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2020年07月13日 12:07

お仏壇のはせがわ中興の祖・長谷川裕一氏の経営者としての最終的総括(2)持ち前の突進力、結果、負の遺産処理は他人任せ

長谷川氏が抱えていた仏壇限界のジレンマ

 前回で紹介した3人の先人たちにとっては、自社の事業を拡大できる市場が存在していたことは幸せであった。単純に、攻め続ければ良かったからである。結果として、強力なライバルと激突して潰されてしまっても、「俺には運がなく、非力であった」と総括すれば済んだ。ところが長谷川氏の場合は、もっと複雑であった。

 何が複雑なのだろうか。「仏壇販売事業でトップに立ち、業界で最初に上場させてみせる」と目標設定し、持ち前の「突進力」で邁進すれば目標を達成できたことである。上場した時は本来ならば、歓喜の雄叫びを発しても良かったはずだ。ところが、それが素直にできなかった。「これから先は、仏壇だけの売上では近いうちに限界が来る」と長谷川氏は頭のなかで先読みしていた。長谷川氏は、「多角化経営」から逃げられない“金縛りの経営者”としての宿命を抱えていたのだ。

キャピタルゲインで資金は得たのだが

 1988年に上場をはたし、長谷川氏は、キャピタルゲイン総額で200億円を得たと言われている。しかし、残念ながら、その大枚を有効に活用することができなかった結末となってしまった。「どのような多角化を目指すか」と、本人も必死で模索しただろうと思料される。多角化を目指すなかで行き着いた先が、「国際化」というキーワードであった。もう少し「国際化」を具体的に表現すると「アジアビジネス」、さらに詳しく表すと「中国、ベトナム、ミャンマーをターゲットにした国際化ビジネス」への多角化の展開であった。

 1990年代になると、福岡にも中国人の姿が目立つようになった。そして長谷川氏も、中国人をはじめとするアジア人を会社で採用するようになってきた。中国人などの外国人脈のパイプが次第に太くなってきて、本人も自信がついたのであろう。だが、はせがわの最初の中国ビジネスの広報の第一報を耳にして愕然とした。「北京で駅弁事業の許可を得た」というものだった。あまりにも意外な展開で「何だ、それは!!」と思わず驚いて大声を上げてしまった。

すべてがピント外れの事業の多角化

 中国ビジネスに精通していたある人は、「本来、長谷川氏は金銭感覚には厳しい人だった」と振り返る。「中国でビジネスを進めるためには、共産党幹部や行政の役人に渡す袖の下(賄賂)が不可欠だ。だが袖の下を渡し方は、半端ではない。そのことをブレーンたちが、長谷川氏に耳打ちしていなかったのではないか」と読んでいる。要するに、弁当販売事業の権利が得るには莫大な袖の下が必要だったことを思い起こさせたかったのであろう。そのことを知っていれば、「パン屋ならいざ知らず、駅弁事業を成功させるのは簡単ではない」と誰もが察知する。駅弁事業の寿命は、一瞬にして絶えてしまった。

 97年8月に、北京でパン小売店2店をオープンした。だが、この事業も失敗の運命が待っていた。ここで、はせがわの多角化事業の主な軌跡をまとめてみよう。

 (1)1990年、ホームセンターの(株)カインズとフランチャイズ契約を締結して、翌年に埼玉県と群馬県で2店舗の経営を始めた。また千葉県にあるホームセンターを子会社化したが、この事業は見事に失敗した。これをきっかけに、物販小売業には嫌悪感を抱くようになり、ここから一挙に国際化の道を走り始める。

 (2)1994年12月、ボーリングを核とした総合アミューズメントを核とした総合アミューズメント事業へ進出。その中核会社として(株)フォーチュンを子会社として設立(国内市場が思ったほど復活せず、活路を中国へ求める)。

 (3)1995年2月に、ベトナム社会主義共和国でオフィスビルの賃貸事業を営むHASE-SALCOOP JOINT VENTURE COMPANYを子会社として設立した。

 (4)1995年5月に、ベトナム社会主義共和国でオフィスビルの賃貸事業を営むSun Red River Co., Ltd.を子会社として設立した。

 (5)1995年10月に、(株)フォーチュンチャイナを子会社として設立。中華人民共和国で、同社と現地法人との合併により、ボーリング場を核とした総合アミューズメント事業を営む福州長冠保齢球娯楽有限公司を設立した。

 (6)1996年1月に、中華人民共和国においてボーリング場を核とした総合アミューズメント事業を営む天津利徳実業発展有限公司に資本参加した。

 (7)ミャンマー連邦のサービスアパートへの投資を行うシンガポール法人EXE-SAKURA RESIDENCE DEVELOPMENT PTE. LTD.に資本参加した。

 おそらく長谷川氏にとって、1995年から96年にかけての2年間が経営人生で最も猪突猛進できた年だっただろう。これがすべて成功していたならば、「長谷川氏は、よくぞここまで突っ走ったものだ。だから成功したのだな」と拍手喝采を浴び、尊敬の念を抱かれたことであろう。だが現実は逆で、すべてが失敗に終わった。

 99年11月、「中国、ベトナム、ミャンマーの3カ国で展開する海外事業から撤退する」とはせがわは発表した。栄光の年と見られていた期間から、わずか3年しか経過していない。

(つづく)

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