2024年03月29日( 金 )

BIS第170回例会~ワシントンDC、ローマを結ぶオンライン開催(9)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 8月30日(日)の午後1時30分~5時まで、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長・名古屋市立大学特任教授)第170回例会がZOOMを用いてオンラインで開催された。ZOOMによる開催は、29年の歴史を誇るBISで初めての試みだ。
 今回は「新型コロナ後の世界」をテーマとして、医学や経済学、社会学など幅広い分野の発表があった。当日は東京だけでなく、ワシントンDC、ローマ、仙台、大阪、福岡などから50名を超える有識者が参加した。

一帯一路、米中貿易戦争には冷静な見方、アプローチが必要

 最後に、中川十郎BISJ会長は「新型コロナ騒動」のなかで密かに進行している国際政治に目を向け、「一帯一路と米中貿易戦争」について発表した。

 中川氏は、日本に入ってくるほとんどの国際情報はアメリカ経由のため、歪曲されているものが多く、冷静に情報を分析し判断しなければならないと警鐘を鳴らした。とくにトランプ政権発足後の中国に対する情報は極端であるが、日本のマスメディアは真偽を精査せずに情報を流したり、情報を増幅させて流したりすることも多いため、注意しなければならない、と語った。

 そのうえで、中川氏は「日本は、中国とは一衣帯水である。遣隋使以来、同じアジアで密接に関係してきた事実をないがしろにしていけない」と語り、「『一帯一路』や『米中貿易戦争』には、しっかりとした冷静な見方とアプローチが必要である」と続けた。

 次に「一帯一路」について、習近平国家主席によって発表された2013年から現在までの流れを振り返った。

一帯一路(BRI=The Belt and Road Initiative)

沿線国 :60数カ国
人 口 :40億人(世界の60%を占める)
国内総生産(GDP):世界の30%を占める
貿易額 :世界の30%を占める
陸地面積:世界の50%を占める

アジアに住む4,000万人以上の華僑・華人

 中川氏は、中国に対する各界の識者の見方として、「未来戦略を有する唯一の国が中国である」(米国のイアン・ブレマー氏)、「ユーラシア大陸を制するものが世界を制する」(英国のハルフォード・マッキンダー氏、米国のズビグニュー・ブレジンスキー氏)を挙げ、一帯一路は「中国が世界最大のユーラシア大陸を版図として結束させ、結節する21世紀の野心的な広域経済圏構想」であり、今年で7年目に入る一帯一路は、「ポストコロナの経済復興を考える日本にとっては、とても重要なものになる」と持論を展開した。そして、アメリカを除く先進国で唯一「一帯一路」に参加していないことや、「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」に参加しない日本政府の方針に疑義を呈した。

 さらに、「『21世紀はアジアの時代』と言われ、中国がユーラシア大陸を結束するといわれる今、アジアに住む4,000万人以上の華僑・華人ネットワークは情報、金融、製造業などのあらゆる分野に影響力があり、無視できるものではない」と語った。

 とくにインドネシアに住む約700万人の華僑は、商業の約7割~8割を占める非常に強力な勢力となっている。アジアの4,000万人の華僑・華人は、中国国外で仮想(バーチャル)中国を構成しているといえる。しかも、そのネットワークは中国版GPS「北斗」(人工衛星)によって形成されている。

 中川氏は、日本は中国と対抗するのではなく、「一帯一路」と「インド太平洋構想」(※)を融合し、アジア・ユーラシアを中心に「和を以て貴しとなす」精神で、世界の平和と経済発展に日中協力して貢献し、21世紀の経済・外交戦略を真剣に検討すべきであると語った。

(つづく)

【金木 亮憲】

※:インド洋と太平洋を繋ぎ、アフリカとアジアを繋ぐことで国際社会の安定と繁栄の実現を目指す。

(8)
(10)

関連記事