2024年04月19日( 金 )

相次ぐマンションの設計偽装~デベロッパーと行政の「不都合な真実」 仲盛昭二氏 緊急手記(3)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 構造設計一級建築士 仲盛 昭二 氏

全国に潜む設計偽装

 このように、行政主導による構造検証においても、設計の偽装が見逃されていた。全国のマンションやホテルなどにおいて偽装が続けられ、姉歯事件後の設計である豊洲市場においても設計(設計は(株)日建設計)が偽装されていたことは、先に述べた通りだ。豊洲市場における構図と同じように、マンション販売会社も、偽装が発覚すれば行政と力を合わせて揉み消そうとする。つまり、マンション販売会社も行政も、区分所有者や市民のことを微塵も考えていない。
 「法令規準(構造耐力)を満たしたマンションを設計し、適正な構造計算・図面に基づき施工されたマンションを分譲する」という当たり前のことが行われておらず、この点を問い質せば行政までもが隠ぺいに走るという有り様だ。

 JSCAが公金を使い、いい加減な検証(本来の正しい検証を行えば20%前後の強度不足)を行っていたことは、全国のマンション区分所有者に恐怖を与えることになる。筆者が再検証をした物件では、8割以上の確率で偽装が判明している。

 区分所有者のために、あえてこの事実を公表したため、筆者に対する非難もあると覚悟している。非難を覚悟で告発したのは、区分所有者に、自分の財産であるマンションの現状を知ってもらい、本来のマンションの耐震強度を取り戻してほしいからだ。
 区分所有者は、怒りを筆者ではなく、マンション販売会社や行政に向けるべきだ。マンション販売会社や行政は、区分所有者の生命と資産を守るために適切な対応をとってほしい。当然、構造再検証を行われると考えられるが、筆者がいる以上、過去のようないい加減な検証はできない。なぜなら、筆者が再々検証をするからだ。

 マンション販売会社や行政側の主張が正しいというのであれば、「仲盛の指摘が間違っている」ということになる。どちらも正しいということはない。そうであれば、筆者の指摘が法的・工学的に間違っていることを、根拠を以って否定すべきだ。

 もし、マンション販売会社や行政が否定できなければ、偽装を認めることになり、分譲時に提携ローンを組んだ金融機関にまで責任がおよぶ。提携ローンを組んだ金融機関とマンション販売会社の責任は同等という判例もある。

耐震強度不足のマンションは売却できない

 南海トラフや首都直下型地震などの発生が想定され、各地で震度4程度の地震が頻発し、6月25日には千葉県で震度5弱の地震が発生した。耐震偽装マンションの区分所有者は耐震強度が不足したマンションを所有して暮らしているが、法令上の耐震強度を有していないマンションは 販売価格に見合う価値を有していない。
 区分所有者は実質的な価値以上の住宅ローンを支払い続け、固定資産税も納付している。もしマンションが倒壊した場合、区分所有者は近隣の住民に対して加害者となってしまう。法令規準を満たしていないマンションを販売したマンション販売会社は、適切な対応をすべきだ。

 法令規準を満たしていないマンションを売却することは難しく、運よく売却できたとしても、法令規準違反の事実を知った買主から訴えられることもあり得る。マンションが法令規準違反状態となっている第一義的な責任は、マンション販売会社にある。区分所有者は、マンション販売会社に対して、「マンションを適法な状態に戻せ!それができないなら、建て替えるか買い取るかの対応をせよ!」と要求すべきだ。マンション販売会社は、法令違反で販売価格に見合う価値のないマンションを販売し利益を上げているのだから、要求に応じるべきだ。要求に応じないマンション販売会社は、今後消費者から敬遠されることになるだろう。

必要な規準ならば厳しく運用をし、不要な規準は撤廃をすべき

 2007年の建築関連法規改正を機に建築確認審査も厳しくなり、建築コストは大幅に上昇している。法令規準に違反した建物を行政が黙認するので無法地帯となっており、建築コストの上昇を招く法令規準に意味がなくなっている。必要な法令規準は厳しく適用し、不要な法令規準は撤廃も検討すべきだ。法令規準を満たしていないマンションを販売し、責任も取らない販売会社は厳しく処分をすべきだと考えている。

 ここに記したことに関連して判明したことは、今後、裁判などを通じて、私の責任において公表していく予定だ。

(了)

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