• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年04月06日 15:30

なぜCOVID-19はこれほど恐れられているか?〜過度に恐れる必要はないが、決して敵を甘くみてはいけない!(前)

大阪大学元総長 平野 俊夫 氏

 NetIBNews編集部宛に大阪大学元総長・平野教授によるコロナウイルスの解説(3月27日付)が同氏の友人から送られてきたので、本日より3回に分けて紹介していきたい。

 最近、知り合いの開業医から、「季節性のインフルエンザでさえ毎年60万人の人が世界で死亡しているのに、なぜ新型コロナウイルス(まだ2万人しか死亡していない)でこれほど世界中が大騒ぎしているのか?」という質問を受けました。

 確かに政府の説明を聞いているとオーバーシュートとか感染爆発の危機が目の前にあるので、ひたすら自粛に協力してほしいというだけで、なぜこのまま放置しておくと、どのように大変なことになるという具体的な説明がありません。いかに深刻であるかという事実をよく説明したうえで、だからこそ、そのような深刻な事態に陥らないために対策するのであると、訴えなければ説得力はないと思います。

 また本当は1万m競争、あるいはフルマラソンなのに100m競争のように全力疾走をすると、フルマラソンはもちろん1万m競争も完走不可能です。COVID-19との戦いは100m競争(水際作戦は100m競争です)ではなく、パンデミックになった現時点では、1万m競争、あるいはフルマラソンであることを認識する必要性があります。ペース配分を十分に考えて走る(対策を立てる)必要があると思います。

前書き

 昨年12月に中国で発症した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は当初中国政府が情報公開せず、また事態を甘くみていたこともあり、瞬く間に武漢を中心に中国に広がりました。その後ダイヤモンドプリンセス号の感染症騒ぎがありました。2月24日に開催された専門家会議が、今後1~2週間が瀬戸際であるとアナウンスしました。その後、学校の休校が始まりました。ヨーロッパ、とくにイタリアの感染拡大にも関わらず日本は何とか押さえ込みに成功した感がありました。しかし最近は日本全体に気の緩みがでて危険な状態にありました。そのような中で、大阪府知事より3月20~22日の3連休は大阪と兵庫県の行き来を自粛する要請がありました。3月25日には東京都知事が緊急記者会見を開きました。そして26日に政府が対策本部を設置し、いつでも緊急事態を宣言できる体制を整えました。このように、今、日本は感染爆発の瀬戸際にあります。

 世界に目を向けると中国に端を発した感染流行は今やヨーロッパに広がり、イタリアでは医療崩壊が起こり、死者は中国の2倍以上になりました。そして流行地はアメリカに移りつつあります。世界で44万人が感染し死者は2万人以上になりました。インドは13億人の国民の外出禁止、移動制限を発令しました。中国が情報公開しなかったのがそもそもの原因ですが、欧米やWHOも当初甘くみていた節があります。おそらく以前の新型インフルエンザ、SARSやMERSのように封じ込めに成功すると考えていたのではないかと思います。しかし、封じ込めに失敗し、世界にウイルスが拡散してしまい、もはや後戻りができない状態にまで進展してしまいました。

 では、なぜ新型コロナウイルス感染症は恐れられているのか?季節性インフルエンザとなにが異なるのか?

 まず、心理的な側面があります。季節性インフルエンザはワクチンと治療薬がありますが、新型コロナウイルスに対してはワクチンも治療薬もありません。人は、自分でコントロールできないことに対しては漠然と不安を抱きます。しかし、単に心理的な側面だけではなく、もっと重大な客観的な事実があります。

 人類の歴史は感染症との戦いであったと言っても過言ではありません。中世ヨーロッパでは人口の50%近くがペストの流行で死亡し、ヨーロッパの中世封建体制が崩壊しました。アステカ文明やインカ帝国の滅亡も感染症が大きな原因となりました。16世紀当時、北米や南米には天然痘がそもそもなかったので、現在の新型コロナウイルスのように人々は免疫がありませんでした。一方、ヨーロッパでは天然痘の流行がしばしばあったので、ある程度免疫がありました。わずか200人のスペイン人兵隊のなかで1人が天然痘にかかっていました。この1人からインカ帝国2,000万人にあっという間に天然痘が広がり、半数近くの人々が死亡したと考えられています。そして、インカ帝国は1年でスペインに降伏しました。新型コロナウイルスは当時のインカ帝国の人にとっての天然痘に相当します(もっとも天然痘の致死率は50%ぐらいなのではるかに危険ですが)。

(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年05月27日 16:30

Zoomが中国で利用規制~新規の無料ユーザー登録が不可に

 ここ数日、中国において、「Zoom」の無料ユーザーがログインできない事態が生じている。24日、記者が日本、中国、香港の友人たちとZoomで会話をしようとしたところ、...

2020年05月27日 16:10

緊急事態宣言全面解除 「新しい生活様式」46ヶ条の総まとめ

 「新しい生活様式」とは何か! すでに実践済みとは思いますが、改めて政府が唱える46項目の「新しい生活様式」を掲載します

名ライオンズマン・和田耕司氏のライオンズクラブ「惜別の辞」

 和田耕司ライオンより、ライオンズクラブ脱会にあたっての「惜別の辞」が送られてきた...

2020年05月27日 13:36

【BIS論壇No.322】コロナ後の日本、世界経済予測

 今回のコロナパンデミックは2003年のサーズに比べ、グローバル化の加速もあいまって、伝染病が短期間に世界に蔓延。世界の経済活動にかつてない深刻な影響を与えている...

宇都宮健児都知事誕生の可能性

 新型コロナウイルスの人口あたり死者数のデータを見ると地域差が歴然としている...

2020年05月27日 11:26

春日市温水プール大規模改修、中野建設JVが3.5億円で落札

 春日市発注の、「春日市温水プール大規模改修工事(建築工事)」を、中野建設・キムラJVが3億5,850万円(税別)で落札した...

2020年05月27日 10:56

危機に直面し、自らをイエス・キリストにたとえる孫正義の自信と勝負魂(1)

 日本では緊急事態宣言が解除されたが、先行きに対する不安は残ったままだ。そのため、政治家はいうにおよばず、ビジネスの世界でも冒険心や挑戦の気概を失い、立ち止まってしま...

2020年05月27日 10:18

「徒歩の調査」から見た福島第一原発事故 被曝地からの報告(中)

 放射線の話になると、さまざまな単位が出てくるため、以下に簡単に説明しておきたい。原発事故の記事が出ると、多くの読者はこれで訳がわからなくなる...

2020年05月27日 07:00

【書評】『やる気を引き出す言氣の心理学――働き方か生き方改革か』柳平彬著(ぱるす出版)

 著者の柳平氏は、昨今議論されている働き方改革について、より大事なことは1人ひとりの「生き方改革」ではないかと主張する。その理由は人の潜在的な能力を引き出すには...

2020年05月27日 07:00

博多阪急3月期、売上高4.7%減 インバウンド、コロナ禍響く

 エイチ・ツー・オー・リテイリングの発表した2020年3月期決算によると、博多阪急の売上高は...

pagetop