2024年04月19日( 金 )

新型コロナに関わらず中国公船の尖閣諸島海域での活動は増加、南シナ海での実効支配も進む

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 中国の周辺諸国との間に領有権問題を有する海域における行動が目立ってきている。南シナ海の諸島および尖閣諸島だ。中国はいち早く新型コロナウイルスの新型肺炎の感染を抑え込んだが、米国、東南アジア諸国が感染拡大防止のため余裕がないなか、南シナ海の実効支配を強めようとしているように見える。

 南シナ海において、中国は4月18日、海南省三沙市(2012年6月に新設)に南シナ海のスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)、パラセル諸島(同:西沙諸島)をそれぞれ管轄する「南沙区」「西沙区」を設置すると発表した。南沙区政府はファイアリークロス礁(同:永暑礁)、西沙区政府はウッディー島(同:永興島)に置く。中国は両島を中心に、周辺海域の埋め立て、軍用滑走路の建設、ミサイル、レーダーの配備、各種関連施設の建設などを行ってきた。三沙市にはもともとほとんど島民はいなかったが、現在では軍事関係者を除き約1,800人が居住しているようだ。

 東シナ海においては、尖閣諸島周辺の領海に侵入またはその接続水域内に入域した中国公船の隻数を見ると、入域隻数は昨年1~3月は220隻、今年1~3月は309隻であり、昨年同期比40%増である(海上保安庁調査)。旧正月期間、武漢市の都市封鎖時期にも関係なく、入域または侵入が行われていた。12年9月の統計開始以来、同期間では過去最多である。4月は昨年に比べて減少(19年:114隻→20年:100隻)している。

 南シナ海の諸島をめぐって、台湾が中国と同様にほぼ全域の領有権を主張しているほか、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイがそれぞれ一部の領有権を主張、または実効支配している。これに対し、ベトナム、フィリピンが即座に反発を示した。

 ベトナムは外務省報道官が両諸島に関して、ベトナムの主権の正当性を主張し中国の措置が無効であるとする声明を発表した。

 フィリピンはロクシン外相が中国側の措置に対して抗議した。また、カルピオ前最高裁判事がメディアに対して、マレーシア、ベトナムとの合同パトロールおよび両国に加え米国、英国、オーストラリアとも連携を強めて中国に対抗することを提案している。

 米国は国務省報道官が中国は各国の新型コロナ対策での忙殺に付け込んでいると批判。28日にパラセル諸島付近に駆逐艦を、29日にスプラトリー諸島付近に巡洋艦をそれぞれ派遣している。

【茅野 雅弘】

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