四国新幹線「ないのがおかしい」(前)
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2020年06月02日 13:03

四国新幹線「ないのがおかしい」(前)

交通利便性で他地域に劣後

 基本計画路線がある地域では、程度の差こそあれ、地元自治体、経済界などが中心となり、それぞれの地域ごとに国への要望活動などを行っている。そのなかの1つに、四国新幹線がある。

今年2月、期成会主催のシンポジウム
「四国の新幹線を考えるin高知」

 2017年、四国経済団体連合会、四国4県など官民46団体から成る「四国新幹線整備促進期成会」を発足。以来、国への要望活動や決起大会、地元でのシンポジウムなどの活動を行っている。期成会では、新大阪駅から岡山駅を経由し、四国4県の県庁所在都市を結ぶルートを提唱している。総事業費は約1.5兆円(複線、単線の場合は約1兆円)。新幹線が実現すれば、4県都から新大阪駅までの所要時間は1時間半前後となり、30~110分程度短縮される。
 期成会会長を務める千葉昭氏(前四国電力会長)は、四国新幹線の意義などについて、こう話す。

 全国で新幹線の整備が進むなか、もはや新幹線は決して特別なものでなく、高速道路のようにあって当たり前の基礎的な交通インフラとなってきている。こうした状況のなか、四国は全国で唯一、新幹線の具体的な整備計画がない地域として残された。2037年にはリニア中央新幹線が大阪まで開通する時代になるが、日本は、「リニアのある地域」「新幹線のある地域」「リニアも新幹線もない地域」と交通格差がさらに広がる。このままでは四国は、交通利便性の点で他地域に大きく劣後することになり、四国創生に向けての地域づくりを進めるあらゆる活動にとって、大きなハンデとなる――。

四国新幹線整備促進期成会 会長 千葉 昭 氏

 千葉氏に、「今、なぜ四国新幹線なのか」と問うと、「四国は、鉄道沿線に10万人規模の都市が連なり、新幹線の特性を活かしやすい地域であり、沿線の人口集積は北陸や東北・北海道に劣っていない。『なぜ四国には、新幹線が必要なのか』との問いには、むしろ『なぜ四国には新幹線がないのか』といいたいくらいだ」という答えが返ってきた。東海道新幹線が開業して半世紀が過ぎた。ナショナルミニマムとして、今どき新幹線がないほうがおかしいという立ち位置なわけだ。

 四国新幹線は基本計画しかないが、瀬戸大橋にはなぜか建設段階から、新幹線用のスペースが確保されている。鷲羽山トンネルにも新幹線用のトンネルがすでにある。すでに四国新幹線を前提としたインフラ整備がなされているわけだ。JR四国でも、在来線の茶屋町~児島~宇多津間では、新幹線整備のための用地買収もすでに完了している。限定的ではあるが、基本計画を超えて整備段階に入っている箇所もある。

瀬戸大橋線路上の様子。両サイドにそれぞれ1線分確保されている。

新幹線なければJR四国は経営破綻

 四国の経済界、自治体が四国新幹線を要望する背景には、JR四国の経営難がある。営業損益を見ると、1999年から20年間連続の赤字。赤字幅は150億円程度で、経営安定基金(2,000億円程度)の運用益で何とか穴埋めしてきた状況がある。

 経営安定基金とは、JR北海道、JR四国、JR九州3社の赤字を補填する目的で創設された基金。その一部として、97年度から16年度末までの間、鉄道・運輸機構に年利3.73~4.99%の高利で貸し付けてきた。機構側からすれば、JRからの借入れだが、実質的にはJRへの補助金だ。3社のうち、JR九州だけが株式上場をはたしている。なお、基金をめぐっては、「国策としての運輸交通政策に民間企業であるJR三島会社が依存するのは、矛盾ではないのか」などの指摘がある。

 JR四国に対しては、経営安定基金の積み増し(機構による特別債権の発行)として、11年度から年間35億円の国費が投入されているが、31年度に終わる。国などからの財政支援がなくなれば、JR四国は経営的に破綻する。

 四国の人口は、1980年代後半は400万人を超えていたが、2010年には400万人を割り込み、その後減少傾向にある。JR四国の鉄道収入は、96年の300億円台をピークに、減少の一途をたどり、19年は235億円にとどまっている。一方で、四国の高速道路延長は、87年に70kmだったが、19年には529kmまで伸びている。人口減少と高速道路の延長の伸びは、鉄道収入の減少と相関関係がある。JR四国は、「現在の経営環境が変わらない限り、鉄道収入の回復は困難」だと考えている。

 JR四国は、全国のJR各社(貨物除く)のなかで、唯一営業区域内に政令市がなく、経営基盤が脆弱というハンデを抱えている。千葉会長は、「JR四国は、人口減少や高速道路の着実な延伸といった環境下で、経営安定基金運用益の大幅減少という国鉄スキームなどの機能不全により、経営自立が見通せないでいる。20年度末には、国による支援策が期限切れを迎えるなか、小手先の経営改善策や支援策の継続だけでは、JR四国の経営自立はいつまで経っても実現できない。新幹線の整備を『JR四国の抜本的経営自立策』の柱として位置づけることが重要だ」――と指摘する。

 JR四国の18年度決算(鉄道事業営業収益)は、収入は262億円、経費が397億円で、135億円の赤字だった。JR四国によれば、これをベースに新幹線が開業した場合、収入は640億円(380億円増)、経費は540億円(140億円増)で、100億円の黒字となり、収支改善効果は240億円以上という試算になる。

 在来線ではなく、新幹線を軸とした交通ネットワークを構築したいという思惑が、JR四国にはある。コミュニティバスや乗り合いタクシーなどと連携したいわゆる「MaaS(Mobility as a Service/マース)」を実現することで、地域交通事業者としての再生、生き残りを図りたい考えだ。

(つづく)

【大石 恭正】

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