2024年04月20日( 土 )

【凡学一生のやさしい法律学】自民党総裁選の意味するもの(3)~まとめ(後)

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 議員内閣制とその他の憲法の規定の「実際上の運用」によって、日本では自民党独裁政権が長く継続している。このことは、中国共産党の一党独裁政権、ロシアのプーチン氏による独裁、北朝鮮の金一族による独裁政治と本質は同じである。唯一異なる点は、日本国民が、自国の政治が一党独裁政治であることを知らず、他国の独裁政治を見て「安心していること」、つまり今の政治に不満を抱いていないことである。これは、サウジアラビアのように王族による独裁政治であっても、潤沢な経済消費生活が保障された一般国民には何の政治的不満も抱いていないことと同じである。

 サウジアラビアも、石油資源の枯渇、石油にかわるエネルギー資源の出現、エネルギー多量消費社会の変貌などによる変化で富裕国でなくなれば、一般市民は民主主義国家の実現を求めることになるかもしれない。

 つまり、国民の政治意識の満足度は、順序としては現実の経済生活に対する満足度のあとに存在するため、国民が経済生活にそれなりに満足している限り、生活を変革する政治意識の芽生えは起こりえない。これが長年にわたる日本の公教育の成果である。公教育の担当者である「学校の先生」が「でもしか先生」と揶揄されて久しい。先生自身が現実生活を重視しているため、十分な給与と老後の年金生活が保障されていれば、先生の意識改革も生まれない。今の公教育は拡大することはあっても、縮小はしない。

 少子化問題は、1クラス単位の生徒数の少数化で対応しているため、先生の数を削減するという問題にはなっていない。しかし、技術の進歩により、ネットによる在宅授業さえ可能な時代を迎えた。知識偏重教育の当然の流れでもある。クラスの人数という概念がある、非効率で不合理な校舎校庭教育は時代遅れとなっている。ネット教育では「クラスの人数」はもちろん紙の教科書さえ不要であるため、教科書関連の出版業界も大変革を迎えることになる。自民党の文教族といわれる議員らが「お役に立つ」ことも少なくなる。

 新型コロナウイルス感染は日本全体の経済活動の縮小化をもたらしたが、この状況が急性疾患であれば、少子化は慢性疾患といえる。

 最後に、日本の公教育の最大の犯罪的状況を指摘する。
 日本では、公教育の終了時(18歳)に投票権を行使できるようにした。現状は、大学まで国家統制が貫徹され、大部分の国民が進学するというもので、中学校までの強制的就学を意味する義務教育は実態に合っておらず、おそらく死語になっているため、教科書を統制する高校までをあえて公教育と表現する。

 これは、人の成長を考慮したうえで一般的な人権を行使できる成人を満20年としている基本的法制に反している。それは満20歳になれば、責任をもって権利が行使できる事理弁別の能力もそなわる、とする人類の経験的知恵に基づくものである。それにも関わらず、人の保有する権利のなかでも民主主義を保持する重要な権利である参政権について、「主権者教育」も「憲法教育」もまったくなされないまま、投票権のみが18歳まで引き下げられた。

 国会議員の実際の利権活動のことなどをまったく知らない青少年に突然、選挙権を与えた。自民党独裁政権の醜い保身行動の1つであることは、多言を要しない。

 日本国民は、何も知らないことについて判断を求められたときに、「知らない」「わからない」と口にすることを極端に嫌う。偏差値競争教育では「知らない」「わからない」ことが最大の恥であり、「無知」とされることが最大の「恥辱」だからである。

 庶民はこの「恥辱」を避けるために、どのような投票行動をするか。それは「大勢に従う」ことである。「大勢に従う」国民性を最大限に利用するために、「何も本当のことを教えていない」青少年に選挙権を与えた。この犯罪的状況を正道に戻すためには、今からでも遅くない「主権者教育」を行うしか道はない。

 「知らないこと」が恥ではなく「知らないことを隠すこと」が恥であることから青少年に教えなければ、「本当のことを老年になって初めて知った」老人としても安心して人生を終えることができない。

(了)

(3)-(前)

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