2024年04月25日( 木 )

BIS第170回例会~ワシントンDC、ローマを結ぶオンライン開催(10)

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 8月30日(日)の午後1時30分~5時まで、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長・名古屋市立大学特任教授)第170回例会がZOOMを用いてオンラインで開催された。ZOOMによる開催は、29年の歴史を誇るBISで初めての試みだ。
 今回は「新型コロナ後の世界」をテーマとして、医学や経済学、社会学など幅広い分野の発表があった。当日は東京だけでなく、ワシントンDC、ローマ、仙台、大阪、福岡などから50名を超える有識者が参加した。

多面的な情報収集、冷静な分析で正しく評価

 中川氏は「米中貿易戦争」に関して、ソ連や日本が経験した「トゥキディデスの罠」()に言及した。1980年代には、ソ連の軍事力、日本の経済力が台頭し、アメリカと衝突した結果、85年には「プラザ合意」で円の大幅な切り上げが起こり、91年にはソ連が解体した。プラザ合意後、日本では30年以上のデフレが継続している。その結果、GDP経済成長率は1%前後にとどまり、実質賃金は10%も低下した。今や、1人あたりのGDPは世界26位で、台湾より低位である。

中川 十郎 氏

 アメリカは当時、ソ連や日本に対して抱いた危機感を今の中国に抱いている。米国はどうにか中国を抑え込もうとしているが、中国は米国を抜いて世界最大の国になろうとしている。ただし、現時点でトランプ大統領が唱えている「中国脅威論」は、単に選挙のための戦術に過ぎないと考えられるという。中川氏は、「日本は米中の流れを冷静に見守り、必要以上にアメリカに組みすべきではない」と語った。

 最後に、中川氏は、「情報分析では、情報源をしっかりと把握することが大切である。一方的な情報で判断するのではなく、情報を多面的に収集して冷静に分析し、正しく評価し、研究、ビジネス、生活に役立てることが肝要である」と結んだ。

年に1度くらい全世界を結ぶのも面白い

 第170回例会は、大脇準一郎氏((特非)未来構想戦略フォーラム・地球市民機構共同代表)の総括、続いて簡単な議論が行われ、香取一昭氏(BISJ副会長、マインドエコー代表、元NTT西日本常勤監査役)の挨拶で幕を閉じた。

29年の歴史を誇るBISJでは、オンラインでの開催は今回が初めてだったが、参加者の感想は上々であった。来年に「新型コロナ騒動」が一段落して例会が正常化したとしても、世界的ネットワークをもつBISJとしては、「1年に1回ぐらいはオンラインで開催し、イタリア、アメリカだけでなくフランス、中国、韓国など海外の講演者、参加者を幅広く募るのも面白い」という感想も聞かれた。

(了)

【金木 亮憲】

※:戦争が不可避な状態まで従来の覇権国家と、新興の国家がぶつかり合う現象。 ^

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