2024年03月19日( 火 )

新型コロナウイルスの患者が首都圏で急増(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 前回の記事で、梨泰院(イテンウォン)のナイトクラブ発の新型コロナウイルスの感染拡大で、韓国政府が神経を尖らせていることにはすでに触れた。 5月28日、新型コロナウイルス対策で世界の模範とみなされていた韓国においてここ約2カ月において最多となる79名の新規感染者数が確認された。韓国では4月に新規感染者の増加が減少しつつあったが、5月28日に4月5日以降で初めてとなる70名を上回る新規感染者が発生した。

 この背景には、インターネット通販大手「クーパン(Coupang)」の物流センターで69名の集団感染が新たに確認されたことがある。クーパンは日本のソフトバンクが出資した会社で、ロケット配送と呼ばれる迅速な配達で急成長を遂げているインターネット通販企業だ。クーパンの物流センターは、ソウルの西の富川(ブチョン)市に所在しているが、同施設で23日に新規感染者が確認され、その後集団感染へと発展している。

 同施設での感染は、ナイトクラブでの感染と関係があると見られていて、当局は感染経路の追跡に全力をあげている。韓国ではナイトクラブ発の感染が発生する前までは、感染防止に一定の成果を上げていたため、感染予防のための規制が緩和され、政策を社会的距離措置から日常生活における感染防止に努めることへと切り替えていた。そのような状況下で、首都圏において、ナイトクラブと物流センターを震源地とした集団感染が立て続けに発生し、当局は封じ込めへの対策を急いでいる。

 ところが、首都圏は感染第1波の震源地であった大邱と比べて、人口密度が高く、人口数は大邱の約3倍となる。それに、首都圏であるだけに、人の移動などもより多い。さらに、新型コロナウイルスは感染力が強く、季節とも関係がないことが判明されており、新型コロナウイルスの染第2波への懸念が高まっている。

 このように新型コロナウイルスの感染防止も大変であるが、一方では、経済への深刻な打撃も懸念されている。IMFが発表した世界の今年のGDP成長率の予測値において、韓国のGDP成長率の予測値は-1.2%と、今年1月時点の予測値から3.4ポイント下方修正された。韓国経済のマイナス成長をIMFが予測したのは、2009年4月以降初めてのことである。韓国の経済成長率で、今までもっとも低かったのは、アジア通貨危機の最中である1998年のマイナス5.1%である。

 今回の成長率の予測値は、アジア通貨危機の時よりは良いが、今回のIMFの経済予測は、コロナウイルスが下半期には終息することを前提にしている点を忘れてはならない。もしコロナ禍が長期化すれば、成長率はさらに下落する可能性も十分ある。IMFは今回の経済危機について、大恐慌以来最悪の経済危機に発展する恐れがあり、2008年の世界金融危機よりさらに刻になると予測している。世界の経済成長率も、1月時点の3.3%の成長率予想から、マイナス3.0%へと下方修正された。

(つづく)

(後)

関連記事