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2020年06月23日 07:00

前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(4)

 NetIB-Newsでは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)を紹介する。今回は前回に引き続き「ベトナムが日本にとって重要になった2つの理由」について。

(2)    中国の対日レアアース禁輸

 2つ目は、2010年の出来事です。
 同年9月、尖閣諸島周辺において、中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に衝突したことから、海上保安庁は、中国人船長を逮捕した。それに対し、中国はレアアースの対日輸出を全面的に停止しました。

 私は、同年8月末まで中国に勤務していましたが、中国は環境汚染の深刻化等の理由で、その年の春頃から、レアアースの生産量を減らす可能性を示唆していました。そして春から夏にかけて、日本からの多くの訪問者が、レアアース輸出を維持するよう繰り返し、中国側に要請していました。
 中国は、レアアース禁輸が日本にとって最大の経済的打撃になると考えたに違いありません。

 同年10月末、ハノイで開催された日越首脳会談において、当時のズン越首相から、日本の菅総理に対して、「ベトナム国内のレアアースの共同開発提案」がありました。
 首脳会談に出席していたすべての日本人は、ズン首相の提案に心より感謝し、全員が拍手しました。

 禁輸の結果、レアアース価格は急騰し、日本は脱レアアースと中国依存脱却を迫られました。脱レアアースの方向で、多くの研究と投資が行われ、その後、レアアースは供給過剰に陥り、価格は低迷し、中国のレアアース採掘業は苦境に陥りました。
 なお、共同開発に関するベトナムの提案も、レアアース価格低迷などから、実現しなかった経緯があります。

 中国は「政治目的」達成のために、「経済」を制裁として使うことを常套手段にしています。
 日本に対する「レアアース輸出禁止」、フィリピン産バナナの輸入禁止(比政府の仲裁裁判所への提訴)、ノルウエー産サケ輸入禁止(劉暁波氏のノーベル平和賞受賞)、韓国への団体旅行差し止め(米国製迎撃ミサイル{THAAD}の配備)など多くの事例があります。今年5月、新型コロナ・ウイルスの発生源調査を求める豪州に対し、中国派豪州産大麦に高関税を課すとともに、豪州食肉大手4社からの食肉輸入禁止措置を発表しました。

ダナン「APEC公園」

 COVID-19の対応において、世界はマスクをはじめとする医療物資、自動車部品などの対中依存の危険性を改めて認識しましたが、中国は経済を「脅迫外交」の手段として躊躇なく使うことを肝に銘じておく必要があります。

 なお、11年、外務省は、関連資料を収集し、厳正に審査した結果、日本としてベトナムの「WTO市場経済国地位」を認定することを日本政府内で提案しました。その提案に対しては、誰からの反対もなく承認され、日本はベトナムの市場経済地位を認定した最初のG7の国となりました。
 担当であった私の心には、前年のベトナムの配慮に少しでも報いたいとの気持ちがありました。

(3)TPP11

 3つ目は、17年11月のAPECダナン首脳会議における出来事です。
 TPPはオバマ大統領のイニィアティブの下、米国主導で進んでいましたが、トランプ大統領に交代し、米国はTPPからの撤退を表明しました。一時期、アメリカが抜けたことでベトナムの去就が心配されましたが、ベトナムもアメリカ抜きのTPP加盟を決断しました。

 そして、ダナンAPEC首脳会議の期間中、11カ国の首脳間合意ができると関係者は信じていました。ところが、TPP首脳会議直前にカナダのトルドー首相が、了承していないことが判明し、一時期、騒然となりました。結局、首脳レベルでの合意は実現できなかったものの、日本の茂木経済再生大臣(当時)とベトナムのアイン商工大臣が協力して、閣僚レベルで合意をつくり直しました。
 その結果、TPP11は18年12月末に発効しましたが、その背景には、ダナンの地における日本とベトナムの見事な連携がありました。

ベトナムの日本への3つの感謝

 ベトナム外務省の友人によると、ベトナムは次の3つの点で日本にとても感謝しているとのことです。第2点を聞いたとき、自分も日越関係の強化に少しは貢献していたと感じることができました。

 第1点は、1992年、日本はG7のなかで一番早く、ODAを再開してくれた。
 第2点は、2011年、日本は、ベトナムのWTOにおける「市場経済国」地位を先進国のなかで最初に認めてくれた。
 第3点は、16年のG7伊勢志摩サミットのアウト・リーチで、主催国日本がベトナムを招待してくれた。フック首相の外交デビュ―戦でもあり、ベトナムの国際的地位が高まった。

(つづく)

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