コロナで変わる防災――1人ひとりが“自分ゴト”として備えを(後)
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九州大学男女共同参画推進室・准教授 杉本 めぐみ 氏
「防疫」も含めて求められる多機能性
――今年は新型コロナの影響で、感染リスクを懸念して災害発生時の避難を躊躇するケースも出てくると思います。
杉本 災害発生時に迅速に逃げ込む「避難場所」と、被災後にある程度の期間滞在する「避難所」とは分けて考える必要があります。なので、災害発生時に危険箇所にいる場合は、まずは自らの命を守るためにもすぐさま避難場所に逃げてほしいと思います。
そして次の段階で、コロナの問題を含めてどこに身を寄せるかを考えていく必要がありますが、現状の避難所では段ボールなどの間仕切りを行ったところで、はっきりいってコロナ対策としては気休めでしかありません。ハザードエリア外の自分の家で籠城できるならばそれが一番良いですが、それが難しければ、友人や親戚のところに身を寄せるとか、ホテルや旅館に行く、さらには最悪の場合は、エコノミークラス症候群の対策をしたうえで、浸水域外を確認して土地高低の高いところで車中泊という選択もありだと思っています。
大事なのは、複数の手段を用意しておくことです。災害備蓄の準備や家族間での役割分担の話し合い、さらにはいざというときに助け合えるご近所との良好な関係づくり、近所付き合いが希薄な都会の一人暮らしであればSNSなどでの自分なりのネットワークの構築など、1人ひとりが常日頃から防災を意識して準備しておくことが大事です。
コロナによって今後は、公共施設や民間商業施設などを新築する場合にも、「防疫」の機能も盛り込んだマルチラウンドな建築物をつくることが求められるようになるでしょう。今までのように、「音楽ホールだけ」「体育館だけ」といった単一機能ではなく、防疫機能を備えた避難所としても使えるように、複合施設の意味をもっと多面的に考えなければなりません。
また、建物に限らず、バス停の庇にカーテンをかけて防疫できるようなものや、災害時に仮設トイレとしても使えるベンチなど、1つのもので複数のことができることが求められます。それぞれの地方自治体は限られた予算のなかで、ハード面の整備にしろ、都市計画・まちづくりにしろ、ソフト面での対策にしろ、知恵を出し合いながらやりくりしないといけない、とても難しい時代が来たと思います。
災害だけでなく、コロナなどの感染症といった二重にも三重にもリスクがあるなかで、その対策は行政だけで対応できる問題ではありません。住民1人ひとりが行政に任せっきりにせず、“自分ゴト”として防災も意識したまちづくりを考えていく―今回のコロナをきっかけに、そうした方向へと時代の流れが変わっていくのではないでしょうか。
(了)
【坂田 憲治】
<PROFILE>
杉本 めぐみ(すぎもと・めぐみ)
京都府出身。京都大大学院修了。東京大学地震研究所の特任研究員などを経て、2014年から九州大学助教、20年から同大准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。関連記事
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