2024年04月21日( 日 )

九州地銀の20年3月期決算を検証する(5)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 【表1】を見ていただきたい。九州地銀の21年3月期の当期純利益(予想)順位表である。
~この表から見えるもの~
(1)九州地銀18行の21年3月期当期純利益(予想)順位表
※九州地銀は18行(第一地銀11行・第二地銀7行)だったが、10月1日にふくおかFG傘下の十八銀行と親和銀行が合併して十八親和銀行としてスタートするため、第一地銀が1行減って17行となる。
※佐賀共栄銀行は 2021 年3月期の業績予想については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により業績予想の算定が困難なことから未定としているため、番外としている。
<1位~9位>
◆1位は福岡銀行で、親会社に帰属する当期純利益は前期比+328億2百万円の519億円(+171.8%)と大幅な増益予想となっている。前期は貸倒引当金430億8百万円(4,882百万円→47,890百万円)を繰入したことが減益の主因。
・経常利益は前期比+461億75百万円の700億円(前期比+193.8%)。
◆2位は西日本シティ銀行で、当期純利益は前期比▲2,395百万円の150億円(前期比-13.8%)。
・経常利益は前期比▲1,960百万円の215億円(前期比-8.4%)。
◆3位は鹿児島銀行で、当期純利益は前期比▲2,736百万円の85億円(前期比-24.4%)。
・経常利益は前期比▲3,716百万円の125億円(前期比-22.9%)。
・経常収益は前期比+592百万円の650億円(0.9%増)。経常収益を公表している8行のうち、鹿児島銀行だけがプラスの予想となっている。
◆4位は肥後銀行で、当期純利益は前期比▲5,160百万円の77億円(前期比-40.1%)。
・経常利益は前期比▲7,159百万円の114億円(前期比-38.6%)。
・経常収益は前期比▲3,233百万円の714億円(前期比-4.3%)。同じ九州FG傘下の鹿児島銀行と順位が逆転している。
◆5位は宮崎銀行で、当期純利益は前期比+75百万円の72億円(前期比+1.1%)。
・経常利益は前期比▲328百万円の105億円(前期比-3.0%)。
・経常収益は前期比▲4,838百万円の520億円(前期比-8.5%)。
◆6位は大分銀行で、当期純利益は前期比▲681百万円の44億円(前期比-13.4%)。
・経常利益は前期比▲2,530百万円の68億円(前期比-27.1%)。
・経常収益は前期比▲7,105百万円の537億円(前期比-11.7%)。
◆7位は山口FG傘下の北九州銀行で、当期純利益は前期比▲710百万円の34億円(前期比-17.3%)。
・経常利益は前期比▲957百万円の45億円(前期比-17.5%)。
◆8位はふくおかFG傘下の熊本銀行で、当期純利益は前期の▲1,926百万円の赤字から26
億円の黒字転換予想となっている。
・経常利益も前期の▲3,103百万円から前期比+6,203百万円の31億円の黒字予想。
◆9位は佐賀銀行で、当期純利益は前期比▲441百万円の20億円(前期比-18.1%)。
・経常利益は前期比▲1,202百万円の34億円(前期比-26.1%)
・経常収益は前期比▲1,400百万円の400億円(前期比-3.4%)。9位の佐賀銀行までが当期純利益予想が20億円以上となっている。
<10位~16位>
◆10位の南日本銀行以下は次の通りとなっている。
・10位 南日本銀行     当期純利益750百万円(前期比+16.3%)  経常利益1,150百万円  
・11位 筑邦銀行    当期純利益630百万円(前期比-21.3%)   経常利益970百万円 
・12位 宮崎太陽銀行  当期純利益500百万円(前期比-53.1%)   経常利益700百万円 
・13位 豊和銀行      当期純利益430百万円(前期比+39.2%)  経常利益530百万円 
・14位 福岡中央銀行  当期純利益300百万円(前期比-44.9%)   経常利益250百万円 
・15位 十八親和銀行  当期純利益200百万円(前期比-21.3%)   経常利益▲23億円
・16位 長崎銀行        当期純利益80百万円(前期比+48.1%)   経常利益130百万円
※上記7行とも当期純利益はプラス。経常利益は十八親和銀行だけが▲23億円の赤字予想となっている。
(2)九州の金融グループ(FG・FH)の2021年3月期の当期純利益(予想)順位表
~この表から見えるもの~
◆1位はふくおかFGで、当期純利益は前期比▲706億7百万円の400億円(前期比(-63.8%)。大幅な減少は20年3月期に十八銀行と経営統合したことにともなう特殊要因(負ののれん発生益1,174億円)による。
・経常利益は前期比+612億50百万円の560億円。前期の▲5,250百万円から黒字転換。
◆2位は北九州銀行を傘下に置く山口FGで、前期比▲2,391百万円の230億円(前期比-9.4%)。
・経常利益は前期比▲1,602百万円の350億円(前期比-4.4%)。
◆3位は西日本FHで、前期比▲2,722百万円の175億円(前期比-13.5%)。
・経常利益は前期比▲2,716百万円の260億円(前期比-9.5%)。
◆4位は九州FGで、前期比▲3,261百万円の150億円(前期比-17.9%)。
・経常利益は前期比▲2,633百万円の244億円(前期比-9.7%)。
※4金融グループの2021年3月期の当期純利益(予想)は前期比マイナスとなっている。経常利益も特殊要因を貸倒引当金の積み増しでカバーしたため、ふくおかFGだけがプラスとなっているものの、実態は前期比マイナスであり、九州の金融グループは厳しい経営状況にあるのがわかる。

<まとめ>
 日銀のマイナス金利政策に加え新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、九州地銀の新年度は2カ月余りを経過。8月初旬に第一四半期(4~6月)の決算単信が発表される予定となっている。はたして、予想通りの収益達成となるのか。それとも大幅な減益となるのか。経営陣の真価が問われるのは、まさに、緊急事態(コロナショック)の2021年3月期の決算ではないだろうか。

▲クリックで拡大▲

(了)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

(4)

関連キーワード

関連記事