コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(4)
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西新(早良区) 多様性に富む文教地区
早良区の「西新」は、住宅地や学生街、商業集積地区と、さまざまな要素を内包する街だ。早良区高取に鎮座する「紅葉八幡宮」の門前町として始まり、明治時代に「修猷館」、大正時代に「西南学院」が当時の大名町から西新町に移転してきたことで、現在に続く文教地区として認知されるようになった。
鉄道(北九州鉄道)が開通すると、福岡市の中心部天神・博多エリアとのアクセスも向上。百道浜の存在もあり、夏には海水浴客で賑わう行楽地としての側面ももつようになる。住宅街として隆盛を極めるきっかけになったのは、終戦後の宅地開発。1956年には隣接地である曙で、九州初の公団住宅「曙団地」への入居が始まった。商店街や「リヤカー部隊」として知られる行商人たちが、西新・曙エリア一帯住民の買い物需要を支えることで、まちは活気を取り戻していく。
58年にはスーパーマーケット「丸栄西新店」(後のダイエー西新店)、73年には「ニチイ西新店」(後の西新ビブレ)が開業。81年には「西新地区第一種市街地再開発事業」による再開発ビルで、「西新岩田屋」がテナントに入る「西新エルモール」が完成するなど、商業施設も充実していく。同年、福岡市地下鉄1号線が開通し「西新駅」も誕生した。
以降、都市高速道路の整備が進んだことも、生活拠点としての西新の地位を確固たるものへと押し上げる一因となった。
「西新は博多、天神への交通アクセスに優れた福岡の副都心。文教地区であることから、若い世代が絶えないのも、強みといえるでしょう。東京でたとえると、自由が丘のようなまちといえるのではないでしょうか」(地場不動産業者A)。
再開発は依然として盛ん(プラリバなど)であり、西新は今後も住まう場所として高い人気を維持していくものと考えられる。そして、西新に暮らす人々の安心・安全な生活を支えるうえで重要な役割をはたしているのが、西新商店街だ。
西新の賑わい交流拠点「西新商店街」
西新商店街連合会 会長 鳥巣 勲 氏
西新商店街は、全国的にも珍しいアーケードがない「青空商店街」です。オレンジ通り商店街、西新中央商店街、中西商店街、高取商店街、藤崎通り商店街と、それぞれ独自の魅力をもつ5つの商店街で構成され、福岡市地下鉄「西新駅」から「藤崎駅」までの約1.5kmに渡り店舗が軒を連ねています。
西新駅と藤崎駅のどちらからでも好アクセスであり、気軽に歩いて買い物や食事を楽しむことができる商店街だと思いますし、西南大学を始め、修猷館高校や西新小学校など学び舎が近隣にそろっており、老若男女問わず、幅広い世代が利用しているのも特徴といえます。日々の利用を通じて、西新で暮らす住民の方が商店街の存在を大切にし、自慢にしてくれていることが、私としては一番嬉しいですね。
今回の緊急事態宣言後は、たしかに人出は減りましたが、住宅街の存在や交通利便性の高さもあり、利用が大きく落ち込むことはないと考えています。無論、コロナ以前の人出が戻るのかというと、それは難しいでしょう。現状、商店街でイベントを開催することはできませんし、計画を立てることも容易ではありません。見通しが立て難いなかではありますが、秋の「サザエさん商店街通り夢まつり」を開催できるように、取り組んでいきたいと考えています。
商店街に求められているのは安心・安全であること、そして、変わらずそこに在り続けることだと思います。たとえば、西南大学の卒業生が西新を「第2の故郷」だと思い帰ってきてくれます。その際、西新商店街に足を運び「学生時代、この店によく通いました」という話をよく耳にします。嬉しい瞬間です。このように、世代を超えて、誰もが気兼ねなく帰って来られるようにするためにも、変わらずに在り続けることが大切ではないかと思います。
西新商店街連合会としては、今後も商店街で営業される店舗への支援を行っていきたいと考えています。ほかの地域の商店街からは、コロナをきっかけに閉める店が出てきているという話を聞きます。2代・3代と長きにわたって営業されてきた店を閉めるとなれば、残された土地をマンションデベロッパーなどに売却されることがままあります。
マンションの場合、1・2階を駐車場にする場合が多く、そうなると店が入れなくなります。景観的にも「商店街らしさ」が失われてしまいますので、こうした事態は何とか食い止めたいという思いがあります。西新商店街はありがたいことにシャッターが閉まっている店が少なく、仮に閉まったとしてもすぐに次が決まるなど、新陳代謝が続いています。これからも、西新のまちの賑わいづくりに貢献できるように尽力してまいります。
【坂田 憲治/代 源太朗】
(つづく)
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