普及に課題山積も「魅力的」 福岡のCLT 施工事例(前)
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技術と情報の普及へ 健康住宅の事例
福岡において、CLTの認知度は決して高いとはいえない。県内で最初の施工例となった(株)大匠建設(福岡県那珂川市)の社屋の完成は2017年。それから約3年が経過したが、CLT工法による施工例はわずか数例にとどまる。大きな理由はコスト高であることは前述の通りだが、公的助成制度を活用した施工事例もいくつか出てきた。
福岡市西区では、CLT工法と在来工法で構成された「木質構造技能者育成センター」(以下、育成センター)の建築が進められている。健康住宅(株)(福岡市城南区)がグループ会社とともに、木造だけでなく鉄筋コンクリート造などすべての建築関係者向けにCLTの可能性にチャレンジした物件で、7月にオープン予定。この育成センターは、林野庁のCLT活用建築物棟実証事業制度が活用された。
健康住宅グループで、設計業務を手がけるLOOPS Architect(株)の吉本高広社長は、「我々としてもCLT工法に取り組むのは初めてでしたが、非常に多くのものを得ることができました」と話す。CLTの調達、設計業務、基礎工事や建て方など多くの部分が在来工法とは異なっていたという。
CLT工法に取り組んだきっかけについては、「これまで、健康住宅グループは木造住宅に関わってきました。近年、環境への配慮などから、学校などの非住宅建築物を中心に、木造建築が見直されています。木造に関わる我々としては、木造建築の最先端であるCLT工法について知っておきたかったのです」(吉本社長)と話す。「育成センター」としたのは、グループ内での情報共有だけでなく、外部を含めた建築関係者にも広くCLTを普及させるためだという。使用した木材はすべて国産材だ。
CLT普及のため、知見は共有していく
吉本社長は、「CLTには多くの課題があります。ただ、CLTは工業製品に近く、規格化に適しています。製品による品質の差ができにくいなど多くのメリットがあります。CLT工法は図面による検討や施工精度、協力施工会社との連携が非常に重要でした。苦労も多かったですが、貴重な経験ができましたし、普及すべき技術だと思います」と育成センターの建築を経たうえでの感想を話した。
続けて、「CLT工法はとび職人だけのものではなく、一般戸建住宅を主とした大工にも門戸が開かれた工法だと思います。そういったところも踏まえて、我々が得た経験と情報をより多くの方々に共有していきたいですね。CLTのサプライチェーン強化にも貢献していきたいと考えています」とCLT工法の普及に意気込む。
育成センターは、CLT工法と在来工法とのミックスで建てられた。外周部にCLTパネルを用いた構造躯体、内部を在来軸組工法とした。これにより、コスト低減だけでなく、間取りの自由度向上でもメリットがあるという。
(つづく)
【永上 隼人】
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