2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

観光サービス業は日本のトップ輸出産業になる(後)

ザ・キャピトルホテル 東急 総支配人 末吉 孝弘 氏
((株)東急ホテルズ 常務執行役員)

 「ザ・キャピトルホテル東急(以下、キャピトル)」は、東急ホテルのフラッグシップを担うラグジュアリーホテルだ。フォーブス・トラベルガイドで4つ星にランクされる。ホテル名に冠した“キャピトル”(国会議事堂)の通り、永田町の国会議事堂近くに立地する同ホテルは、1963年に開業した「東京ヒルトンホテル」をルーツにもち、「キャピトル東急ホテル」を経て、2010年にリニューアルオープンした。今年は、キャピトル開業10周年という節目に当たる。この間、どのようにホテルマネジメントを行ってきたのか。新型コロナウイルス感染症が世界を席巻するなか、今後の日本の観光サービス業をどう見ているのか。総支配人の末吉孝弘氏に話を聞いた。

数字ではなく「志」を追求

 ――末吉総支配人が考えるキャピトルのブランドの方向性とは、どのようなものですか。

 末吉 アソシエイツ全員が共有できる方向性は、単純でわかりやすいものでなければいけません。就任当時、私の心に浮かんだ言葉は「日本一のホテルになる」でした。そう言うと、「何で日本一になるの?」と茶々を入れられます。ホテルの評価には、単価、稼働率、口コミ評価などの物差しがありますが、私が考える日本一とは、そういう物差しでは計れないものなのです。

 キャピトルには約450名のアソシエイツがいますが、彼らはそれぞれの担当分野のプロフェッショナルです。彼ら1人ひとりがその道の日本一を目指して、「日本一の集団」をつくること。これが私の考える日本一のホテルです。たとえば、キャピトルにはニジマスの料理コンテストで日本一になった料理人がいますが、そういうアソシエイツの集団をつくりたいということです。

 経営的な指標だけで日本一を目指すと、「志」として虚しいものになります。ホテルに限らず、組織が追求すべきは、経営的な指標ではなく、志であり、ロマンなのです。志やロマンが共有されないと、組織として1つになれません。私がアソシエイツにいつも言うのは、「それぞれの担当で日本一になってくれ」ということです。日本一の集団ができれば、今と違った景色を全員で見られるはずです。今は、「違う景色を一緒に見たい」と考えるアソシエイツが、少しずつ増えてきています。

建築家・隈研吾氏が手がけたホテルエントランス
(写真提供:ザ・キャピトルホテル-東急)

 ――ホテルの格付けについて、どうお考えですか?

 末吉 第三者的な評価軸は、非常に大事だと考えています。お客さまは第三者の評価を参考にされますし、その評価を基にお泊まりになるホテルを選ばれる方は多いです。私は、志として「日本一のホテルになる」を目標に掲げていますが、第三者による評価軸の1つとして、フォーブス・トラベルガイドの5つ星も目標にしています。5つ星のホテルは、東京には5つしかありません。現在キャピトルは4つ星ですが、5つ星はもう目前と感じています。来年は、東京6番目の5つ星ホテルとなれるよう全力で取り組んでいます。

コロナの影響は短期的

 ――新型コロナウイルスが世界的に蔓延しています。

 末吉 新型コロナウイルスによる影響は、短期的なもので、基本的なトレンドは変わらないと考えています。つまり、インバウンドは今後も確実に増え、減ることはないということです。キャピトルのような立地で仕事をしていると、国はインバウンドを増やすことに全力を注いでいるということが、肌感覚で伝わってくるのです。日本の国力を高めるには、観光サービス業が重要な役割をはたします。いずれ日本の輸出産業のトップになるでしょう。

 アジア諸国の経済成長によって、アウトバウンドは確実に増えます。「アウトバウンド数」×「デスティネーションとして選ばれる指数」=「インバウンド数」なのです。東京オリンピックに向け、さまざまなインフラが整備され、海外から人が来やすい環境が整い、これによって、「デスティネーションとして選ばれる指数」が高まりました。オリンピック後には、大阪万博やIRが予定されていますが、これらは、インバウンド需要喚起のため、国が政策として仕掛けたモノです。観光サービス業を育てるため、国はすでにいくつもの手を打っているわけです。長期的に見れば、日本でインバウンドが減ることはないと考えています。

「木材ストロー」

 ――SDGs(持続可能な開発目標)にも力を入れているようですが、独自でやられているのですか。

 末吉 私はヘソ曲がりなもので、「東急ホテルズ全体でやるから、キャピトルもやる」だけだと、気が済まない人間です。「キャピトルはこうやるんだ」ということを打ち出したいということで、キャピトル独自のSDGsへの取り組みを進めているところです。

木材ストロー

 私は、地球や環境のために何かするなら、「長続きすることをやりたい」とずっと考えていました。そこで、木材ストローに出会ったわけです。私も最初は、「木材ストローを使ったところで、どれだけのプラスチックが減るのか」と疑問をもっていましたが、キャピトルで木材ストローを使い続けることによって、林業を育て、森林を守る活動につながるということに気づき、持続可能的な環境への貢献だと考えるに至りました。

 木材ストローは、通常のストローの100倍のコストがかかりますが、だからこそ、キャピトルにしかできないすばらしい環境貢献だと考えています。東急ホテルズのフラッグシップであるキャピトルとしては、やはりこれぐらいのことをしなくてはいけません。

総支配人の器で決まる

 ――リクルーティングはいかがですか。

 末吉 私自身が会社説明会に行き、どうしても採用したい人材には、私が直接会って話をしています。一般企業もホテルもトップ次第です。ホテルは、総支配人の持つ器以上にはなれません。トップの考えも知らずに、学生は就職先を選ぶことは本来できないはずです。

 説明会では、「私には合わないと考える人は、キャピトルを受けなくて良い」と話しています。私が総支配人になってから、新卒採用で困ったことはありません。毎年50名ほど採用しており、順調にきています。採用のコツは、学生の目を見ることです。目を見れば、この仕事が好きかどうかわかります。仕事が好きでないと、長続きはしません。仕事が本当に好きであれば、多少イヤなことがあっても目をつぶってくれます。結婚と同じです(笑)。

(了)

【大石 恭正】


<プロフィール>
末吉 孝弘 (すえよし・たかひろ)

1961年、神奈川県横浜市生まれ。85年に神奈川大学法学部卒業後、東京急行電鉄(株)入社。97年パンパシフィックホテル横浜マーケティング部長、2002年ハワイ島マウナ・ラニ・リゾート社副社長、09年(株)博多エクセルホテル東急執行役員総支配人、12年(株)関東東急イン渋谷エクセルホテル東急・渋谷東急イン総支配人、14年(株)東急ホテルズ執行役員運営部長、15年同マーケティング部長を経て、17年同取締役執行役員・ザ・キャピトルホテル 東急総支配人、20年4月に現職。


<HOTEL INFORMATION>
ザ・キャピトルホテル 東急

所在地:東京都千代田区永田町2-10-3
TEL:03-3503-0109
URL:https://www.capitolhoteltokyu.com

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