2024年03月19日( 火 )

新型コロナウイルスで工事現場は変わるのか(前)

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スーパーゼネコンの決断

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大を防ぐため、4月7日、緊急事態宣言が発出された。いわゆる“3密”回避を徹底するため、営業を続けていた飲食店や宿泊施設、その他商業施設も営業自粛や臨時休業を余儀なくされた。

 建設業界に目を向けると、感染拡大の発端となったのが「世界の工場」中国だったこともあり、建築資材の流通が一部で停滞。工事を中断せざるを得ない現場が頻出した。

 「ドアノブやエアコン、トイレの便器などが不足して、工事を進められないという時期がありましたね。トイレの便器はグレーやブラックであれば在庫があるのですが、日本ではお馴染みの白がない。このとき初めて『そういえば何で便器は白じゃないとダメなのだろう』と疑問に思いましたよ(笑)。今は資材不足も解消しており、現場も動いています」(福岡市の内装工事業者)。

 資材不足から、工期に若干の変更が必要になった現場も出たが、コロナによる影響はそこまで大きくなく、業界は比較的平穏無事だったといえる。

 一変したのは、スーパーゼネコンである清水建設(株)による4月13日の発表だった。東京都内の現場において、作業所勤務者3名が発熱などの症状を訴え、PCR検査を受けた結果、陽性と判明。うち1名は検査後も体調不良が続き、自宅待機をしていたところ容態が急変し、後に死亡が確認されたというものだ。

 同社では、内勤者を対象としてテレワークや出張自粛を推進していたが、これを機に緊急事態宣言の対象地域の現場については、原則緊急事態宣言終了まで閉鎖する方針を打ち出した。コロナによる死者が出たことと、限定的とはいえ500現場の閉鎖を決定したことは、業界内に大きな衝撃を与えた。

 清水建設の動きに、同じくスーパーゼネコンの鹿島建設(株)も同調。4月17日、発注者および協力会社との協議が整ったうえでという前提の下、700現場を閉鎖する方針を固めた。コロナの感染拡大防止という大義名分を前に、当初は工事の継続を表明していた(株)大林組も、施工中断の方針に切り替えた。

 下請から孫請けまで、多くの企業が連なるスーパーゼネコンの決断は、コロナの脅威がすべての業界、企業に対して平等に降りかかることを知らしめた。

「(仮称)博多駅前四丁目ビル」
建設現場 施工者:鹿島建設
鹿島建設「5月11日より工事を再開し、再開後も検温徹底などのコロナ対策を引き続き行います」

コロナ禍での工事

 安倍晋三内閣総理大臣は5月4日、緊急事態宣言の5月末までの延長を決定した。特定警戒都道府県(東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡、北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都)を除く34県では、各地域の感染状況などを踏まえて行動制限が一部緩和される。このうち、18県で休業要請を緩和。10県で休業要請を全面解除の方針となった(5月8日時点)。

 新しい生活様式、いわゆる“ウィズコロナ”への対応が十分とはいえないなか、早くも「収束ムード」が醸成されつつある。現場を閉鎖していたスーパーゼネコンも、工事を再開させた。しかし、コロナ以前に戻れるわけではない。現場入場時の検温と記録、時差通勤や時差・分散朝礼といった“3密”回避など、引き続きコロナ対策を実施している現場は少なくない。

「福岡202号春吉橋旧橋撤去工事」現場
施工者:若築建設
若築建設「当現場における職員の出勤7割減という目標は達成されつつあります。緊急事態宣言解除後に関しましては、これまで同様のコロナ対策を続けていくのかなど、発注者さまとご相談しながら進めてまいります」

(つづく)

【代 源太朗】

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