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2020年07月27日 07:00

コロナ禍、注目すべきは「年代別死亡者数」(後)

国際ビジネスコンサルタント 浜地 道雄 氏

 筆者が石油担当商社マンとして、イランの首都テヘラン駐在時の1973年に「石油ショック」が発生。原油価格の高騰となり世界を揺るがすこととなった。日本では「トイレットペーパー」騒動(パニック)も起きた。そのパニックを彷彿させる今回の「コロナ禍」、その正体を我々は、はたして正確に認識し、正しく恐れているのか。

「経済と命」をどう救うのか

 今後の日本と世界の医療政策、社会政策を考えるうえで注目すべきはスウェーデンだろう。外電によると、環境活動家として知られるスウェーデンのグレタ・トウーンベリさんは3月、「東欧旅行の後、いくつかの症状を感じ、状況から考えると感染していたと思う。でも、スウェーデンでは緊急の治療が必要でない限り新型コロナウイルスの検査を受けない。だから自主的に隔離した」と述べている。

 福祉国家として知られる同国ではロックダウン都市封鎖をしてない。死亡者数比較の表から、隣国の北欧、ノルウェー、フィンランド、デンマークよりも死亡者数が多いことがわかる。いわゆるクラスター(団体)抗体形成の実験と言われてもいるが、実はその根本にはTRIAGEがある。

 TRIAGE=トリアージ(フランス語で「選別」の意)とは、患者の重症度に基づき、治療の優先度を決定して選別を行うこと。フランス革命後の野戦病院の仕組みに由来するとされる。今回のコロナ禍ではイタリアで実施された。
 医療崩壊を起こしかねない日本と異なり、スウェーデンはもともと無理な延命治療はせず、「寝たきり老人」がいない国とされる。本人の同意を事前に得て、意識のないままの介護はしない。そこに悲壮感、残虐感は薄いと聞く。

 人口1,020万人の8割を占めるキリスト教(国教)の原点、すなわち「神のもとに召される」という意識が影響しているのであろう。非常に深遠なテーマであり、こうしたことをすぐに日本でとはならないものの、未来を語るときに研究せねばならないテーマはTRIAGEだ。

 ちなみにイギリスではコロナ禍以前、2018年1月17日に「孤独問題担当国務大臣」Minister for Lonelinessを新設し、トレイシー・クラウチ下院議員を初代大臣に任命した。人口6,600万人の国だが、英国赤十字社によると「常に」、または「しばしば」孤独を感じている人が900万人以上いるという。人口の1割以上の人々が人とのつながりが薄れ、心を閉ざして孤独になっているのだ。日本においても、コロナ禍による生活破綻は必至であり、将来を見据えて経済と命をどう救うのか対策を考えねばならない。

 統計で明らかな通り、死亡者数についていえば一波はなかったのだから、二波以降もなく、いたずらに恐れる必要はない。むしろ日本赤十字社の図が端的に表している3つの「感染症」(病気そのもの、不安、差別)を心得るべきだろう。

 政府の対応政策は入口で間違えていた。従って出口を模索するのではなく、まず「入口」に戻り、そこからNew Normal(新しい日常)を考えるべきだ。では、新しい日常とは一体何か? いくつかの提案のうち「会った相手と時間を記録すること」とはすなわちジョージ・オーウェルの記した『1984年』の独裁者ビッグブラザーに支配される世界に戻るということなのか。筆者としては「裸の王様を見破った少年の」のようにごく素直な気持ちで声を発したい。「あれ! 日本の死者数は極めて小さいのに、何を騒いでいるのですか?」と。

3つの「感染症」(病気、不安、差別)/日本赤十字社

ウイルスより怖い差別と偏見

 日本のこれからを考えるときに、ことに米国の動向は無視できない。そしてやはり、11月3日の米国大統領選挙のことを視野に入れないわけにはいかないだろう。ただし、4年前のトランプ大統領の登場自体が大きな驚きであったわけだから、今回も予想をするのは難しい。ここでは予想というよりは「強い希望」ということで、いくつかの要素を考えてみよう。

 今回のコロナ禍によって世界最大の感染者、死亡者となった米国。大きくクローズアップされるのが、人口の約9%、2,750万人が健康保険をもっていないという現実だ。トランプ大統領は、オバマ前大統領が策定したオバマ・ケア(健康保険システム)の破棄を目指した。

 他方、トランプを支持したキリスト教福音派はアメリカ人の4人に1人にまで拡大している。トランプ大統領は2回の離婚に加えてレイプ訴訟など、我々の常識では直ちに「アウト」ということになるが、さてどのような結果となるのか? 一方、民主党側はサンダースが戦線離脱し、前副大統領のバイデンが候補となった。バイデン氏は女性を副大統領候補とすることを公言しており、すでに非白人を含む複数名の名前が取りざたされている。

 いま、トランプ大統領の頭のなかでは11月3日の選挙だけが大事であり、それ以外のことは些末なことでしかない。イスラエルの嘆きの壁に頭を垂れ、国連決議で4カ国統治が決められているエルサレムに大使館を移すという愚挙。それに追随する安倍首相の「地球儀俯瞰外交」の危うさ。

 トランプ大統領はアメリカ第一を掲げ、今回のコロナ禍の「発祥」についても中国の責任をツイッターなどでは叫んでいる。しかし、彼自身も含め、アメリカ人の好むブランド衣料の多くが中国で生産されている。コロナ禍ではグローバル化の功罪両面が浮き彫りになったとともに、人種差別や偏狭なナショナリズムなど21世紀を迎えてもなお解決困難な社会問題も視覚化された。ウイルスより克服困難なこの人類の宿痾を、まずは真正面から受け止めるべきだろう。

(了)


<PROFILE>
浜地 道雄(はまじ・みちお)
1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、National Geographic/Cengage Learning kk, Project Consultant EF Education First Japan, Senior Advisor.

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