コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(3)
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大濠(中央区) 都心のオアシスに近接
中央区の「大濠」も福岡市内有数の高級住宅街だ。大濠(1丁目・2丁目)は、福岡市都心部のオアシスとして親しまれている「大濠公園」の西側に位置し、閑静な雰囲気のなかに豪邸や高級分譲マンションが立ち並ぶ、市内でも有数の高級住宅街として知られている。住戸のほかにも、瀟洒なレストランや結婚式場、カトリック系の幼稚園などが点在し、住宅地としてだけではないエリアの魅力創出に一役買っている。
大濠の魅力は、何といってもそのロケーションにある。隣接する大濠公園は、約39.8haもの広大な敷地のうち約22.6haを占める大きな池を有する全国有数の水景公園として知られており、池の周囲には全長約2kmの周回園路が整備され、ウォーキングやジョギング、サイクリングを楽しむ人の姿も多く見られる市民の憩いの場だ。加えて、周辺には福岡市美術館や大濠公園能楽堂、福岡武道館などの文化施設が集積するほか、舞鶴公園や福岡縣護国神社などの豊かな緑に囲まれたスポットも点在し、良好な住環境を形成している。
また、大濠2丁目にある「在福岡アメリカ領事館」の存在も大きい。1960年10月に現在地に移転した在福岡アメリカ領事館は、九州で唯一の米国領事館となっており、すぐ目の前に派出所があるだけでなく、周囲を24時間体制で警察官が巡回警備。必然的に、エリアの治安面の大幅な向上に寄与している。
大濠のこの場所に、いかにして現在のような高級住宅街が形成されたかだが、歴史を遡ると、やはり大濠公園とは切っても切り離せない関係にあることがわかる。大濠公園の大池は、その昔は「草香江」と呼ばれた博多湾の入り江の一部で、慶長年間に黒田長政公が福岡城を建築する際に埋め立てられ、城を取り囲む外濠の一部となった。明治期に福岡城の廃城にともない、一時はこの大濠を埋め立てることも検討されたが、1926(大正15)年に福岡県が13万坪の水面の半分以上の7万坪を埋め立て、水上公園として翌27年に開催の「東亜勧業博覧会」の用地とし、その残り3万坪が住宅用地として一般に払い下げられた。
当時、水質汚染の進行で悪臭のひどい濠の埋め立てには、連日250~600人の作業員が従事。総工費45万円(当時)、作業員延べ35万人の大工事は半年で竣工となった。このときに一般に払い下げられた住宅用地3万坪が、現在の高級住宅街・大濠の始まりだ。一説によると、このときの莫大な埋め立て費用の補てんのために、計画的に高級住宅街がつくられたという。これにより、周辺エリアにも影響を与え、坪単価5円の桑畑が60~150円となるなど地価が急騰。周辺の住居が文化住宅に建て替わるほか、新たに商店街ができるなど急激な発展を遂げていった。
高級住宅街としての大濠の人気は依然として高く、20年9月竣工予定の「グランドメゾン大濠 THE APARTMENT」(10戸)など、近年でもいくつかの高級分譲マンションの開発が進んでいる。将来的には、市美術館の至近地に県立美術館の移転が予定されているほか、大濠公園と舞鶴公園を一体整備するセントラルパーク構想が進むことで、エリアの魅力がさらに高まり、大濠のブランドイメージもより強固になっていくだろう。
【坂田 憲治/代 源太朗】
(つづく)
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