変貌しつつある大阪港 「クルーズ客船母港化」は実現するか?(前)
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クルーズ人口増、大型化する客船
1990年ごろは約350万人だった世界のクルーズ人口は、以降年々増加を続け、2005年には1,000万人、11年には2,000万人を突破。20年には3,000万人を上回ると予想されるまで膨張を続けてきた。クルーズ人口の爆発的な増加には、中国をはじめとするアジア市場の拡大が大きく影響している。
これにともない、客船も大型化した。90年代はせいぜい数万トン(全長250m程度、乗客1,000人程度)だったが、2000年以降は10万トン(全長300m程度、乗客3,000人程度)を超える船が現れ、10年ごろには20万トン(全長360m程度、乗客5,000人程度)を超える船が就航するようになった。大きなクルーズ船を建造するのは船主の勝手だが、世界の港湾管理者にとっては、船の大きさに対し、水深や岸壁の長さが足りず、寄港できない場合、どう対応するかが課題になっている。
母港化のためPFIでターミナル整備
大阪市は16年、「大阪都市魅力創造戦略2020」を策定。この戦略に基づき、「築港・ベイエリア地区の魅力向上」の取り組みとして、「クルーズ客船の母港化」による「内外集客力」の強化を打ち出している。母港化については、12年から研究会や官民による協議会を設立し、議論を重ねていた。築港・ベイエリア地区とは、クルーズターミナルや海遊館などが立地する天保山周辺を指す。具体的な施策としては、天保山クルーズ客船ターミナルの改修と岸壁整備だ。
天保山のクルーズターミナルの建物は、1969年に貨物上屋として建築後、83年に船客用に改修されたもの。老朽化が進んでいるうえ、内部構造が狭く、入出国手続きなどに時間を要するほか、バリアフリーにも対応できていないなどの課題があった。
大阪市は19年、PFI(BTO)によるターミナルの整備運営事業に着手。今回のPFI事業に際し、既存のターミナル用地のほか、隣接する防潮堤用地などを組み込むことで、既存の約2倍の延床面積を確保する。受注したのは五洋建設を代表企業とする特別目的会社(松田平田設計、日本管財)。契約期間は20年3月~52年3月。契約金額は約35億円。暫定ターミナルを運用しながらの施工となる。23年4月に供用開始の予定だ。現在の岸壁は、延長370m。16万トン級のクルーズ船まで対応している。岸壁整備では、これを430mまで延伸し、22万トン級にも対応できるようにする。天保山には、ほかに客船が着岸可能な中央突堤北岸壁があるが、長さ210mで小型船しか着岸できない。
(つづく)
【大石 恭正】
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