• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月02日 16:26

ストラテジーブレティン(255号)~Point of No Return、米国の対中金融制裁が俎上に~慎重な投資姿勢を(前)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年7月1日付の記事を紹介。


 6月30日、香港の自治と民主主義を根底から奪う「香港国家安全維持法」が中国全人代常務委員会で制定され、即時施行された。香港の民主主義と自治が失われ、一国二制度が終わった。二度と元には戻れない、Point of No Returnに至ったと考えざるを得ない。世界は熾烈な米中冷戦へと展開していくだろう。

「一国二制度」の否定は即、「一世界二制度」の否定

 米ソ冷戦終結以降の世界は、リベラルデモクラシーに基づく資本主義と、共産党独裁体制の中国が共存する、言わば「一世界二制度」であった。体制は異なっても、ともに世界経済の繁栄という共通の利益に立脚していた。体制・価値観を異にしていても、相互に相手に対する尊敬と慎みを共有していた。その結節点であり象徴が「香港における一国二制度」であった。習近平政権は香港での一国二制度を葬ったことで、「一世界二制度」を自ら壊しつつある。

 相手に対する敬意と慎みが失われれば、経済的利益が容易に犠牲にされ、市場は平穏ではいられなくなる。世界中がコロナパンデミックで大混乱に陥っている間隙に乗じて19~20世紀型ともいえる「帝国主義的利益追求」に走る習近平政権を前に、リベラルデモクラシー諸国も経済的コストを払ってでも中国の膨張を制止せざるを得なくなる。より具体的にいえば、リベラルデモクラシー諸国は香港の民主派を支援するために生活水準を切り下げる覚悟があるかどうかが問われる。

 英国が1997年、租借地新界地区とともに自国領であった香港島と九龍半島(アヘン戦争によって獲得した)をともに中国に返還したのは、中国の鄧小平氏が「一国二制度」を50年間(2047年まで)維持すると約束したからである。今回の香港国家安全維持法はその約束を破った。次のリスクは台湾に向かう。香港には米英の利権があること、民主勢力への苛烈な弾圧が予想されること、情報管制への反発を生むこと、など波乱は不可避である。

「体制共存」の方便(偽り)が露呈した

 世界世論に聞く耳をもたない中国にも論理はある。中国の主権が脅かされているという危機感である。昨年の「逃亡犯引き渡し条例撤回」時に見られた、人口740万人の香港で発生した100万人規模の抗議デモの勢いを今止めなければ、永遠に香港は中国に同化しない。それを阻止するのは今しかないという判断であるが、その認識は正しいだろう。

 ことの本質は米国の覇権、リベラルデモクラシーの下での共産中国との共存という方便(偽り)が通用しなくなったことにある。それほど急速に中国がプレゼンスを高めてきたわけである。習近平政権は、2018年以降のトランプ政権による貿易戦争突入やファーウェイ叩きに直面して融和姿勢に徹していた。鄧小平氏の「韜光養晦路線(爪を隠して時を待つ戦略)」に戻ったかに見えたのも束の間、コロナパンデミックを機に覇権追及を隠そうともしなくなっている。第2次世界大戦以降の国際秩序は、米ソ冷戦、米国主導下の「一世界二制度」の時代を経て、米中対決の時代に入ったといえる。

(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年08月12日 17:00

【スクープ】西日本新聞のスポーツ本部長がセクハラで処分 TNC「CUBE」にも出演

 西日本新聞社の「下半身」不祥事が止まらない。既報の通り、7月に社内不倫に絡む事案で記者2人が懲戒解雇されたのに続き、8月に入ってすぐに、報道番組でコメンテーターも務...

2020年08月14日 07:00

コロナ禍で苦境となったカプセルホテル、ナインアワーズが再生へ(前)

 「今年の春、カプセルホテルやビジネスホテル、民泊などの宿泊特化型施設の売上は昨年同月比で10%以下にとどまったところが多かった。ナインアワーズでは、カプセル内UV照...

2020年08月14日 07:00

何が変わるのか?大阪市・水道管路更新コンセッション(中)

 この状況を打破すべく、2017年から大阪市水道局は、当初の5年間で耐震性の低い鋳鉄管を集中的に更新した後、次の5年間でペースを倍化し、古いダクタイル鋳鉄管を更新する...

2020年08月14日 07:00

「ウォーカブル」なまちづくりで神戸市は復活できるか?(3)

 基本計画のもう1つの目玉が、都市再生事業(雲井通5丁目再開発)として進めるバスターミナルビルの建設だ...

2020年08月13日 07:00

何が変わるのか?大阪市・水道管路更新コンセッション(前)

 大阪市水道局は、配水管の耐震化促進のため、2018年12月に成立した改正水道法に基づく「コンセッション方式(※)」による管路更新(耐震管への取替え)事業を進めている...

2020年08月13日 07:00

「ウォーカブル」なまちづくりで神戸市は復活できるか?(2)

 15年、神戸市はようやく重い腰を上げた。同年、三宮駅周辺地区の再整備基本構想を策定し、18年には構想に基づいて『神戸三宮「えき≈まち空間」基本計画』をとりまとめ、駅...

2020年08月13日 07:00

オールラウンドなまち福岡・大橋~整備の歴史と今後の開発計画(4)

 今年5月末に「ダイキョーバリュー大橋店」が閉店したほか、6月10日には「ニューヨークストア大橋店」が閉店。エリア内から一気に2店のスーパーが姿を消した。その一方で...

2020年08月12日 16:41

シノケンとTATERUが中間決算 不動産販売はいずれも減少

 12日、シノケングループ(東証ジャスダック)およびTATERU(東証一部)は、2020年12月期の中間決算を発表した...

2020年08月12日 16:36

ホークス柳田が月間MVP~6度目の受賞

 6、7月度の「大樹生命月間MVP賞」が12日に発表され、パ・リーグ野手部門で福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手が2018年5月度以来、6度目のMVPを受賞した...

2020年08月12日 15:48

「新型コロナ」後の世界~健康・経済危機から国際政治の危機へ!(1)

 東京大学大学院教授の小原雅博氏は近著『コロナの衝撃―感染爆発で世界はどうなる?』で「危機はこれまでは、国家や民族意識を高めてきたが、今の私たちは監視社会でない自由で...

pagetop