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2020年05月25日 07:00

ドラッグストア今昔物語 業界の変遷をたどる(後)

 医薬品小売業は、かつての薬局・薬店からドラッグストア(以下、DgS)として業態転換し、多様化する消費者ニーズに応えてきたことで支持を集めてきた。近年はそれによる競争激化にともない、チェーンDgSを軸に再編が活発に行われ、他業態からも注視されている。今回はその変遷について、医薬品小売業の歴史を振り返ることで、新しい時代のDgSがどのように変わっていくべきかを考える。

JACDSが誕生

 90年代に入ると、DgSの業界団体の発足を望む声が大きくなり、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が設立されるが、当時の医薬品小売業界は薬局・薬店など業種店が中心で、DgSには否定的で「DgSは物売り。我々、薬剤師の仕事とは別物だ」と酷評されるなど、薬局・薬店からは目の敵にされていた。

JACDS 前事務総長 故・宗像 守 氏

 JACDS設立には業界企業が加盟するドラッグストアMD研究会の当時会長だった(株)ドラッグストアバイコー社長・明神正雄氏と同研究会顧問で前JACDS事務総長・宗像守氏(故人)が先頭に立ち、「DgSの産業化」を唱え、設立に動いていたが先述の状況でなかなか進まないなか、ある日、マツモトキヨシの松本氏から宗像氏に面談の連絡が入ったという。宗像氏は「この面談で松本氏の協力がなければ、JACDSの設立はなかったかもしれない」と語っている。

 宗像氏は「設立に至っては、経済産業省の外郭団体である(一財)流通システム開発センターで現・(一財)日本ヘルスケア協会の常務理事の佐藤聖氏にも協力していただいた」という。佐藤氏は経産省を筆頭に、さまざまな業界団体や民間組織とパイプをもっていたことから、設立における行政・民間の折衝について尽力したという。JACDSは99年に、マツキヨの松本氏を会長に設立された。

JACDSの活動

 JACDS設立の式典では、経産省や管轄である厚生労働省の担当者が出席・挨拶に上がるなど、行政・民間で格式あるかたちとして船出をしたものの、当初、業界紙などのメディアは、活動姿勢に懐疑的で「反DgS報道」や「反宗像」の姿勢だったが、活動における宗像氏の信念ある取材応対により、メディアも次第に「宗像応援団」へと変わっていった。

 JACDSの活動は2002年に経産省の商業統計にDgSの新設や06年の薬事法改正による登録販売者制度創設など、DgS業態の認知・業界発展のための活動を行ってきた。現在のDgS業界の市場規模は、19年度のDgSの売上高は、前年比5.7%増の7兆6,859億円にまで成長を遂げている。

 しかし、成長路線の一方で、生き残りをかけたM&Aも激しさを増している。マツキヨの松本社長は以前、将来のDgS業界について「3~5社に集約されるだろう。そのなかに当社が入っているかどうかはわからないが」と語っており、予見するかのようにM&Aが活発になった。業界再編にともなうM&Aのバトルで今でも筆者の記憶に残るのは、マツモトキヨシと(株)高田薬局、(株)イオンとCFSコーポレーションのプロキシーファイト(委任状争奪戦)だ。

 マツキヨは01年に高田薬局と業務提携したが、資本関係をともなわないものであった。そのため、高田薬局はマツキヨへ事前通達をせず、08年にウエルシア関東(株)(現・ウエルシアHD)と持株会社を設立し経営統合されたという苦い経験から、マツキヨは株式を100%取得によるM&Aを展開する戦略に切り替えた。

 イオンとCFSコーポレーション(ハックドラッグ)のプロキシーファイトについては、CFSが調剤薬局チェーン大手のアインファーマシーズとの経営統合で株主の承認を得るために総会を開いたが、CFSの筆頭株主のイオン岡田元也社長にとっては寝耳に水だった。そのため、株主総会で決着をつけようと、当時としては珍しいプロキシーファイト(議決権の争奪戦)へと発展。業界関係者によると、「この争奪戦のための綱引きは激しく、イオンがもし負けていれば、同社のDgS戦略は、まったく異なったかたちになっていただろう」と語る。

 この騒動が落着すると、イオンは間髪を入れずにDgS事業の強化に乗り出した。確執のあったCFSは、14年にイオン傘下のウエルシアHDにグループ入りし、業界内ではこの動きが、その後のM&Aの在り方を決定づけたといわれる。

 現在、JACDSは25年に10兆円産業を目指しているが、業態には寿命がある。DgSが次世代にわたって勝ち残るためには、生活者のヘルスケアを担うインフラとして、役割をはたすことが重要だ。とくに今後は、新しいビジネストレンドの波に乗り遅れず、業態チェンジを繰り返す原動力が重要になるだろう。

JACDS20周年記念特別記者会見

(了)

【大川 善廣】

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