2024年04月19日( 金 )

米中「ハイテク戦争」で台湾半導体が躍進(後)

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 日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 米国は中国をけん制しているものの、台湾の半導体企業とは密接な関係を築きつつある。パソコンに詳しい方なら、マザーボードがほとんど台湾製だというのはご存じだろう。だが、マザーボードだけではない。多くの人々は台湾の半導体業界について知らなすぎる傾向がある。

 現在、世界最大の半導体企業は、台湾のTSMCである。ファウンドリー(受託製造)分野で、世界市場の50%超を独占している「すごい企業」だ。

 TSMCだけではない。世界4位でアジア最強のファブレスであるメディアテックも台湾企業である。その他にも、台湾には多数のファブレスが活躍しており、その競争力は日本、韓国を圧倒するレベルだという。台湾の半導体産業がTSMCを頂点として、さまざまな技術と人材が蓄積されているという証でもある。

 CPU分野におけるインテルのライバルであるAMDのCEOも台湾出身のリサ・スー氏である。最近、サムスンを追い抜き、時価総額で世界2位となったエヌビディアのCEOであるジェン・スン・ファン氏も台湾出身。このように米国で半導体について学び、世界的に活躍している台湾人は多く、半導体の世界で台湾の底力を見せつけている。

 以上のように台湾は半導体産業において、すでに押しも押されもせぬ存在となっている。ところが今後、半導体産業の地形学を変えていくような重大な動きが2つあるので、ご紹介したい。

 世界最大の半導体企業であるTSMCは、米国のアリゾナ州に新工場を建設する計画を発表した。これには2つの意味があると思う。まず、台湾が中国の攻撃を受けてTSMCに異変が起きた場合に備えた将来への布石だ。TSMCとの関係を強化することで今後、ハイテク分野での半導体の需要がますます拡大されるのは間違いなく、半導体分野での競争力を確保したいからだろう。米国の選択によって歴史の流れが変わった事例もあるので、半導体産業においても、これは大きな流れの変化になりうる。

 もう一つは、電気自動車メーカーであるテスラが、自律走行車のプラットフォームをTSMCと共同開発すると発表したニュースだ。テスラの目標は電気自動車の製造ではなく、自律走行車のプラットフォーム企業になることだ。

 現在、自動車は大きな産業を形成しているが、自動車が自律走行になると、自動車は大きなプラットフォームの1つへと変身する。自動車は半導体の塊となり、スマートフォンの100倍もの半導体需要が発生する。自動車と通信などを合わせた産業となるので、一つの大きな産業が新しく誕生することとなる。

 自律走行で1位を争っているテスラと、半導体製造の最大手・TSMCが手を組んだということは、TSMCが自動走行分野においても革新的な技術開発に接することが可能となり、かなり有利な地位を占めることにつながっていく。

 以上2つは、今後の半導体産業を占う上で、とても重要なニュースになるのではないかと筆者は思っている。

(了)

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