緑を核にした居心地の良いまちづくり「コミュニティ･デベロップメント」とは（中）

2020年9月1日 07:00

ツイート

東邦レオ（株）　代表取締役社長　吉川稔氏

まちづくりのプランを描く、実践型のプロデュース企業

　――子会社の（株）NI-WAの代表も兼務されていますが、NI-WAの事業概要や、東邦レオ本体との役割分担についてお聞かせください。

　吉川　NI-WAは16年7月に立ち上げた会社です。それまで当社では「つくる」や「管理・運営する」という経験はあったのですが、プランニングやデベロップメントをするというところがありませんでした。そこで、別会社としてプランニングや企画を行う、まちづくりのプランを描いていく実践型のプロデュース企業として立ち上げたのがNI-WAです。まちづくりにおける各種コンサルタントという「プロジェクトマネジメント」と、空間の維持管理や賑わい実践の実務という「プロパティマネジメント」を主に行っています。

　これまでの東邦レオだと、モノをつくることが基本になっていますが、場合によってはプランニングだけを提供する方が良いケースもあります。そうした場合にはNI-WAの方で受けて、工事が絡んでくるような場合は許認可の関係で東邦レオが受けるというかたちです。ゼネコンさんが設計事務所をもっていたり、デベロッパーさんが管理会社を別会社にしていたりするのと似ていると思いますが、要は機能として分けているだけです。

　――法人としては別でも、東邦レオの一事業部というイメージに近いわけですね。

　吉川　そうですね。経営としても私が両社の社長を兼任していますし、意志決定も同じオペレーションのなかでやっています。また社員についても、実はNI-WA専任の社員はゼロで、必要に応じて東邦レオの社員がNI-WAの名刺をもって動くというようなかたちですので、一事業部という位置づけに近いですね。

これからの都市のなかで人と人をつなぐ―

　――これからの都市やまちづくりの方向性について、吉川社長の考えをお聞かせください。

　吉川　現在、新型コロナの影響などで社会環境が激変していることもあり、非常に難しい質問ですね。ただ、感覚的にいうならば、もう新たな建築物はそこまで必要ではないのではないか、という思いはあります。すでに都市には、たくさんの建物や機能が存在していますし、無理に何か新しく都市開発をしていく必要性はそれほどないのではないでしょうか。もちろん、まったくいらないわけではありませんが、新規の開発ありき、という時代ではなくなってきているように感じます。

　どちらかというと、今あるもの、すでに存在しているもの、もしくは古くなったもの、使われなくなったもの、朽ちてきたもの―そうしたものに、どうやって新しい価値を見出していくかの方が、非常に面白いなと感じていますし、今後はそういう都市づくりが増えてくる予感はしています。

　また一方で、たとえば都市の中心部に関していえば、「ここは住宅地」「ここはオフィス街」というように機能的に区分けするのではなく、1つのエリア・建物がより混在型になっていくように思いますし、もしくは1つの建物が、ある時間帯ではオフィスとして使われるけれど、別の時間帯では商業的、あるいは住居的に使われるといったような、1つの場所を“二毛作・三毛作的”に多様な使い方をしていくような、そうした都市の在り方になって変わっていくのではないでしょうか。

　――そうした都市の在り方のなかで、御社がはたされる役割は何でしょうか。

　吉川　当社としては、リノベーションのプランニングなどは割と好きなので、どういう発想をして何をつくればいいのか、何にコンバージョンしたらいいのかなど、そうしたアイデアを出し、それを実現するための知恵を絞っていくことになると思います。やはり一番重要なのは、住民参加型とか、そこに関わる地域の方と共存していくような、そうしたコミュニティづくりです。時間はかけなくてはいけませんが、そうした人と人をつなぐインフラというか仕組みづくりの部分を、当社が担っていければいいなと思っていますし、そういうことを期待されているように思います。

（つづく）

【坂田　憲治】

＜PROFILE＞
吉川稔（よしかわ・みのる）
1965年、大阪府出身。89年に神戸大学農学部卒業後、住友信託銀行での勤務を経て、投資会社をベンチャーとして起業するほか、セレクトショップ運営の（株）リステアホールディングスの取締役副社長やカフェ経営のカフェ・カンパニー（株）取締役副社長などを歴任。2016年11月に東邦レオ（株）の代表取締役社長に就任した。関連会社の（株）NI-WAの代表も務めており、緑を核としたまちづくり・暮らし・働く・住まいをトータルプロデュースする「ライフスタイル提案」に取り組んでいる。