2022年05月25日( 水 )
by データ・マックス

オールラウンドなまち福岡・大橋~整備の歴史と今後の開発計画(1)

多彩な顔をもつ南区の中心地

 天神や博多などの福岡市の都心部から見て南に位置し、さらに南にある那珂川市や春日市といった福岡都市圏のベッドタウンと隣接する福岡市南区。その南区のなかで、東区の香椎や早良区の西新と並び福岡市の副都心として位置付けられているのが、「大橋」エリアだ。

 西鉄天神大牟田線では、「西鉄福岡(天神)」「薬院」に次いで第3位の乗降客数(18年度1日平均3万7,921人)を誇る大橋駅――駅を中心として形成された大橋エリアは、駅西口を中心として商店・飲食店が軒を連ねる商業街となっているほか、すぐ近くには南区役所などの行政機関、九州中央病院などの総合病院もあり、名実ともに南区の中心地といえよう。前出の西鉄電車を利用すれば、天神まで特急で2駅6分と近いうえに、駅東口にはバスターミナルが設けられ、福岡空港国際線への直行便を始め、公共交通機関を乗り継いでの移動にも便利だ。日赤通りや高宮通り、みやけ通り(国道385号)といった幹線道路もエリアを通過しており、交通利便性は高い。

 周辺には九州大学芸術工学部(旧・九州芸術工科大学)や第一薬科大学、純真学園大学、香蘭女子短期大学などの複数の大学があるほか、福岡市公立高校“御三家”の一角である筑紫丘高等学校を始めとする多くの高校が点在。(学)宮田学園・西日本国際教育学院などの日本語学校もあり、文教地区としての顔ももっている。さらに、近隣に公園や溜池が点在し、水と緑に恵まれるほか、スーパーや商店、銀行などもそろっていることで、日常生活を送るうえでの住環境の良さで人気の住宅地となっている。駅前には音楽・演劇練習場「ゆめアール大橋」や隣接する「南区おおはし子どもプラザ かんがるー」、直線距離で約700mの場所には福岡市南体育館や福岡市南市民センター、福岡市南図書館などの公共施設もそろっており、住宅ローン専門金融機関のアルヒ(株)が主催する「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞 2019 in福岡」では2位にランクインしていた。

 このように多彩な顔をもつ大橋だが、この街はこれまでに、どのような歴史をたどってきたのだろうか――。

地名が先?駅名が先?「大橋」という名前の由来

 大橋という地名は、歴史を紐解いてみても、近代になるまで登場しない。もともとは、古くから那珂川の河口付近に形成された農業地帯だった。近隣に今も残る野間大池や野多目大池、老司大池などのかつての灌漑用の大きな溜池が、この一帯が肥沃な農地であったことを物語っている。

 現在の大橋は、かつては筑紫郡三宅村に属しており、1933(昭和8)年4月に三宅村が福岡市に合併された際に、福岡市の一部になった。合併当時の三宅村の人口は4,500人弱で、そのほとんどが農業従事者だったといい、現在の大橋付近も当時は、数軒の民家が点在していただけで、そのほとんどは農地だった。

旧大橋駅(出典:塩原地区区画整理誌)

 大橋という地名が誕生したのは実はこの少し前で、そのきっかけは1924(大正13)年4月の九州鉄道(株)(現在の西日本鉄道(株)の前身の1つ)による福岡~久留米間(現在の西鉄天神大牟田線の一部)の電気軌道開業だった。このとき一帯の農地のなかを縦断して線路ができ、近隣の平尾や高宮、井尻といった駅とともに「大橋駅」(現在の大橋駅より東に約400mの場所にあった)が誕生。そうすると、大橋駅周辺一帯が「大橋」と呼ばれるようになっていった。少々おかしな話だが、地名としての「大橋」が先にあって大橋駅という駅名が生まれたのではなく、大橋駅という駅名から周辺一帯が大橋と呼ばれるようになったわけだ。ちなみに駅名に付けられた「大橋」とは、かつて通っていた旧道が老司川と交差する場所に架けられていた橋梁「大庭大橋(おおばおおはし)」が由来だとされている。

 その後、大橋駅周辺では1927年に現在の九大・大橋キャンパスの場所に「筑紫中学校」(現在の筑紫丘高校の前身)が開校。また、那珂川方面に向けての幅8mの大橋老司線(国道385号)や、それに交差するかたちで高宮通りなどの道路が通ると、その交差点や大橋駅を中心として、商店や住宅などが増えていった。とはいえ、戦前の大橋一帯にはまだ田園風景も多く残り、それほど都市化は進んでいなかった。

(つづく)

【坂田 憲治】

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