2024年04月20日( 土 )

厳しさ増すパチンコ業界~ホールの生存戦略とは(後)

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パチンコホール(以下、ホール)の経営環境は厳しさを増している。2018年2月施行の「改正風営法」による遊技機への規制強化に端を発した遊技人口の減少加速は、ホールの統廃合に弾みをつけ、大手ホールによる市場の寡占化を招いた。こうしたなかで、20年4月1日に施行された「改正健康増進法」への対応や、21年1月末を期限とする「新基準機への総入れ替え」など、費用負担が先行する現況は、中小規模のホールにとって企業存続をかけた“勝負所”だ。各社が選択する生存戦略とは――。

ウイルスという予想外の障害

 改正風営法にともなう旧基準機から新基準機への総入れ替え、改正健康増進法にともなう屋内原則禁煙への対応。これらは決定していたことだが、新型コロナウイルスは青天の霹靂。20年3月に不要不急の外出自粛要請が出されると、新台入替を含む広告宣伝の自粛が促され、20年4月7日の緊急事態宣言により、対象エリアで営業中の主要なホールは休業を余儀なくされた。

 業界ではダイナムが先陣を切って対象エリアでの営業を休止。福岡でも「玉屋」「ワンダーランド」「フェイス」など、地場有名ホールが次々と臨時休業を表明した。

新型コロナウイルスへの
対応に追われるホール

 新型コロナウイルスは、収束の見通しが立っておらず、業績への影響は甚大だ。地場ホール関係者は今回の「コロナショック」をどう受け止めているのだろうか。

 「大手は社会的責任もあると思うので営業休止は英断だと思います。と同時に、組合の存在など横のつながりも強いので、業界内で事前協議してもよかったと思います。大手から見れば営業エリアの一部でしかなくても、そのエリアでしか営業していないところにとっては事情が変わってくる。この流れは仕方ないと捉えている半面で、もっと打つ手があったと感じるので、『勘弁してくれ』とも思います」(ホールB)。

 「実際の損失額や従業員への保証問題などが出てくる。今まさに計算していますが、中小規模の会社にとっては頭の痛い問題です」(ホールC)。

 「自粛要請の段階でご高齢のお客さまの来店が減り、稼働が15%程度低下しました。そこへきての緊急事態宣言ですので、業績への影響は間違いなく出ます。早く収束するのを願うばかりです」(ホールD)。

 悪影響しかおよぼさない新型コロナウイルス。中小規模ホールは、正念場を迎えている。

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パチンコホールが生き残るために

 ではホール、とくに中小規模ホールはどのようにこの苦境を乗り越えればいいのか。飲食や保育事業など果敢に異業種に挑戦している企業群がある。長崎を拠点にホール「ビッグアップル」などを展開するオークラホールディングスは、競争馬の調教へと乗り出すなど、面白い取り組みを始めている。2頭を2億1,280万円で購入しており、調教施設の運営も手がける。目標として、当初20年夏の東京五輪への出場を目指していた。

 無論、ホール運営を掘り下げるという選択肢もある。東京・秋葉原ではいわゆる「萌え」キャラが活躍する作品をモチーフとしたパチンコ・スロット台の設置を意図的に増やすことで、店舗を特徴づける手法が散見される。あえて客層を絞るというのも、1つの手だ。

 「不動産事業に手を出す大手もいますが、平米あたりの粗利を考えると、人材確保などの費用やリスクを背負ってまでやってみようとはとても思えません」(ホールE)。

 場所を確保すれば、あとはパチンコ・スロット台が勝手に稼いでくれる。効率の良いビジネスだったが、源泉となる遊技ファンが離れるなか、休眠顧客の掘り起こしも困難なのが現状。より一層の強みを身につけることが、市場で生き残るためには不可欠だ。

(了)
【代 源太朗】

(中)

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