2024年04月24日( 水 )

社内コミュニケーションを向上させ、ボトムアップでより良い決定ができる会社に(後)

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(株)ニシケン 代表取締役社長 田中 誠一 氏

 九州を代表する建機レンタル・福祉レンタル会社である(株)ニシケンの新社長に2020年1月、田中誠一氏が就任した。金融業界出身の田中社長は、他社に自社の資産を貸すという点において建機レンタル業界との類似性を感じるとともに、将来性を大きく感じているという。業界における競争が激化して広域系業者への収斂が進むなか、今後、親会社である大手の(株)カナモトとのアライアンスをどのように生かし、会社を強くしていくのか、田中社長に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)

今後の抱負

 ――社長就任の初年度である今年の重点課題は何でしょうか。

 田中 コミュニケーションを大事にしていきたいと思っています。コミュニケーションを重視する理由ですが、それはきちんと意思疎通ができていないために、業務上のロスが生まれるからであり、それを防ぐためです。ニシケンのように歴史のある会社においてはそのようなロスが多いと思いますが、他方で今後大きく変われると思いますので、その分期待しています。ニシケンの社員は約500人ですが、このくらいが対面でのコミュニケーションが限界となる数値だと思います。

 ――コミュニケーションは本当に難しいですね。弊社のような規模でも、たとえば2人がそれぞれ真面目に言っているのに、その前提となる情報が共有されていないため、話がかみ合わないという事態が生じています。

仮設機材

 田中 コミュニケーションの向上のため、1 on 1、フェイス・トゥー・フェイスが大事であり、雑談形式で行っていきたいと思います。また、社員のバックボーンをそろえるためには情報開示が必要であり、できるだけ行いたいと思います。また、説明責任、質問責任という概念も浸透させたいと思っております。これらの概念はサイボウズ(株)副社長の山田理さんの著書から借用しています。山田さんは私の友人で、ご本人から用語の使用許可は得ています。

 ただ、サイボウズというある種のイノベーティブなIT企業でうまくいった事例について、伝統的な企業であるニシケンでどれだけできるかわかりませんが、やる意義はあると思っています。現地に人がいなくてもオンライン上のつながりで業務ができる業種とは異なり、ニシケンのようにモノを動かしてフェイス・トゥー・フェイスでやり取りをしないといけない建設や福祉の世界でどこまでできるかはこれから模索するところです。

 ――何か具体的な仕組みなどを考えていらっしゃいますか。

 田中 社員間での情報交換をする物理的な仕組みをこれから整えていくつもりです。

 ――社長として、長崎前社長を踏襲しつつ、どのような独自性を発揮されていくおつもりですか。

 田中 銀行員というと保守的なイメージがありますし、実際にそうなのですが、私自身は銀行では為替のディーラーの業務に従事していた時期が長く、意思決定の速さと果敢なポジション・テイキングが自身の強みであると自負しています。その強みをニシケンのチャレンジ精神の強さとうまく組み合わせることができればと思っています。

 ただし、その意思決定を行うに際しては、正確な情報が必要となります。この情報というのは自身の直下から上がってくる情報だけでなく、網の目を張りめぐらして得たものでないとその精度が高まらないと思います。ポジション・テイキングは情報が正確でないとかえってリスクが高くなってしまいます。その意味において、コミュニケーションを向上させたいというのはこのような理由からでもあります。これから時間をかけて従業員、顧客と話し、自身の情報網をつくっていくつもりです。

 また、残念ながら建機レンタルという業界は世の中にあまりよく知られていません。今後、業界の知名度を上げていくことに九州において貢献できればと思っています。

(了)

【文・構成:茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 誠一
所在地:福岡県久留米市宮ノ陣町若松1-9
設 立:1960年11月
資本金:10億4,903万円
売上高:(19/10)204億2,243万円

<PROFILE>
田中 誠一
(たなか・せいいち)
1966年福岡県大野城市出身。九州大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。92年日本興行銀行(現・みずほ銀行)入行。2017年みずほ銀行国際為替部副部長、19年6月(株)カナモト社長付顧問を経て、20年1月に(株)ニシケン代表取締役社長に就任。

(中)

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