD時代に『The World in 2020:Towards a New Global Age』(1997年発表)のイニシアティブをとり、未来予測「21世紀には、中国を中心とする東アジア、さらにインドを含めたアジアが世界の最もダイナミックな発展センターとなる」ことを見事的中させた。

元国連大使・元岩手県立大学学長 谷口 誠氏

国内の役人の気質だけでは国際機関では務まらない

 谷口 私は自分の希望で外務省でのほとんどの時間を国際機関の仕事(国連、OECDなど)すなわちマルチラテラルな分野で過ごさせていただきました。そのことでは、外務省に感謝しています。具体的には1960~1989年まで国連の内外で仕事をし、1990年から7年間OECDで仕事をしました。

 日本の外務省の主流派は、日本と主要1カ国(米国、英国、仏国など)をバイラテラル(2国間)で担当し、在外にいても、日本を睨みつつ仕事をするのが基本なので、国際感覚が養われることがありません。日本の外務省では国連関連の大きな組織の事務局長、
大きな国際会議の議長になることさえ、当時はリスクが高いとして、やりたがらない傾向にありました。

 そこで、国連関連の仕事は、明石康元国連事務次長・国際連合事務総長特別代表(現・ (特非)日本紛争予防センター会長)や緒方貞子第8代国連難民高等弁務官などの外部の有能な人材を外交官としてリクルートしてお手伝いいただくのが基本になっています。役人は役人なりにとてもいいところはいっぱいありますが、国内の役人の気質だけでは国際機関では務まらないからです。

韓国人の日本に対する感情は我々の理解を超え複雑

 ――次に、昨今急速に冷え込んでしまった「日韓関係」については如何でしょうか。

 谷口 先ほど少し申し上げましたように、日本の基本的な考え方は「日中がうまくいけば日韓もうまくいく」というものです。しかし、現実にはそんなに簡単ではありません。韓国人の日本に対する基本的な感情は「恨み」で、それが表面化するのは公式の場になります。一方で、日本が与えたダメージでいえば、中国の方がさらに大きかったと思いますが、中国人は大国のせいなのでしょうか、決して公式の場でその感情を出すことはありません。これは、OECD時代に接触をもった中国の要人たち、マダム呉儀(中華人民共和国国務院国務院常務副総理、第16期中国共産党中央政治局委員)などや私が北京大学や清華大学で教えた際に得た率直な感触です。

中川 十郎 氏

 私はOECD時代に韓国をOECDに入れるために頻繁に韓国を訪問、尽力しました。韓国の金泳三大統領がパリに来られた時、その尽力に対し「韓国の勲章を差し上げたい」と言われましたが、勲章はいまだにいただいておりません。そして、韓国がOECDに加入した時の公式コメントは「アメリカが尽力してくれた」というものでした。私は国連大使時代も同じビルにいた韓国大使とよくゴルフに行き会食もしました。しかし、その大使も公式の日韓関係になると、全然態度が違いました。私は個人的には孔魯明元駐日大使などすばらしい韓国の友人がたくさんいます。しかし、韓国人の日本に対する感情は、我々の理解を超えるぐらい、複雑なものであると認識しています。

 中川 谷口大使のお話はとてもよくわかります。私が商社マン現役のころは、ことビジネスにおいては、韓国人と非常に友好的にやっていました。ただし、日本から学んだ技術などがあっても、韓国人は「日本から学んだ」という表現を使うことを潔しとしなかった記憶があります。

「科学技術がどの程度進歩するのか」を見定めることに苦労

 ――2020年以降のアジアの世紀については、どのようにお考えですか。谷口先生はOECD時代の1997年に『The World in 2020:Towards a New Global Age』のイニシアティブをとり見事20年後の世界を的中させました。そこにはどのようなご苦労がありましたか。また、最近公表された「OECD 2060年の世界」についても少し触れてください。

 谷口 OECD時代の1995年から97年にかけて、『The World in 2020:Towards a New Global Age』のイニシアティブをとりました。私はアジア人として初めて欧米先進国のエリートの集りといわれるOECDのナンバー2の事務次長になりました。当時の私へのプレッシャーはとても大きなものがありました。

 予測の基となるデータはアメリカ、オランダなどのシンクタンクを中心に豊富にありました。私はそれらのデータを使い、経済学者であるアンガス・マディソン(1953年から78年まで欧州経済協力機構・OEECおよびOECDエコノミスト)の統計を参考にしました。経済成長率は過去のトレンドの延長線上にイメージすることができますが、一番苦労したのは「科学技術がどの程度進歩するのか」を見定めることでした。
科学技術というのはステディに進歩していくものではなく、ある時急に大きく進歩するものだからです。最も予測しやすかったのは人口でした。

 的中した今となってはどこからも文句は出ませんが、発表当時OECD事務次長として経団連に説明に参じた時は、外務省幹部からも、経団連幹部からも、「中国が経済で日本を追い抜くことなんて、そんな馬鹿なことがあるか」と酷評されました。
 中国のGDPは実質的に2010年の時点で日本を追い抜き、その後も加速度的に伸び、現在は約4倍になっています。

(つづく)

【金木 亮憲】


谷口 誠(たにぐち・まこと)
 1956年一橋大学経済学部修士課程修了、58年英国ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ卒業、59年外務省入省、国連局経済課長、在NY日本政府国連代表部特命全権大使、OECD事務次長(日本人初代)、早稲田大学アジア太平洋研究センター教授、同大学現代中国総合研究所長、岩手県立大学学長、「新渡戸国際塾」塾長、北東アジア研究交流ネットワーク代表幹事、桜美林大学北東アジア総合研究所特別顧問などを歴任。専攻は南北問題、国際経済、東アジア共同体論。
 主要著書として『南北問題 解決への道』(サイマル出版会)、『21世紀の南北問題 グローバル化時代の挑戦』(早稲田大学出版部)、『東アジア共同体‐経済統合のゆくへと日本‐』(岩波書店)ほか多数。主要論文として、「英国のEEC接近と英連邦の将来」(『世界経済評論』)ほか多数。

中川 十郎(なかがわ・じゅうろう)
 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現・双日)入社。海外駐在20年。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、ハルピン工業大学国際貿易経済関係大学院諮問委員。米国コロンビア大学経営大学院客員研究員。中国対外経済貿易大学大学院客員教授、同大学公共政策研究所名誉所長、大連外国語大学客員教授、WTO-PSI 貿易紛争パネル委員。JETRO貿易アドバイザー。日本ビジネスインテリジェンス協会会長。中国競争情報協会国際顧問。日本コンペティティブ・インテリジェンス学会顧問など。
 主要著書として、『東アジア共同体と日本の戦略』共著(桜美林大学北東アジア総合研究所叢書)、『CIA流戦略情報読本』共訳(ダイヤモンド社)、『成功企業のIT戦略』共訳(日経BP)、『知識情報戦略』編著(税務経理協会)など多数。

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