2022年05月17日( 火 )
by データ・マックス

武田薬品工業が子会社売却~「庇を貸して母屋を取られる」

 国内製薬業界最大手の武田薬品工業は18年12月5日、大阪市で臨時株主総会を開き、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を提案。議決権ベースで9割近い賛成で可決した。シャイアーも同日夜(日本時間)に開いた臨時株主総会で株主の承認を得た。
 武田薬品工業は19年1月8日、シャイアーの買収が完了したと発表。買収総額は日本企業としては過去最高額の約7兆円。クリストフ・ウェバー社長は「当社の歴史のなかで非常に重要な出来事であり、より大きな規模と地理的拠点を通じて革新的な医薬品をお届けする」とのコメントを発表。世界の製薬企業の売上高トップテンの8位に入る「メガファーマ」が誕生したが、シャイアーの買収で5兆円を超える借金が重荷となり、財務内容が大幅に悪化した。

【表1】を見ていただきたい。武田薬品工業の業績推移表である。
~この表から見えるもの~
◆シャイアーの買収により20年3月期の売上高は、前期比+1兆1,628億円の3兆2,000億円(前期比55.4%増)と大幅な増加予想となっている。
・しかし、営業利益は前期比▲1,949億円の100億円(前期比-95.1%)。経常利益は▲1,400億円。親会社に帰属する当期純利益は▲1,620億円と赤字転落予想となっている。

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~武田薬品工業が子会社売却へ~
日経ビジネス(電子版)が4月24日、「武田薬品工業が一般用医薬品(大衆薬、OTC)を手がける完全子会社の武田コンシューマーヘルスケア(TCHC、東京・千代田)を売却する方針を固めたと報じた。TCHCはビタミン剤の「アリナミン」やかぜ薬の「ベンザブロック」などをもつ。OTC国内最大手の大正製薬や投資ファンドなどが名乗りを上げることになりそうで、売却金額は4,000億円程度まで膨らむことも予想される。武田は「非中核事業の売却により、財務体質の改善を急ぐ」と、武田薬品工業が財務内容を改善するため、「非中核事業」の売却をするとスクープした。
◆関係者らによると、武田薬品工業はすでにファイナンシャルアドバイザー(FA)として野村証券を起用し、売却に向けた入札の準備を進め、複数の買い手候補に打診を始めているといわれ、一次入札の締め切りは連休明けと見られている。
◆武田薬品工業は5月13 日(15時00分)に20年3月期の決算発表を予定しており、国内OTC最大手でドリンク剤「リポビタン」シリーズや風邪薬「パブロン」などを展開する大正製薬や、ロート製薬(武田コンシューマーヘルスケアの社長だった杉本雅史氏をロート製薬の社長に迎えている)、および外資系のプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドが買い手として名乗りを上げる可能性があると見られている。
<まとめ>
 【表2】は名乗りを上げたと推測される大正製薬とロート製薬の業績推移表であり、【表3】は武田薬品工と大正製薬HDおよびロート製薬の貸借対照表。【表4】は3社の株価推移表である。
 シャイアー買収は「庇を貸して母屋を取られる」のことわざの通り、武田薬品工業は厳しい状況になっているのがわかる。一方、入札に手を挙げたと推測される2社の業績を見れば、TCHCを買収する余力は十分あることが読み取れる。一次入札をクリアする企業は何社あるのだろうか。また最終的に買収する企業は、はたして、どこに決まるのだろうか。

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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