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2020年08月03日 17:23

韓国ウォンの暴落と通貨危機は再び起こるのか(前)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国経済がおかれている環境は、厳しさを増している。まず、昨年から起こっている米中貿易摩擦により、韓国経済は大きなダメージを受けてきた。米中貿易摩擦がますます激化しており、韓国経済はもちろんのこと、世界経済を失速させている。

 韓国の輸出は、米国による中国への露骨なけん制で中国経済が低迷している影響を大きく受けている。中国から米国への輸出が減少すると、韓国から中国への輸出も自然に減少することが原因だ。経済を大きく輸出に依存している韓国にとっては、試練の時期である。

 そのような状況のなか、今年1月から全世界に新型コロナウイルスの感染が拡大し、サプライチェーンの崩壊を招くとともに、航空産業、旅行業、小売業などを中心に、売上が大幅に減少し、「雇用破壊」が進んでいる。さらに、韓国と日本の関係は悪化の一途をたどっており、もし韓国政府が日系企業の資産売却に踏み込むと、そのことが引き金となり、韓国では通貨危機が起こりかねない状況だ。今回は、ウォンの暴落と通貨危機が現実のものとして発生する可能性について検討を加える。

資金の需要が高い韓国で、ウォン通貨が抱える問題

 韓国では今でも資金の需要が高いため、不足している資金を外国から調達することが多い。韓国の経常収支の黒字は年間数百億ドル規模である一方で、海外からの短期借入金は年間1,000億ドルの水準で推移していることから、資金調達が必要なことがよくわかる。海外からの借入はドル建てのため、もし韓国経済が悪化するとウォンの価値が下がり、債務の負担は瞬時に増加するだろう。さらに、投資家もリスクを回避するために、韓国の株式や債券を処分して資金を本国に還流させるため、ウォン売りがますます加速するだろう。

 それでは、ウォンの暴落や韓国の通貨危機がなぜ、懸念されているのか。まず、ウォンという通貨が抱えている根本的な問題が原因だ。韓国に海外から入ってくる資金は、企業への直接投資を目的とした長期資金より、インカムゲイン(株式の配当金や債券の利子など)の獲得などを目的とした短期資金が多い。

 短期資金は、経済が不安定になると、流動性を懸念してすぐに回収されることが多いため、「逃げ足の速い資金」である。経済が不安定になると、安全な場所を目指して資金を本国に戻す動きがいっせいに出て、歯止めがかからなくなることもある。そうなると、ウォンは売られ、ウォンの暴落が現実のものとなるだろう。もしウォンが暴落すると、韓国が1997年に経験したアジア通貨危機のように、債務の支払いが不可能になるだろう。

 ウォンが抱えているもう1つの限界は、ウォンは基軸通貨ではなく、流動性がほとんどなく他国の通貨と自由に交換できないローカルカレンシーという点である。ウォンは世界中のどこでも使える通貨ではなく、取引量も限定されている通貨のため、世界経済が不安定になると敬遠されがちになるが、その信用力の弱さをカバーする役割を日本が担っている。しかし、日韓関係が冷え込んでいて、日本からそのような協力を得られない今の状況は、韓国経済にとって危機的な状況であるといえる。

 さらに韓国は、金融取引の規制が緩い。アジア通貨危機の際に、外国資本を呼び込むためにほとんど規制を撤廃し、金融市場を自由化した。その結果、世界で資本の出入りがもっとも自由な国になった。金融取引の規制が緩いことは、景気の良い時には、資金を呼び込むための効果的な施策となるが、景気が悪くなると、金融市場を不安定にさせる要因にもなる。

(つづく)

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