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2020年08月03日 17:01

「新型コロナ」後の世界~大学の本来あるべき姿を考察する!(1)

東京大学大学院情報学環 教授 吉見 俊哉 氏

 新型コロナウイルスは「世界の軌道」を止めた。私たちは今避難を余儀なくされ、物質的な考えを止めさせられ、自分が生きることだけを考えている。そして、このことは、これまで私たちが地球に行ってきた環境破壊がもたらした大洪水、ハリケーン、竜巻、海洋汚染、氷山崩壊などと同じで、貪欲な資源獲得の争いや終わりのない戦争の結果であることに気づき始めている。
 一方で、世界が一度止まったことで、私たちは自分の人生で大切なものは何かを考える時間ができた。今後、大学はどのような役割をはたしていくべきなのだろうか。

 東京大学大学院情報学環・教授の吉見俊哉氏に聞いた。ちょうど新型コロナ騒動直前の1月末に吉見教授がオックスフォード大学教授の苅谷剛彦氏と共著で出版した『大学はもう死んでいる?』(集英社新書)が今注目を集めている。それは、同書がまるで世界が一度止まることを予期していたかのように、日本はのみならず世界中の大学が抱える根本的な問題をあぶり出しているからに他ならない。

「新自由主義的なグローバリゼーション」における反動

 ――新型コロナ後の大学の在り方について教えてください。まず本題に入る前に、今回の新型コロナ騒動をどのように見ていますか。

 吉見 この春以来、我たちは新型コロナウイルスによる感染症のパンデミックの渦中にあります。このことは、今回のテーマである大学にとどまらず、私たちの社会全体に大きな転換をもたらしていくと想定されます。そこでまず、この感染症のパンデミックと大学との関係をどう考えるのかについてお話しします。

東京大学大学院情報学環 教授 吉見 俊哉 氏

 21世紀とはどのような時代なのでしょうか。21世紀に入って、世界的に大きな、複数のショックが私たちの社会を襲いました。まずは、2001年9月11日に起こった、アメリカ同時多発テロ事件(アメリカ合衆国で同時多発的に実行された、イスラム過激派テロ組織アルカイダによる4つのテロ攻撃の総称)、次に08年のリーマン・ショック(08年9月、アメリカの有力投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻し、それを契機として広がった世界的な株価下落、金融危機、同時不況の総称)、3番目に、16年にイギリスの国民投票で決まったブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)とトランプ米大統領当選、最後に、20年の今まさに私たちが直面している、新型コロナのパンデミックです。

これらの地球社会を襲った複数の出来事は、ある1つの共通点があります。それは、すべての出来事が、1980年代以降、過去30年以上にわたって推進されてきた「新自由主義的なグローバリゼーション」に対する反動であると考えられることです。

グローバリゼーションの先頭に立ち、旗を振った航空会社

 吉見 2001年の同時多発テロ事件では、アメリカ主導のグローバリゼーションに対し、周縁化されてきたマイノリティ(少数派)が絶望に満ちた抵抗として、アメリカのシンボルともいえるニューヨークのワールドトレードセンター(WTC)ビルに突っ込みました。

 リーマン・ショックでは、極度に金融システムの高度化とグローバル化が進んだことの結果として、金融の仕組みそのものが破綻しました。ブレグジットやトランプ大統領誕生という形でグローバリゼーションがもたらしたものへの反動的な傾向が表面化しました。

 私たちが渦中にいる感染症のパンデミックも、もしグローバリゼーションがなかったら、ここまで広がっていなかったでしょう。今、世界の航空会社は大変な危機を迎えています。これまで、航空会社が先頭に立ってグローバリゼーションを進めてきたことが完全に裏目に出ており、私たちは今、「グローバル化の停止」を経験しています。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
吉見 俊哉
(よしみ・しゅんや)
 1957年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環教授 兼 東京大学出版会理事長。同大学副学長、大学総合研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割をはたす。
 2017年9月~18年6月まで米国ハーバード大学客員教授。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出書房新社)、『博覧会の政治学』(講談社)、『親米と反米』(岩波書店)、『ポスト戦後社会』(岩波書店)、『夢の原子力』(ちくま新書)、『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書)、『大予言「歴史の尺度」が示す未来』(集英社新書)、『トランプのアメリカに住む』(岩波新書)、『大学はもう死んでいる?』(集英社新書)など多数。

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